最初につくった球体関節人形 ayumi のリメイク



 アイドールに向けてつくっていた1/6オリジナルドールの制作が一段落したところで、次のお人形作りに入ることにしました。
 まったくの新作の制作も考えていたのですが、とりあえず最近可愛がってあげられない旧作品も多くなってきたので、もう一度そのリメイクにとりかかることにしました。

 

 こちらは ayumi 、15年前に自分が最初につくった球体関節人形です。いろいろなものを参考にしながら1年半近くかけて完成させました。
 当時は作り方ってものを理解していなかったし、「吉田式 球体関節人形 制作技法書」(名著)という教科書的な本もなかったので、えらく時間がかかったのを覚えて
います。概形は2か月ほどで完成したものの、あちこち手直ししていたら、2作目より完成が遅くなっちゃった。





 この作品を保存していたのは、4.5畳の自分の部屋の隅っこにある約半畳の収納スペースです。ここに旧作品や参考にしたSDやDD、海外のキャストドール、他の方の
つくられた創作人形なんかが置いてあります。
 この作品を取り出そうと、あれこれ引っ張り出したら、あっという間に4.5畳はこのありさま。 chico ちゃんも隅っこに追いやられています。
 そして信じられないことに実はこれが全部じゃなくって、収納の更に奥にはまだ1/6のドールやフィギュアが100体以上ある・・・。
 実は最近気になっていたんです。もしかしたら自分はドールコレクターとしてはすでに破綻しているのではないかって、それが今回、あらためていちばん奥にあった作品を
取り出したことで気づいた。しかしまさかこれほどだったとは・・・。
 しまいっぱなし、遊んであげられない、というのはお人形の価値をすでに見出していないと言われても仕方ないので、可愛そうだけど、少しクリーニングしてヤフオクあたりに
出すことにします。
 昔はこういったお人形達を参考にして自分のドールをつくっていたんだよね、ありがとうって気持ちです。  


リメイクプラン A

 昔つくった球体関節人形は、現在のものとはかなり仕様が違うので、ここはまず今自分の作るスタンダードな仕様に改めたいと思います。
1 一体だった胴体は分割して腰関節をつくります。
2 ヘッドパーツも上下に分割してアイやウイッグは交換できるように変更します。
3 手足と肘パーツはレジン製のものに置き換える。
4 マグネット仕様(後述)に改める。

 ではこの線そって作業を開始します。

1 パーツをばらばらにして、一体だった胴体とヘッドを
 上下に分割しました。
2 切断面に少しずつ粘土を盛って、少しずつ凹凸面
 を成型してゆきます。
 

 最初の頃は球体関節人形って、早い話が「フィギュアに関節つけて動くようにすればいいんだろ」ぐらいに思っていたので、関節自体もわりあい適当につくっていた。
 もちろん適当につくると、きちんと立たなかったり、ポーズが固定できなかったりで、「なんだプロポーションについては、やっぱり固定式フィギュアの方が上じゃん」
てことになる。もちろんそういう面は確かにあるのだけれど、球体関節人形としての美とか機能性の高さみないなものも失われてしまいます。
 関節づくりには発泡スチロール球を使う方法が一般的のようですが、自分の場合には使いません。どうするかというと、まずはおおまかに球面の凹凸をつくり、2つの
パーツをすり合わせて関節をつくります。具体的にはすり合わせると、あたっている部分は光沢が増し、そうでないところは粘土の毛羽立ちがそのまま残るので、その
部分を削ったり盛ったりして、少しずつ修正してゆく。

 もちろん発泡スチロール球を使う方法より手間はかかるのだけれど、発泡スチロール球のサイズに関節の大きさが制約されないし、回転楕円体のような特殊な形状を
つくることだってできる。
 この記事を読んでいる人のなかで、こういった球体関節人形をつくる人がたくさんいるとは思えないけど、もしおられたらチャレンジしてみて下さい。

3 ヘッドパーツの下部にアルミ線でM字型のフックの
 受けをつくります。
4 こちらは首裏にネオジムマグネットを埋め込んだ
 ところです。
5 レジンキャストした手足のパーツを加工してフック
 をとりつけます。

 手、足、肘のパーツは特に破損しやすいので、強度のことを考えてレジンキャストしたものに交換します。フックは2mm径のアルミ線を加工したものです。
 首の後ろにネオジムマグネットを埋め込むことで、鉄でできたものがあればスタンドなしで立たせることができます。また分割した上下のヘッドパーツの接続にもネオジム
マグネットを使っています。
 あとここには書いてないけど、バスとトップや耳たぶなど、全身10ヶ所に鉄製のビスを埋め込んでいて、マグネットのアクセサリーが張り付くように工夫しています。
自分としては、
いろいろ遊べる人形っていうのが大切なポイントです。



リメイクプラン B

 自分の場合、リメイクだけにとどまらず、新しいお人形をつくるときでも、造形の最初に行うのが関節の成型です。
 多くの場合は固定関節の人形をまずはつくりあげ、各パーツごとに分割してから、発泡スチロール球を利用して関節をつくるというのが流れのようです。自分の場合には
順序が逆になっていますが、それはその方がポージングが自然になると考えているからです。
 膝を曲げれば関節自体の形状や上下の筋肉の形も変わります。どんなポーズをとらせても自然に見えるようにするためには、やはり関節の成型を先に行う方が良い
ようにおもいます。
すべてのパーツのラインは関節に支配されるというのは間違いのない事実です
 今回のリメイクは具体的には、すべての関節をこれまでのものよりやや小さめの関節に変更し、精度を上げるという変更になります。やっぱり手首足首が細いとしまった
感じに見えます。

   6 すべての関節をひとまわり小さく成型し直します。
   





 とりあえず関節の凹凸ができあがった状態です。すべて少しずつこすり合わせることで調整をしています。


7 テンションゴムを通すラインを想像しながら、そこに
 印をつけてゆきます。
8 穴をあける部分を鉛筆で描いてゆく。このあとキリ
 で穴をあけ、徐々に大きくしてゆきます。
9 首関節は最も大きな力が加わるので、エポキシ
 パテで補強しました。

 パーツにテンションゴムを通す作業の始まりはパーツを並べてどの位置にゴムを通すか鉛筆で印をつけているところからスタートです。基本は「頭頂部からかかと
までまっすぐゴムを通す」「指先から反対側の指先までまっすぐゴムを通す」です。
 その印をもとに穴を開ける部分を決めてゆきます。穴の開け方はつくる人によってかなり違いがあるみたいですが、自分の場合には動きを制約しない範囲で極力
小さく開けることにしています。こうすると関節がずれにくくなり、ポーズが決まりやすくなります。
 また穴を小さくするためには使用するゴムはできるだけ細いものが良いわけで、そのためには人形自体をできるだけ軽くする必要があります。だから自分は軽量な
粘土をできるだけ薄くして使います。
 現在はラドールプレミックスとプルミエを半々に混ぜたもの、厚みはだいたい2mmから3mmといったところです。重さは最新作で400g強、持つとあまりの軽さに皆
驚くほど。
 また全体を軽量化することでゴムのテンションは小さくすることが可能で、関節の摩耗を少なくするメリットもあります。
 こういったことがすべて連動するということが分かってきたことも、これまでの成果の一つかな。



 つなぎ直して、関節の可動範囲を確認しているところです。


   10 ゴムを通す穴は小さめに開けてあるので、動きを制約して
    いる場合にはこの穴を拡大します。
   

 立つ座る、その他もろもろのポーズをとらせて関節を調整してゆきます。



リメイクプラン C
 関節が成型できたので、いよいよ造形作業に入ります。
 まずは全体を眺めておおまかな方向性のようなものを考えてゆきます。ただ長い時間かけたこともあって、今見てもそこそこうまくまとまっている
感じはするね。



 一方でSD(スーパードルフィー)が全盛だった時代につくったものなので、それに引きずられているようなところも感じるな。
 ここはいわゆるフィールドライン理論に基づいてちょっと女性らしい丸みがあって、スムースなボディラインを描くように変えてゆきたいと思います。
「見た感じが柔らかいということ」、最近のテーマはそれです。


   11 プランに沿って盛るところは盛る、削るところは 削る。そして磨く。
     

 まずはイメージしたラインを直接ボディに書き込んでゆきます。「+2」は最大で2mmぐらい粘土を盛る、「-1」は1mmぐらい削るという意味です。
 いちばん大きい変更はやはり関節周辺です。膝、足首、手首などは一回り細く修正します。関節が太めなのは分かっていたけど、強度不足になるのではないかと不安で
できなかった。でも今の自分の技量だったらたぶん大丈夫。

 次に粘土を盛ったり削ったりの作業になりますが、注意事項としては、塗料が塗ってある場所は粘土がそのままでは付かないので、今回はモデリングペーストに少量の
木工ボンドを加え、水で柔らかくしたものを事前に塗って乾かしておきます。
(いつもはジェッソなのですが、買い置きしてあったはずのジェッソがなぜか見当たらなくなっていた。)
 あとご覧の通り、最初の造形は組みあがった状態で行います。こうすれば関節が曲げたりひねったりして、具合を見ながら造形をすすめることができます。
 自分のようにまずは関節をつくる方法であれば、関節を曲げたときのラインを確認しながら作業がすすめられます。これがこの方法の最大のメリットです。

12 形がある程度整ってきたら、今度はパーツごとに
 仕上げてゆきます。
13 ときどき近隣のパーツとのつながりを確認して
 ゆきます。

 盛るという作業は骨格に沿って行う方が圧倒的にやりやすいです。(上の画像だと縦方向)
 一方で布やすりでの磨きは横方向メインですすめます。同じ縦方向でやってしまうと、凹凸がどうしても残りやすいので。
 これを知らない頃は磨いても磨いても平坦にならず、苦労してました。ボディラインのつながりを確認するために、ときどき隣のパーツと組み合わせてチェックすることも必要です。

 こういった作業を4順ほど行うと、もうかなりのレベルでボディラインが整い、あとは細かなキズを埋めたり、凹凸をならしてゆく作業が中心になります。造形的な部分は徐々に
小さくなってゆくので作業自体に飽きが来る。ここから先ははっきり言って退屈、つまらない、でも頑張る。

 

 盛る削る磨くの作業を5順ぐらいしたところで造形はほぼ完了、気づいたらもう手の入っていないところは10%も残っていない。半分は残ると思っていたけど、
やり始めたら細かなことが気になり始めて、結局こうなってしまいました。
 やはりいちばん変わったところは関節周りで、極限まで削り込んであります。特に肩と膝周辺はこれまでのものより洗練されていると思います。解釈が少し
変わりました。


14 全体にイージースリップを染み込ませたスポンジ
 で磨いてゆきます。
15 レジンパーツにはジェッソを全体にまんべんなく
 塗ってゆきます。

 イージースリップ(現モデリングキャスト)で全体を磨くと粘土の毛羽立ちがなくなって、細かなキズや凹凸が見えてきます。
 この作業でイージースリップを使うのは自分のオリジナルです。固く絞った雑巾で行うのに比べ、表面が少しだけ強固になります。こういう作業のときだけ
イージースリップを使うので、買った1本で一生分ありそう。
 これで大きな傷が見つかったらもちろん粘土を盛って消します。

 手、足、肘のパーツはレジンキャストでつくられたものなので、表面に塗料がのりにくく剥がれやすいです。そこでまずは洗剤で離型剤を洗い流し、全体を
中目のスポンジやすりでざっと磨く。そして全体にジェッソを塗る。こうすると粘土でできた他のパーツと同様に下地塗料がなじむようになります。


16 モデリングペーストをベースにした下地塗料を
 塗ってゆきます。
17 塗りを3回行ったら布ヤスリで磨きます。そして
 更に下地塗料を塗る、この繰り返し。
18 全体が平滑になったところで、指先や爪などの
 細かな造形を行います。

 下地塗料はモデリングペーストにリキテックスのアンブリーチドチタニウムとライトポートレートピンクを混ぜて肌色に調整したものです。分量比は目分量で
96:3:1 ぐらいかな? ちょうどMr.カラーのキャラクターフレッシュ No. 111 と同じ色調に整えています。こうすると後でちょっと補修するときにも困らないで済みます。
 だいたい3回ぐらいこの下地塗料を塗ったら布ヤスリで磨きます。この下地塗料はしっかりと磨けるというのが最大のメリットです。3回の塗りと磨きを全体が平坦に
なるまで繰り返す。話としては簡単ですが、この工程がけっこうしんどいし飽きる。創作というより単純作業の繰り返し、でもここが仕上げの一番のポイントで手は
抜けません。だいたいこの工程だけで2週間ぐらいかかる。
 この下地塗料は厚みが出るので、爪とか指関節などの工作は下地作りの最後の段階で行います。この下地塗料はデザインナイフで切削が可能というのが有難い。


並行してヘッド部分の造形にも取り組んでいます。

   14 ヘッドの頭頂とフェイス部分の段差をなくします。そして違和感のあった
     上瞼と顎、鼻の形を整えました。
   

 実は作業に入る前の3日ぐらい、ときおりじっとこのヘッドを眺めて考えていました。人形作りって指先の器用さってのもあるけど、それより大切なのは観察力だと
思っています。



リメイクプラン D
 CG適当なウイッグとアイを入れて撮影し、それをPC上で画像処理してこの先の修正点を見つけます。

  

 作業っていうのは進めば進むほど選択肢が少なくなってゆくものなので、初期段階での構想とかイメージってとても大切です。
 上の画像をもとにして、軽く鉛筆で入れた眉毛の向きを変えてみました。向かって右目をやや大きく、左目はやや垂れた感じに修正しています。これは実際に
作業しているのではなく、GIMPを使ってPC上でシミュレーションしています。
 そのあとのイメージとして軽くメイクも入れてみた・・・。大丈夫そうです。
 こういう感じで自分は作業をすすめてゆくので、カメラとPCは必需品です。だから突如PCが動かなくなると作業そのものがストップしかねない。


  15 シミュレーションに従ってヘッド部分の造形を行います。
   

 確認されたイメージに沿って作業をすすめます。更に下地塗料を塗り、布やすり(180番)で全体を磨く。こまかな作業は主にデザインナイフ、あとは時々リューターです。
 この下地塗料が良いところは基本的な着色ができる上に磨きや削りが入れられるところです。この塗料も必需品。
 上の画像は最初に思いついた修正点に手を加えたところです。そして実際には、更にここで再び撮影してPCに取り込みシミュレーションする。あとはその繰り返しになります。
よくもこれだけ手間のかかることをやっているなと、自分でもときどき思うことがある。

  下地が出来上がったら本塗装とボディメイク、コーティングの工程になります。この先けっこう工程数があるのですが、ほんの少しずつしか変化しないのでテキスト中心で
整理してゆきます。

   16 Mr.カラーのNo.111キャラクターフレッシュと同じ色合いに調合したリキテックスを全体に塗りあげる。
   17 これにブラウンを混ぜたものを陰になる部分に塗り、パール粉を混ぜたものを明るい部分に塗り分ける。
     といっても、見てわかるぐらいにしちゃうとおかしいので、ブラウンもパール紛も混ぜる量はほんの僅かです。これで立体感のようなものを出します。

    


   18 乾いたところで全体にアサヒペンの高耐久スプレーつや消しクリアーを吹き付けます。(上の画像)
   19 球体関節部分にMr.カラーのクリアーレッド+オレンジを吹き付けて赤みをつけます。
   20 関節部分だけに高耐久スプレーを塗り重ねて、関節が適度な遊びとなったところで関節部分の塗装は完了です。
    関節部分にこれ以上吹き付けると、関節が動かなくなっちゃう!

 お分かりかと思いますが高耐久スプレーは透明な保護層をつくるために使っています。ちなみにつや消しクリアーというネーミングですが、実際には半つや消しぐらいで、
けっこうぴかぴかしてます。

   

   21 Mr.カラーのクリアーブルーをできる限り薄くして、わざとムラになるように(第二次世界大戦中のドイツ軍の夜間戦闘機迷彩みたいな感じ・・・と言っても分かるかな?)
    吹き付けます。

 人間の肌は基本的には彩度の低いオレンジからピンクの色合いです。この補色となるブルーを最初に塗ると、色合いが複雑になって厚みのようなものが出てきます。
絵画の世界では昔からある技法です。ちょうど静脈の流れのようなものが表現できたりもします。

   22 高耐久スプレーを再び吹き付けます。
   23 今度はMr.カラーのクリアーレッド+オレンジを唇やその他赤みをおびた部分に吹き付けます。またわざとムラになるように吹き付けて動脈のような表現をつけます。

   

   24 高耐久スプレーを何度となく吹き付ける。今回は多分10回ぐらい、スプレーが2本空になりました。(上の画像)

 こういう工夫をすると、単純に着色した場合に比べて、肌の透明感や肌の色の深みのようなものが出てきます。
 基本的にはこの状態からスポンジやすりで磨きを入れて、最後にMr.カラーのつや消しクリアーを吹き付ければ終わりで良いと思いますが、ここから先もう一工夫です。

   25 全体にスポンジやすり(中目)で磨きを入れます。


    

   26 2液混合タイプのウレタンクリアーを吹き付けます。(上の画像)

 吹き付けるとこれ以上ない光沢、しかも車の塗装に使われるほどだから耐久性も高いです。ラッカーにも強いのでこの後のメイクを失敗しても、短時間なら問題なく薄め液で
ふき取れる。

   27 全体にスポンジやすり(細目)で磨きを入れます。 これをしないと上に塗った塗料がすぐ落ちる。
   28 全体にMr.カラーのつや消しクリアーを吹き付ける。
   29 つやのある部分(爪など)にクリアーを塗ります。(上の画像)

 でまあ、こんな感じでボディは仕上がります。
 実は今回、ちょっとだけコーティングの工程を変更しました。以前は透明層はすべてウレタンクリアーで仕上げていたのですが、塗料自体が高いし、吹き付ける道具のお手入れも
ものすごく大変です。ここは高耐久ラッカースプレーに大半をまかせて最後の一回に絞った。
 あとウレタンクリアーに艶消し材を混ぜて吹き付けると、とてもマットできれいな表面になるのだけど、その分汚れをひろいやすく、浸み込みやすくなるのでそれもやめた。
 Mr.カラーのクリアー系塗料の耐久性も高まったし、比較的簡単に手に入るので、汚れたら磨く、落ちた分はまたMr.カラーのつや消しクリアーを吹き付ける、それが一番簡単なお手入れ
のような気がします。 (但し遊ばずに飾っておくなら、やっぱり艶消しウレタンクリアーの方が絶対に良い、信じられないぐらい塗装面がきれいです)





 再びドールヘッドの方に戻ってきました。ボディと並行して作業を進め、こんなところまで出来上がっている。



メイクはまだしておらず、眉毛と唇に必要最小限の色を入れているだけです。


 

 この段階でウイッグやアイを選びます。基本的にはウイッグは普通に市販されている2000円台のもの、アイはヤフオクあたりで仕入れた400円~800円ぐらいのものです。
これらをある程度の数をそろえておいてその中から選ぶようにしています。数千円するようなアイもあるけど、上質だからといって必ずお人形にぴったりということでもないです。
 自分はたくさんある安いもののなかから選ぶ方が結果は良いように思います。
 ここまで単調な作業が続いていたので、この完成一歩手前のこの段階が人形作りでいちばん楽しいところかも。



   30 アイとウイッグの取り付けを行います。
   

 何十という組み合わせのなかから選んだのはこの組み合わせです。黒髪にライトグレーのグラスアイ、何か久しぶりに日本的な女の子にしてみたくなった。
 ただこの組み合わせに眉毛のブラウンはちょっと似合わないな。


  

 早速眉毛をダークグレーで上書きして、再びその画像をPCに取り込みます。今度はアイラインや眉毛・睫毛、メイクなどのをシミュレーションしてみます。
 ・上唇が少し薄いので厚みを増し、左右の眉毛の傾きの違いを修正したうえで、全体をやや太くする。
 ・口元の引き締まった感じを出すために両脇に影を入れた。
 ・メイクとしては薄いブラウン系のアイシャドウ、頬にピンク、上瞼のアイラインの強調、そんなところを基本として、全体のコントラストを上げています。
 こういうシミュレーションをしておけば、実際の作業でも何度もやり直すことなく、効率的なメイクできます。
 これって人間でもできると思うのですが、誰かやっている人いるのかな?


   31 シミュレーションに従ってフェイスの修正と
    メイクをすすめます。
    

 眉毛や唇はMr.カラーで、それ以外は人間用のメイク道具を使って行います。
 一回で着色できるチークやシャドウはほんの僅かなので、少し色がのったらつや消しクリアーを吹いて色を固定し、更にチークやシャドウをのせてゆくという感じです。
 あとは上睫毛をとりつけ、ウイッグの前髪を整えたらとりあえずの完成です。
 けっこうお人形に濃いめのメイクをしている人もいるけど、自分はメイクしているのが分からないぐらいのナチュラルさが好きです。こんな娘どこかに居そうな気がする、
そう思えるようなお人形がやっぱりいいな。





 

 とりあえずの完成ではありますが、まだまだこれで終わりじゃない。
 人間を含めた動物の視覚ってものすごく優れていて、何万という個体のなかから特定の個人を見分け、しかもその感情的なものまである程度理解できるような能力を持っている。
 ただ一方で主観に左右されやすいという欠点もある。出来上がったばかりで嬉しい気持ちになっていると、ついつい制作物の欠点を見落とすことになる。だから客観的に作品を
見るために撮影をします。
 正面からは問題がないのですが、ご覧の通り少し斜めから見るとグラスアイの瞳孔がぼやけてきて、更に正面から外れると瞳孔自体が見えなくなる。
 このグラスアイを交換すればもっと良くなるに違いありません。あと口元はもう少ししまった感じの方が良いかもしれない。


 

 そして交換・修正します。(上の画像)
 今度はちゃんと服を着せてみた。なんで制服を選んだかって? もちろん世のおじさま方を惑わすためです。(やや本気)
 基本、オリジナルドールでありながら、VOLKSのSDとDDの間のボディラインに納めているため、自分の作るドールは基本的に市販の1/3ドールのほぼ
すべてが着せられます。飾っておくだけでなく、お人形遊びするためには、これとっても大切なことです。

 また写真を撮ってPCで眺めてみる。
 今度はアイラインが気になり始めた・・・。でちょこっと修正。
 こんな感じでまた少しずつ完成度を高めてゆきます。この最後の調整って、どこをどうするって方程式があるわけでなく、99%感覚の問題だろうと思う。
だからこちらの見る目が変われば、理想的な人形の姿も変わってくるわけで、ここは考えようによってはエンドレス。だから現時点でのベストを見つけた
ところで完成となります。

 

 3回目の修正です。たぶんこんな娘どこかにいる、そう思わせるような仕上げをしたつもりです。
 でも正直なところ、何か足りないというか、輝きのようなものを感じないというか、この段階での満足度は68%ぐらいなんです。



 終わったということにしたんだけど、また写真を撮ってGIMPで画像をいじります。(上の画像)
 この娘との付き合いは長くなりそうです。リメイクにきりはないので、記事としてはこれで終わりにしたいと思います。



2020.08
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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