ドールのメンテナンス 1 お湯パーマ



 ドールメンテナンスの話です。ドールの制作の最後に行われる作業のなかに、お湯パーマというものがあります。
 これはその名前の通りお湯を使ってヘアーの流れをコントロールするもので、これをするしないでがらっと結果が変わってきます。


1 キャッチライト



 これは自分自身の個展「情景のなかの人形たち」で展示したオリジナル球体関節人形 akane です。美術館内で普通に撮影してみました。
 美術館の展示会場は天井から一様な照明で照らされています。その関係で展示室内には影もできないし、とびぬけて明るいところもない。
たとえば絵画の鑑賞にはこういうフラットな明るさが向いているんだろうと思います。
 でも必ずしもドールの場合にはこういう特別な照明が良いとは言えません。



 これは正面から小さなLEDライトで照らしたものです。お気づきの通り印象が変わります。
 一般的な家庭でよく使われるLEDライトや蛍光灯といった照明で照らしてあげると、こんな感じでアイがキャッチライトして、生き生きと
見えるようになる。
(だから本来は会場にコンパクトな電源とライトを持ち込みたいところ)
 キャッチライトはドール撮影において、とっても大切なことなのですが、残念ながら市販の多くのお人形は描き目なのでキャッチライト
しようがない。
 だから自分の場合には1/3から1/12にいたるサイズの人形はすべて入れ目で仕上げています。もちろん1/6とか1/12のサイズのドール
アイは市販していないので自作しています。入れ目であることは主役のドールとしては絶対に必要なことです。





 これは aimi という、1/3スケールのオリジナル球体関節人形の画像です。キャッチライトはしてるけどちょっと弱い。なぜかというと、
前髪が瞳にかぶさってきて、光線を遮っているからです。



 個展の後、このドールは早速お湯パーマで手直しすることにしました。具体的には光の通り道を確保するために、前髪を左右に分けてお湯を注ぎ、
ウイッグをカールさせるというものです。ご覧の通り、これで前髪が左右に分けられてキャッチライトしやすくなった。





 道具は volks などのメーカーから発売されているものを使うのが、やっぱり確実かな。但しこれは1/3スケール用のものなので、大きすぎて1/6の
ものには使えないし、そもそもショートヘアーの場合にはとても使いづらい。なのでそういう場合には、皆さん割り箸と輪ゴムとか、いろいろ工夫して
お湯パーマしてるみたいです。
 またお湯そのものを流しかけるほかに、大きな面積をゆるくカールさせる場合には蒸しタオルなどを使うこともできます。





2 顔の輪郭

 次は自分流のお湯パーマです。道具としてはパイプとやかんのみ、小スケールやショートウイッグにも対応できます。部分的に少しずつ作業をすすめる
には良い方法だと思っています。

 

 実際の手順なんだけど、流し台の近くにパイプを固定し、(画像は説明のためなので、自室で行っています)
 そこにカールさせたいヘアーをのせ、そこにお湯を注ぎます(ピンク)。するとそのパイプの形状にならって、ヘアーが熱でカールするので、
後は全体を少しずつ毛先の方に移動しながら(黄色)、ちょっとずつ全体の形を整えてゆきます。
 ポイントとしては注ぐお湯は沸騰したものでなく、すこし冷ましたもの(90℃ぐらい?)を使うこと。また使うのは普通のやかんではなく、注ぎ口
の細い、たとえばコーヒー用のものが良いです。
 そして使うパイプはいろいろな半径のものを用意しておくと、思ったようなカーブが描きやすくなります。


ikumi (オリジナルヘッド+TBLeague s24Aボディ 27cm 2018 )

 このウイッグは市販のストレート4インチサイズのものです。
 顔の輪郭がストレートに出てきます。またウイッグはその構造から、うなじの部分までは再現できていないのが普通ですが、見る角度によっては
この部分まで覗けてしまうという欠点があります。



 お湯パーマをかけたミディアムな長さのウイッグです。内巻きにしたのでうなじ部分が隠れました。また同時にきれいな卵型の輪郭が描けています。
人間と同様、人形の場合も髪型でその輪郭をコントロールすることができます。





 何かね、最近思う。ドールをきれいに撮影するためには、カメラや照明だけでなく、メイク、ヘアー、ファッション・・・、いろんなことを知っていなきゃいけない
んだなと。とてもメジャーとは言えない趣味ではありますが、その道を究めるのは難しいです。



2020.09
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X & Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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