stratum



地層のなかの sara













 こちらは人形が化石のように地層に埋もれているシーンをジオラマにしたものです。
 本格的な球体関節人形をつくり始めてもう14年ぐらいになるのだけれど、こちらの sara そのごく初期の作品。久しぶりに取り出して感じたのは、
もう完成 してからすでに12年も経過しているのだけれど、劣化する部分などなく、完成した頃と全く何も変わっていないという驚きでした。
 もしかして人形というものは生命を持つものではないけれど、その存在自体は永遠なのかもしれない。
 長い年月を経て様々なものが滅び化石化してゆくなかで、球体関節人形が今にも動きそうな状態で発掘される、 そんなことがあっても良いかなと
思ってつくりました。














stratum (地層のなかのsara)
 作品のサイズは90cm×60cm。主な素材としては木枠、スチレンボード、粘土、砂、着色はリキテックスとMr.カラーの吹き付け。
 DOLL自体は取り外し可能でサイズは60cm。主な素材はラドールプレミックス、着色はリキテックスとMr.カラー、最後は艶消し透明ウレタンでコーティングを
行っています。装飾品は市販のネックレスを加工したもの。

 今回は1年経過した後、リメイクしたものを再掲載しています。リメイクのポイントは極めてフラットな展示会場の照明下でも、あたかも深い洞窟の底に
光が差し込んだように見えるよう、演出したことです。
 それなりに完成度は高いと思っていたのですが、最後に行ったドライブラシ(白っぽい塗料に艶消し剤を混ぜて荒くこすりつける)が利き過ぎて、少し明く
なりすぎたのと、いざこれを会場に運び込んでみたら、思ったより迫力がない。
 どういうことかというと、個展会場は天井が高く、その全面に取り付けられたLEDで、あたりが一様に照らされていて、照明としては極めてフラット、影などは
ほとんどできない。結果として立体作品だとややコントラストに欠ける感じになるんだろうなと気づいた。
 普段、影のできるような環境で作品をつくっていると、いざ実際に会場に持ち込んだときに、あれっ!?て感じになる。



 

   どうしたらよいのか最近まで考えていたけど、ある日急に気づいた。影がなければつくればいい。
 早速、上の画像をPC上でシミュレーションします。GIMPで全体のコントラストを上げ、画像の黄色い印のあるところから右下にスポットライトが当たっている
ような感じで、ドールによってつくられるはずの影をつけてゆく。そのうえで周辺の明度を下げると、深い洞窟の中の発掘現場のような雰囲気になる。




 シミュレーション結果に満足したので、早速リメイクにとりかかります。
 まずはブラックグレイを溶剤で希釈して、段差の部分や埋め込んだ小石の右斜め下から、作品にほぼ平行な方向から吹き付けてゆく。これで全体の
コントラストが上がります。




 そのうえで今度は人形が作るはずの影を描く。このとき少しだけブルーを混ぜると、日陰の持つ青みが表現できてそれらしくなる。(黄色)
 あとは周辺の明度を徐々に落としてゆきます。(ピンク)




 当初つけていたドライブラシによる風化の雰囲気は消してしまって、全体としてややしっとりとした質感に改めました。この方が地中奥深くに埋もれていた
重さとか湿度のようなものが感じられると思ったからです。(半つや消しのブラックを全体に薄く吹き付けた)








2020.11
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



サイトのトップページにとびます