神奈中バス「山入口」バス停
新型コロナのおかげで遠出せず、ご近所のお散歩が多くなりました。
おかげで最近ではお気に入りの場所がいくつもできました。
こちらは平塚市の吉沢地区にある神奈川中央交通の「山入口」バス停です。里山にあるごく普通の風景に、ぽつんと屋根付きのバス停、
最初見たときに何て絵になるバス停なんだろうな、と思いました。
「山入口」という名前自体もいいね、この道を奥に向かってすすむと、本当に丘陵地帯の深い森があったりします。
となりには小さなお地蔵様の収まった祠もあります。ちなみに次のバス停は「山の神」です。
そしていつしか、これをジオラマに再現しようと思うようになりました。
1 何枚か撮影した画像から、20cm×25cmのパネル上に道路や建造物の位置を直接描いてみました。
実はこの配置図はやや道路を狭く描いている。最初はスケール通りに縮小したけど、あまりにも道路の面積が大きすぎてバランスが悪かった。
こういうことって自分としては問題ないって考えている。作品ていうのはリアルなものをつくるのが目的じゃなくて、自分のイメージする世界を
表現することだから。
ちなみに今回のスケールは1/72です。
最近よく作っていた1/24だと、この作品でまわりの雰囲気まで出そうとすると1m四方の大きさが欲しくなる。しかも細部のごまかしがきかないので、
すべてをつくり込むと、きっと半年がかりの作品になってしまう。一方でNゲージの1/150あたりでは細部が表現しきれない。
1/72はある意味中途半端な感じもするのですが、今回のジオラマについてはそういう中庸なところも合うのでないかと思って、今回初めて選んでみました。
1/72はプラモの世界ではメジャーなスケールなので流用できるものが多いし、またHOゲージ(1/87)の西洋人フィギュアは、このスケールの日本人の
大きさに相当するというのも具合が良いです。
2 2mm厚のスチレンぺーパーなどを組み合わせて
起伏をつくります。
3 次にジェッソを塗り、その上から軽量粘土(プルミエ)
を延ばしながら貼り付けてゆきます。
ジェッソを塗るのはこの粘土が剥がれないようにするためです。
強度は大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、確かにスチレンペーパーだけだと不安があるけど、粘土を張り付けて乾燥させれば、落っことしたぐらいでは
壊れません。
逆にすべてを粘土で作りあげてしまうと壊れやすい。発想の転換なんだけど、強度を持たせるってことは、頑丈に作るだけでなく、軽量化によっても得られます。
鉄の球は頑丈だけど、ピンポン玉だってビルの上から落としても壊れたりしない。
4 100均で買ったアクリル絵の具で、ひととおり色を
おいてゆきます。
5 マスキングしながら、アスファルト、コンクリート、
地面それぞれを塗り分けてゆきます。
6 細かなペット用の砂をところどころに撒いて、ころ
がっている砂利などを表現します。
まずはアクリル絵の具でひととおり色をおいてゆきます。色を塗りながら、これからの制作プランを考える。
最初に道路を仕上げ、次に原っぱ、そしてバス停本体の順に制作する。まずは全体を70%ほどの完成度で仕上げ、一巡したところで細部を整えてゆくことにします。
ここも考え方なんだけど、いきなりすべてを100%の完成度でつくろうとすると、行き詰まったり、引き返すことができなくなったりする。このあたりは絵を描くのと同じ
だと思います。
道路についてですが、タイヤの通るところはきれいな路面だけど中央やはじっこは土をかぶっている。もちろんアスファルト舗装とコンクリートは色合いが違うし、
つくられた時期によっても色が違います。このあたりは実物の画像が参考になります。
横断歩道とか止まれのマークもマスキングして、上から少量のジェッソをこすりつけ、かすれた感じにしています。
時間経過のようなものが感じられると、ジオラマは俄然リアルになる。
7 100均で入手した「ナチュラルモスマット」をむしり
とって、地面部分に貼り付ける。
8 部分的に鉄道模型の草原シートも貼り付けて、
不均一な感じに仕上げる。
次にバス停周りの草原を再現するのですが、都合の良い1/72スケールの「草原キット」みたいなものは販売していないし、また草一つ一つつくるわけにもゆきません。
鉄道模型の世界だと、緑色のパウダーをまいて、これは草原として見て下さいみたいな約束事というか、暗黙の了解のようなものがあるけれど、それに頼っていては
リアルな表現にはなりません。
ということで草丈1m足らずの草むらに近いものをまずは探して、それらしく見せる工夫をするということになります。ベースになるのは100均で購入したナチュラルモスマット
という商品です。茶色いスポンジ状のものに、草丈5mmの緑色の繊維が立っていて、ちょうどこれが1/72の草丈にぴったりです。
この繊維の束をスポンジからむしり取って接着剤で貼り付ける。但しすべてが同じ高さになるのも変なので、ところどころにやや低い草丈3mmの草原シートも混ぜ込んでゆく。
更につなぎ目がおかしかったり繊維が不自然なところは、NOCH社の繊維状のパウダーで覆う。
おおむねこれだけの作業で、もしかしたらこんな草原があるかなって感じには仕上がった。確かに最初の画像とは違う草原だけど、20cm×25cmの小さな空間の中では、
それほど不自然さは感じない。こういう割り切りってやっぱり必要なことだと思います。
そしてもっとリアルになる良いアイディアが浮かんだら、その段階で修正を加えます。
、次は存在感のある待合所と脇のお地蔵様をつくります。
9 現地で4方向から撮影した画像から、1/72サイズに縮小したプリントをつくってみました。
図面をひくという作業はけっこう面倒なので、こういうことをしてみました。 拡大縮小と合成はGIMPというフリーのアプリを使っています。もう模型やジオラマの制作に、
PCや画像処理ソフトの存在は不可欠ですね。これがないと何倍もの時間がかかることになります。
10 画像をもとにして1mmから3mm厚のスチレンボート
、スチレンペーパーをカットしてゆきます。
11 ボンドで組み立てたところです。必要に応じて、
写真をカットして貼り付けることもできる。
1/72スケールのプリントがあれば、これを型紙にしてカットすればよいので、サイズ的なことで迷うことはありません、簡単です。
12 乾燥後、実際の画像を参考にして、Mr.カラーで
着色します。
13 社の中のお地蔵さまは、Nゲージ用のフィギュア
を加工してつくります。
>
お地蔵様をどうやってつくるか少し考えたけど、Nゲージ用のフィギュア(1/150)がサイズ的にちょうど良いことに気づいた。たまたま100体で1000円みたいな
格安のものがあったので、これを利用することにしました。(手を加えないととても使えない代物だけど)
ちょうど良いポーズのものを見つけて下半身をカットし、グレーに着色する。
ともかく自分のやっている情景作りって、使えるか使えないか分からないままストックしている、様々な物品が頼りになることが多いです。だから自分の押し入れやら棚には
こういったものが、ずらっと並んでいる。でもこのなかで実際に使用することになるのは、もしかしたら1割もないかもしれない・・・。
お地蔵様を配置したあと、引き伸ばしたランナーからつくったクッキーとコップ酒をお供え物として置いてみた。
1/72だとこのあたりが限界かな。
14 透明プラ板を使って待合所の窓をつくります。
詳しくは、0.3mm厚の透明プラ板をプリントに合わせてカットし、そこにケント紙を幅0.8mmぐらいにカットしてシルバーに着色、これをアルミサッシの枠として貼り付けます。
今回はここが難しかった。結局半日かかって窓は出来上がったけど、出来はそれほど良くない。
15 きれいすぎるのも何なので、パステルを使って、
綿棒で汚しを入れます。
16 泥や雨だれなどの液体系の汚れは、パステルを
溶剤に解いて筆で塗る。
実際に風景の中に待合所を置いてみたら、ちょっときれいに仕上がりすぎていて馴染まない。
こういうときに活躍するのが、最近よく登場するパステルです。パステルを削って綿棒でこすりつけると乾燥した感じの汚れになるのですが、シミとか雨だれ、サビの浸み込みの
ようなものは、塗料の薄め液で溶いて塗ってやると良い感じに仕上がります。このあたりは使い分けです。
次の制作は電柱、標識といった小物類。1/72スケールのプラモ、HOの鉄道模型あたりで、使えるものがあるかと探してみたけど、結局みつからなかった。だからこちらも
1から作らなきゃいけない。
このジオラマ、思った以上に時間がかかりそう。
17 実際の写真から、バス停や道路標識などを1/72スケールにプリントアウトします。
18 支柱は0.8mmの真鍮線をカットし、塗料がのるよう、
プライマーを塗ります。
19 ここに先ほどのプリント用紙、厚紙を組み合わせ
てバス停などを作りあげる。
20 電柱は古くなった筆の属とエポキシパテで、まずは
大まかな形をつくる。
21 ここにプラ板や真鍮線を組み合わせて、電柱上に
あるパーツを追加します。
このあたりのものは、リアルな風景を再現するためには欠かせません。
電柱の横に伸びる支柱はプラ板を加工してつくっています。足場になるボルトは0.5mm径の真鍮線を切断し、穴をあけて取り付けした。また今回、
電線そのものについては再現するのは困難と判断し、省略することにしました。
出来上がったすべての追加パーツです。標識はどれも幅4mm以下なので、制作するにはルーペやピンセット等は必需品です。
実際にジオラマベースに取り付けたところです。
格段にリアル感が増した。ただ一方で今度は草原が単調で、ちょっと見劣りする感じになりました。実際にはもっともっと鬱蒼とした感じなので、
もう少し植物類を追加して、初夏の草むららしく仕上げてゆきたいと思います。
22 ミニネーチャーシリーズの草丈の長い花がセイタカ
アワダチソウに見えるので、まずは取り付ける
。
23 繊維素材のジオラマ素材の方は、先端に黄色い
パウダーをつけてイネ科の植物に見立てる。
24 ミニネイチャーシリーズの背の低い花をところどころ
にアクセントとして置いてゆく。
25 継ぎ目部分が荒く見えるので、まばらにターフを
撒いてゆく。
3種類の植物を配置したことで、良い方向に変化が出てきた。ただし継ぎ目の部分がまだ荒いのが目立つ。
ここで25にあるように、水で溶いた木工ボンドを筆にとり、軽くしかも不均一にナチュラルモスマットに塗り付け、ターフを薄く撒いていった。すると継ぎ目の
部分の荒さが消えて、なんとなく茎の長い植物のような感じに仕上がった。自分でやっておいて言うのも何だけど、不思議。
これがその仕上がり。
こちらは実物、リアルさとスケールのバランスを考えたら、このぐらいで十分かな?
さてジオラマベースは出来上がったとして、このあとのストーリーや主人公はどうしようか?
実は「このバス停をつくりたい」って気持ちで、勢いよくつくり始めたのですが、そのあたりは何も考えていなかった。そのうち思いつくだろうと思っていた
のですが、この時点ではまだ全然です。
まずい、このままじゃ、このジオラマは完成しない。
それともこのまま完成にしちゃう? それもありだとは思うけど、主人公のいないジオラマはやっぱり寂しい。
とりあえず、手元にプライザーのフィギュア(1/87)が、かなりの数あるので、一つ一つ眺めてみることにしました。もしかしたら何かストーリーみたいなものが
思い浮かぶかもしれない。
そして選んだのがこの2体です。
26 フィギュアを加工し、リペイントして日本の子供らしく仕上げました。
27 合わせて、夏のシーンを演出する小物類もつくってみた。
そして最後に全体を組み合わせて、ようやく完成です。
作品のタイトルは、神奈中バス「山入口」バス停。作品の大きさは20cm×25cm、フィギュアの身長は1.5cmほど。
夏休みの登校日、通学途中で久しぶりにクラスメイトに出会った場面を再現してみました。このシーンは手をあげている女の子を見た瞬間に思いつきました。
少年はなぜか虫取り網を背中にしょっている。(これも真鍮線とティッシュペーパーでつくっている)
午前の早いうちに学校は終わるので、そのあとは夏休みの宿題をこなすために友達とどこかに出かける予定という感じです。
ジオラマって、実物に似せて作るのはもちろん大切だけど、ここに季節感とか、歴史の重みとか、そういう味付けが加わると深みが増します。
本当はこういうものは置かれないのだろうけど、バス会社の立て看板などもつくって、夏休みらしさを演出してみた。
バス停の隣にあるのはお地蔵様です。
こちらは実物の神奈中バス「山入口」バス停、配置も実物通りです。ちなみにお隣のバス停は「山の神」です。
この場所は緩やかにカーブを描く場所で、こんな感じでカーブミラーが立っている。このミラーも自作です。草原の表現は100均で売られているモスマットを
ベースに、ミニネイチャーシリーズの草花などをところどころに配置しています。
スポット光をちょっと斜めから当ててやると、影が伸びて早朝って感じになる。通学時間帯の一瞬のシーンです。
ちなみに1円玉は大きさの比較のために置いたもので、この演出とは無関係です。
来年5月の個展に向けて10作品ぐらいの新作、リメイクを行うつもりなのですが、今回これでやっと3作品、もうちょっと頑張らないといけないな。
2020.11
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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