eye4工房番外編

森の神社

リメイク編



 自分の場合、だいたいいつも3つぐらいの作品を並行して制作しています。というのも、粘土や塗料は乾燥に時間がかかるし、時には
アイディアが浮かばなくなったり、制作に行き詰まってしまうこともあるから。だいたいこれがペースとして丁度よい。
 そして一つの作品が完成した現在、新たに2年前につくった「森の神社」というジオラマをリメイクすることにした。





 これがそのジオラマです。サイズは92cm×61cmあってかなり大きい。
 2年前、個展を開催するにあたって、何かインパクトのあるものをと思ってつくりましたが、実際に会場に持ち込んでみたら、会場自体が広いこともあってか、
それほど目を引くような作品になっていないことに気づいた。
 その後、草木を少し増やしたり、いろいろ考えたけど、つまるところあまり効果はなかった感じです。だから次の展の時には、展示作品から外しました。


<つまづき>
 そこで今回は根本的に作品コンセプトを見直してゆくことにします。
 森の神社と言いながら、森林を再現するなんてことはできないので、いっそのこと公園にしてはどうかと。だったら照明とかベンチや柵といった小物類を用意
しなきゃいけない。

 

 そこで100均で見つけたスタンドライトをベースにして、まずはソーラー式の街灯をつくります。
 1cm径のアルミパイプ、プラ棒、5mm厚のスチレンボードなどを組み合わせ、エポキシパテと粘着剤のついたアルミシートで固定して作りあげた。一見すると、
本物のように見えます。がしかしベースに立ててみても何かつまらない。これでベンチを置いて終わりにしたら、ジオラマとしてのインパクトは全くない。




 ジャンクパーツの箱のなかに、なぜか時計があって目についたので、この2つを組み合わせて時計塔をつくってみてはどうかと思いついた。
 とりあえず途中までつくったところで一旦冷静になる。あんまり無駄なことはしたくないので、今度はちゃんとシミュレーションをしてみることにした。




 ベースのお花畑と照明、時計、これまたジャンクパーツの柵、これらを別々に撮影し、GIMPで合成してみた。これがその画像です。イメージは古びた洋館の
裏庭です。
 なんとなく行けそうな気がしたので時計塔をつくり始めた。但し、制作がすすんで時計塔が形になってくると、やっぱり何かしっくりとこない。2次元画像としては
OKなんだけど、3次元にしてみると空間のバランスが良くない、奥行きが感じられない。



<やりなおし>
 ということで作業中断、また一からやり直すことにした。
 こういうことってたまにある。
 そもそも自分がイメージした空間て何だったんだろう? そもそも静かでどことなく神聖な空間だったような気がする。古い神社をめぐり歩いたときに感じる
空気感のようなものは再現できないのか?
 そして再び最初のコンセプトに戻ってきた。感じたことをイメージし、それを再現するというのは今回が初めてです。

 この作品で何が悪いのかというと、まずは鳥居そのものが全体から浮いてしまっていること。たとえ小さくとも、大昔からそこにあるような重厚感と存在感が
欲しい。だからまずは鳥居の修正から開始することにした。

   1 もともとあったものにパーツを加え、存在感のある形状に改めた。

   

 上の画像は元の鳥居に2~5mm厚のスチレンボードを張り付けて、シンプルなものから複雑で大きなものに作り替えたところ。
 いろいろ調べたけど、鳥居ってものすごくたくさんのバリエーションがあるみたいで、そのなかからいちばん品格のありそうなものを選んでみた


   2 リキテックスで着色、赤い色合いを抑えて重厚感を出してみた。

   

 具体的には、まずはジェッソにアクリルカラーの黒と少量の黄色を混ぜ、更に小動物用の細かな砂を混ぜて下地塗料をつくりました。下地塗料自体は
黄色みのあるグレーなのですが、これは後で赤色を塗った後に色の深みとして残ります。これは絵画の世界ではよく行われる手法。
 その後、赤2、黒1、黄色0.3ぐらいの配分で本塗装を行います。このときあえて濃淡をつけると風化した感じが出てくる。この塗り2回だけでけっこう良い
感じに仕上がった。



   3 風化が進んでいる感じや苔を再現します。

   

 汚しは次の手順で行います。
  ・ チャコールグレーを水で薄め、スポンジでまばらにたたくように塗ってシミを表現。
  ・ 全体につや消し材を大量に混ぜたタンを全体に吹き付けて、つやを落とします。
  ・ 再び薄めたチャコールグレーを筆にとって雨だれの感じを出す。
  ・ ライトイエローとライトグレーのパステルを削って、その粉を筆にとってこすりつける。
  ・ 鉄道模型の緑色のパウダー類を水で薄めたボンドで固定する。
  ・ 最後につや消し塗料を軽く吹き付けて、全体を落ち着かせる。




 だいたいこんな作業を行って、ここまで仕上げてみました。かなり落ち着いたトーンで、これなら浮いてしまうってこともない。存在感は十分です。




 次は地面の部分の修正です。この作品は92cm×61cmとかなり大きい。だから植物を一つ一つ手作りというわけにもゆかず、100均で買ってきた造花を
大量に使用しているのだけど、今一つリアル感に欠けたところがある。  



 実際、100均の植物だけでそれを再現するのは難しい。それでも他に良いものがみつからない以上は、これを主役にしてゆくしかない。ここは植物
一つ一つを塗装することで何とかしたい。


 

 このジオラマのベースになっているのは7mm厚のスチレンボード、ここにまずはタミヤのテクスチャーペイントを塗り、大量のミズゴケを張り付けた。
 出来上がった当初はそれなりに見栄えのする地面だったのですが、経年劣化でこのミズゴケがぽろぽろと落ち始めた。昨年この作品を個展に持って
ゆかなかったのは、この理由も大きいです。



  4 もろくなっているミズゴケを払い落とします。

   

 経年劣化ってどのような素材でも起こることだけど、ミズゴケがこれだけもろいとは思わなかった。やっぱりここは鉄道模型で使われているような長期間の
保存に向くような素材に改めることにします。



   5 ターフやパウダー類をまいてゆきます。

   

 最初はターフをちょこっと撒いて様子を見ました。もっと明るく鮮やかな方が良いと感じて、次に明るい色のコースターフとグリーンのパウダーを混ぜたものを
更に撒いてゆいった。
 うん、いい感じ。苔に覆われた地面て感じになってきた。



   6 100均買った植物をばらばらにして再塗装、そのあと一つ一つ植えてゆきます。

   

 100均で買ってきた植物は、手間はかかるけどいったんバラバラにして塗装し直した方が見栄えがする。そのうえで1本1本を植え直します。





 意識したのは遠景、中景、前景のバランス。そして中景に置いた植物をいかに引き立たせるか。あとは背の高い植物の根元を小さな植物で隠すこと。
 何度となくお花畑や庭、公園を造ってきたので、何となくコツのようなものはつかんでいるつもり。自分は行ったことがないけど、多分こういったことは生け花教室
でも教えることなんだろうね。





 全体のレイアウトです。鬱蒼とした感じはなくして鳥居を中心に明るく仕上げてみた。完璧ではないけれど草花もかなりリアルに見えてきた。
 あとはここに何かの物語性を追加したいのですが、この時点ではまだ閃かない。



 もともと最初は、小鹿に誘われて森の奥にある神社へ向かうという、ちょっと冒険心あふれるシーンを再現したかったのですが、ちょっと流れが変わってきた。
修正ポイントの3つ目としては、ちょっとだけ神聖な感じを与えるものが欲しいということ。そしてそこれはここに置くドールそのものに任せることにした。
 次に作ることにしたのは神楽の面です

7 用意したのは自分のつくったドールヘッドと型取り
 用粘土です。これで型取りします
8 粘土を押し付けて型取りしたら、欠けた部分を
 粘土で補い、布やすりで荒く磨く。
9 下地塗料を何回か塗って表面を平坦に仕上げ、
 目や口の形を整えます。

 粘土を型から外したところで概形はほぼ出来上がっている。但し、粘土は柔らかくもろいので、このままでは細かな工作には向きません。そこでモデリングペーストを
用意して、ここにリキテックスのアンブリーチドチタニウムとポートレートピンクを混ぜ、適度な水を加えて塗りやすくしたものを下地塗料として用意します。
 下地塗料を塗り、乾いたら磨くという作業を何回か行って平坦化し、下地塗料がある程度の厚みを持ったところで、目、鼻、口といった細かな工作を行います。
 この下地塗料は細かな切削が可能なので、こういうときにはとっても便利です。扱いも楽なので自分は多用しています。

10 本塗を行い、そのあとつや消しクリアーを吹き付
 けて透明層をつくります。
11 Mr.カラーで髪、アイライン、唇などを描いてゆき
 ます。
12 眉の表現はチャコールグレーのパステルをカッター
 で削り、その粉を綿棒でこするつけて行う。

 本塗はリキテックスのチタニウムホワイトに少量のアンブリーチドチタニウムを混ぜたもので行います。乾燥後、何度となくアサヒペンの高耐久ラッカースプレー・つや消し
クリアーを吹き付けて、ラッカーの透明層をつくります。
 このあたりは自分の作る球体関節人形とほとんど同じ仕上げです。 目や唇を描き、眉を表現したら最後につや消しクリアーを吹きかけます。



   13 リボンを裏側に貼り付ければ面の完成です。

   



 

 とりあえず、うちのオリジナルドール nano ちゃんに持たせてみた。なんとなく行けそうな気がする。ただドールや着物は他のものも試してみた方が
良いかもしれない。
 あとは人選(ドール選)、着物、ポーズ、そういったものの問題かな。あと少しでリメイク完了です。



   14 ドールスタンドをジオラマベースにとりつけます。

   

 これは市販ドールのものを流用しています。





 最後の最後に主人公に選んだのは、TBLeague S35 のヘッドをリペイントしたDOLLです。自分では sae と名付けたんだけど、やはりこのジオラマには、
東洋系の顔つきの娘が似合うので迷いはなかった。
 眉毛とアイラインを引き直し、瞳をやや大きくしたというのがリペイントのおおまかな内容で、あとは人間用のチークやシャドウでメイクを加えています。
多分、オリジナルより優しい感じで、顔の印影が強調されていると思います。
 個人的に s35 はTBLeagueの製品のなかでも傑作だと思っています。s07A+KT005の組み合わせに並ぶお気に入りです。

 これにて準備はすべて完了です。





 こちらがリメイクする前の「森の神社」です。小鹿を追いかけて森の奥にある神社に入ってゆく様子を再現しようと思ったのですが、100均で買った植物が
ちょっと不自然で、何かポイントがつかめていない感じです。





 これがリメイク後の状況です。鬱蒼とした感じを一掃して、参道のきれいなお花畑を再現しました。
 全体の大きさは92cm×61cm、多分4.5畳の自室で制作できる最大クラスのジオラマです。


 

 地面はタミヤのストラクチュアペイントを塗った後に鉄道模型のパウダー類をまき、あとは100均で手に入れた植物をリペイントした後に1本1本
植えています。


 

 鳥居はより大きく複雑なものに作り替えた。調べたところ、鳥居にもいろいろなスタイルがあって、今回は横に広がるものを選んでみた。この形状が
空間に緊張感を持たせている感じがして、これは正解だと思う。








 面をかぶせると、ちょっとした迫力のようなものが出てくる。
 これで個展に向けた作品制作は4点が完成しました。開催予定のゴールデンウイークに向けて10点の新作とリメイクを目標に頑張っているけど、
結構苦しくなってきた。さすがにこれ以上の大物はつくれないので、このあとは多分、小作品を何点かつくることになると思います。
 そしてあとはコロナ次第・・・。



2021.02
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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