nano
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山を越えて







 遠い古の時代からあるという古道を歩いてきた。
 おそらくは何人もの旅人が、ここでこの景色を眺めてきたに違いない。


















 清らかな清水の流れる集落。
 6月になればホタルがいたるところで舞うという、でもそれは昔ならどこでも見られた風景だったはず。




















 ありふれた田舎道が画になっている。




 その足元にはすでに春の気配が。







nano (オリジナルヘッド+オビツSBHボディ 26cm 2018 )



2021.02
camera: Canon PowerShot G7X / graphic tool: S ILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

 最初の方の画像は小田急線の新松田駅から渋沢駅まで歩いたときに撮影したものです。
 東名高速の大井松田ICの脇を通り抜けてゆくと、富士見塚ハイキングコースの看板があるのでそこを上ってゆく、途中から舗装していない古道へ、
こちらがいわゆる矢倉沢往還で東海道が整備される前は東海と関東を結ぶメインストリートです。2枚目の画像は標高250mほどの富士見塚というところ。
 源頼朝が武士の士気を上げるために行った富士の巻狩りの際、この地の榎に馬をつないで富士山を眺めたという言い伝えから、その名前がついたと
言います。

 

 そこから下ったところに笠窪という昔ながらの集落があります。おそらくは林業と少しの畑作で生計を立てていたんだろうな、という感じのところです。
 集落は中村川の源流域にあり、あちこちからきれいな湧水が流れ出している。そして笠窪の集落はそれなりの谷底にあるので、ここから渋沢方面に
向かうには、この集落の真上を通る県道の橋を通らなくてはいけない・・・。これがけっこうな迫力で、怖くて下を覗けない。(右上の画像)
 橋の高さは100mはないと思うけど、それに近いような高さはありそう。普通なら高いフェンスで囲まれていそうなところなんだけど、ご覧の通り、歩道の
手すりは腰の高さしかないです。
 結果、1m離れ、下を見ないようにして渡り切りました。
 多分、日野正平はここを歩けないと思う。バンジーだってできそうです。
 2つの峠を越えてやってきたのが渋沢丘陵、1枚目の画像は「畑の展望台」と呼ばれるハイカーには人気の場所です。秦野の市街地や丹沢大山国定公園が
一望できます。



 中盤の画像は南足柄から開成町方面に向かって歩いたときのもの。
 4枚目の古民家は「あしがり郷 瀬戸屋敷」です。建物は築300年、江戸時代は旧金井島の名主を代々つとめた瀬戸家が所有していたもので、とてもきれいに
保存されています。もちろん中の見学も可で、これまで様々なイベントにも使われてきた。いちばん有名なのは雛祭りなんだけど、こちらもやっぱり新型コロナの
影響で、今年は中止が決まっています。

 

 その瀬戸屋敷のすぐそばに酒屋さんがありました。以前訪れたときにはなかったのにな・・・。
 6枚目の画像は瀬戸酒造店。1865年創業ながら1980年にいったん酒造りを中断、そして3年前、38年ぶりに醸造を再開したという、この状況下では奇跡的な
酒蔵でした。
 SAKETIMESの「瀬戸酒造店」で検索を入れると、多分その話が出てきます。ダメもとでハローワークに杜氏の求人を入れたら一人だけ該当者がいただなんて
下りは、ちょっと感動的です。画像左上は現在生産しているお酒のすべてです。手前のラベルは一つ一つのお酒の特徴と、それに合うおつまみの説明が書いてある。
自分たちはしっかりとした味の純米酒と、アジサイの花からとった酵母で醸造したお酒を買ってみた。こちらはライト&スムース、お米の味がして美味しい。
 地元の清水で育った米、地元の酵母、そして全量小仕込み、丹沢水系深層水などが材料。無名の酒蔵がやっていくのはとても大変、だからやれることはすべて
やっている感じです。ちなみに酒造り再開の仕掛け人は、コンサルタント会社の森さんという方で、いまはこの人が社長を務めている。なるほど、イメージ戦略的にも
洗練されている。
 庭があったのでちらりと覗いたら、こちらは何と角打ち庭園でした。この日も3名ぐらいの方がグラスを傾けていた。(画像右上)
 いいねここ、箱根の山を遠く望みながらお酒がいただける。
 きれいな庭園を流れる川は、脇を流れる清流を引き込んだものです。もしかしたら5月の終わりには蛍が舞うのかも。もうパーフェクトと言っていい空間です。



 

 後半は松田から八沢を経由して渋沢という、知らない人にとっては「なんじゃそりゃ」ってコースを歩いた時に撮影しました。
 頭高山というハイカーに人気の山の麓は3本の川が合流する地点で、我々はそのうち最も小さな川に沿って上流に向かいました。そして暗い谷を通り抜けると小さな谷合
の集落に出ます。ここは八沢というところで、その名の通りきれいな沢があふれ出ているようなところです。
 でもそんな小さな谷の上に、覆いかぶさるように今巨大な新東名高速道路の建設がすすみつつある。何かちょっとした違和感のようなものを感じました。(画像右上)
 でもその新東名の工事現場さえ見なければ、ただひたすら清々しい田舎の風景がひろがっていました。



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