eye4工房番外編
静岡おでん
<ミスマッチなジオラマがつくりたい>
さて最近では可愛い女の子のフィギュアがプラモの世界でも多数販売されるようになりました。
以前はガレージキットの専売特許みたいな感じだったけど、デジタルデータの取り込みと金型技術の進歩によって、びっくりするほど精巧な
ものが出現しています。
その代表的なモノの一つがハセガワの匠シリーズで、特にレースクイーンは何種類も発売されています。1/24というと、ちょうど自動車模型の
スタンダードサイズってこともあると思います。
もちろんそれをストレートにつくっても良いのだけど、サーキットの雰囲気でなく、もっと別なシーンにフィギュアをあわせてみたくてこんなものを
つくってみました。
<ジオラマの製作>
ここから先はこちらのジオラマの制作記録です。最後にもっと別な完成画像もあります。
まずは使用したキットのご紹介です。
1つめはハセガワの1/24匠シリーズのレースクイーンです。
( ハセガワ フィギュアコレクション No.9 レースクイーン Amazonでは990円)
2つめは軽トラの移動販売シリーズの一つ「静岡おでん」です。
( AOSHIMA 移動販売No.3「静岡おでん」、Amazonでは¥2180 )
ミスマッチな感じなんだけど、組み合わせの妙で「誰もがお酒を飲みたくなるジオラマ」を今回は目指したいと思います。
これがそのきっとの内容です。
フィギュアの方は細心の技術でつくられているので、そのままつくっても、結構よい感じに仕上がります。
移動販売車の方は少し古いカーゴのキットに販売スペースを組み合わせたもので、派生型が数多くあります。
1 説明書に従って移動販売車の方からつくります。
基本は「できるだけ組み立ててから塗る」
まずは移動販売車の制作からとりかかります。
説明書に従って組み立ててゆくだけで、簡単に綺麗にできあがるのなら何の苦労もありません。最近のキットは良くできていて、制作に大苦労する
ことはなくなったのは事実です。
このキットは基本となる軽トラックの荷台に販売所のカーゴを乗せたものなのですが、軽トラック本体の出来は良く、ある程度組み上げてから塗装する
という普通の流れで全く問題なし。
問題なのは荷台に乗せるカーゴ部分で、たとえば上の調理場は最初から一体成形されている。(右上画像)
これを綺麗に塗り分けるのはほとんど不可能です。(まあ、完成後はほとんど見えなくなっちゃうんだけど)
それでもなんとか目につくところだけは塗り分けました
2 デカールは透明な余白部分を取り除きながら貼
ります。局面はマークソフターを使います。
あとはこのデカールが厳しい。透明部分はできるだけ切り取って使いたいのですが、文字はかなり難しいので諦めました。
(段差ができて質感も変わってしまう)
もっと厳しいのはデカールそのものの質で、厚く硬いのでマークソフターを使ってもパーツの形になじまない。糊の粘着力も弱いので、最後には接着剤を
流し込んで固定するという荒技で何とか仕上げました。
あと忘れていけないのは、最後につや消しクリアーでトップコートしておくこと。これやらないといずれデカールはボロボロになって落ちます。
3 暖簾部分は厚みがありすぎるのでプリンターを使って作り直します。
暖簾部分はプラスチックで成型されているけど、厚すぎて暖簾に見えない。そこでデカールそのものを紙にコピーして使いました。こちらもつや消しクリアー(UVカット)で
コーティングしておきます。紫外線などで黄色くなってしまうのを、ある程度防ぐことができます。
かくして軽く仕上げてやろうと思っていたのに、完成まで2週間近くかかってしまいました。
暖簾が風にたなびいている感じが、自分としてはお気に入り。
この模型は熟練した腕前の人が、リアルさを求めて真剣に取り組むという性質のものでなく、むしろ初心者や子供が「ちょっと面白そう」という軽い気持ちで
取り組むものだと思う。
でもそういう人たちが、これをきれいに仕上げられるかというと、かなり厳しい感じがします。
この製品、正直かなり立ち位置の難しい模型だと思う。
さて次はフィギュアの制作です。
4 まずは塗装しやすいように真鍮線にパーツを取り
付け、サーフェーサーを吹き付けます。
5 こちらは腕をカットして真鍮線でつなぎ真っすぐにし
たところです。
6 肌の部分にMr.カラー No.111 キャラクターフレッ
シュで着色、そのあとつや消しクリアーを吹き付ける。
こちらのキット自体の出来はとても良い。それでも真鍮線に取り付けてサーフェーサーを吹き付け、細かなキズは瞬間接着パテで微修正しました。
7 メイクは人間用のチークやシャドウをつかって行
います。そのあと筆で輪郭を整えます。
8 そのあとは薄い色から塗り始め、はみ出したら乾いた
あとにデザインナイフで削り取る。
人間用のチークやシャドウを使って顔やボディのメイクを行います。1回ではあまり色がのらないので、つや消しクリアーを何度なく吹き付けては色を
重ねます。
このとき使用する綿棒は3種類、上から子供用の小さい綿棒、これは比較的広い面積を着色するときに使います。一般的には真ん中のつまようじに
綿のついたものが使いやすいです。一番下は固くとがった綿棒で、細かな溝にチークを落とし込んだり、逆に色がつき過ぎてしまった時にこすって落とす
などにも使えます。
このあと目や口を描きます。自分の場合にはまずはきっちりと上瞼のラインを書き入れて、これを基準線として他の部分に色をおいてゆきます。
上の途中画像は1回目の作業が終わったところ、はっきり言って上手じゃない。世のなかには1/35スケールでもきちんと描き分けてしまう人がいるわけで、
とてもそういう人たちには敵いません。
ただこうやって画像に撮って拡大し、欠点を見つけてはデザインナイフで削ったり、色を加えたりして何とか見られるレベルにしてゆくことは可能です。
ちなみにこのキットには目のデカールが付属していましたが、これをきれいに張り付けるのは至難の業だと思って使いませんでした。おそらくは時間をかけて
筆で仕上げた方が結果は良いと思います。
1週間ぐらいかかってここまできた。とりあえず見た目は大丈夫かな。
移動販売車が完成し、そこで活躍する二人のスタッフも揃った。
さてこの2つの組み合わせからジオラマをつくろうと思っていたのですが、ちょっと説得力のようなものが足りない感じがして、3つ目のキャラクターを
配置することにしました。
やっぱりおでんと言えばお酒が欠かせない。それで1/24スケールのお酒のミニチュアをいろいろ調べたのですが、市販品のほとんどは1/12で、
1/24のものは通販のキットしかありませんでした。それでも自分で制作するのは手間がかかるので早速取り寄せました。
キットは3Dプリンターで成形された一升瓶5本とそれに合わせるラベルと言った内容でした。(650円)
9 一升瓶のキットをつくります。瓶はクリアーカラーで
着色し、欧倫たーで出力したラベルを張ります。
10 ジャンクパーツから引っ張り出してきた屋台を
ベースにお酒のカウンターをつくります。
12 暖簾として仕上げているのは静岡の酒造メーカー
のラベル、劣化を防ぐためにクリアー吹きします。
一升瓶のキットにはラベルが付属しているのですが、「静岡おでん」なので、お酒も静岡の銘酒にしたい。そこでネットからラベルの画像を引っ
張ってきてプリント、一升瓶の方も製品に合わせて着色しました。
。スペース的に寂しかったので、アスカモデルのドリンクセットで隙間を埋めてみた。
静岡おでんと静岡の銘酒、完璧な取り合わせです。
次にベースをつくります。
13 レイアウトを決め、100均の角材やスチレンボードで
ベースをつくります。
まずは出来上がった3つを組み合わせてレイアウトを検討します。今回は「余白」のようなものはつくらず、ほぼこの3つが丁度収まるように配置することにします。
「移動販売」あるいは「名産品のキャンペーン」といったものは、当然ですが人通りの多いところでやるもの。だから面積を大きくすれば、人やそれに付随する様々
なものを作り込まなくてはいけない。余白があってそこに何も置かないのは不自然に見えてしまいます。
ジオラマサイズは19cm×14cm、3つをぴったりと収めるにはこれ以外のサイズはありえない。
今回のジオラマは「静岡おでん」と「静岡の銘酒」のキャンペーンを兼ねた移動販売のようなものを想定しています。だからシーンとしては商店街の一角、ないしは
駅前の広場、道の駅など人の集まる場所での演出を考えなくてはならない。
14 板目紙を細かく切ってベースボード上に張り付け
てゆきます。
15 隙間に薄めたボンドを塗って、そこにペット用の砂を
落とし込んでゆきました。
16 1枚1枚を塗り分けて変化を出し、最後につや消しクリアーのトップコートをします。
地面はアスファルトや草の生えているような感じではなく、街角によくある現代的な石畳にします。こうすればまわりに人がいるような感じになるはず。
こういうつじつま合わせは、ジオラマのリアリティーを高めるのに絶対に必要です。
もしここをアスファルトにしたらきっと駐車場に見える。そこで静岡おでんとお酒の組み合わせを運転手にすすめるのは、さすがにまずいでしょって訳です。
作業としては、まずはベースボードに1cm×0.5cmの板目紙を張り付ける。(A)
計算上500枚ほど張り付けることになるのですが、飽きやすい性格なので時々中断、結局張り付け作業だけで半日かかってしまいました。
次はマッドジェルメディウムを水で薄めて隙間に塗り、上からペット用のトイレ砂を落とし込んだ。(B)
こうすることで流し込んだコンクリートのじゃりっとした感じが出て、地面自体が単調になるのを防いでくれます。
石畳は、基本的にはオレンジからブラウンの間の色で1枚1枚塗り分けてゆきます。(C)
その後、全体に風化した感じを出すために、つや消しクリアーに少量のタンを混ぜたものでトップコートを行います。(D)
石畳1枚1枚を張り付けたり塗り分けするのは手間はかかりますが、結果は努力を裏切らない、良い感じに仕上がりました。
この段階で登場人物を再配置します。(E)
画像にはありませんがベースボードのサイド部分はあらためで艶消しのダークブラウンで塗りました。(F)
ジオラマベースのサイドというのは、絵画で言えば額縁みたいなもので外の空間との境目になる。自分の場合、特別なことがない限り、上に乗っている
ものの色合いを平均化して(混色して)、その色の彩度を落とした色で塗ることにしています。
今回はブラウン系なので、その彩度を落とせばダークブラウンというわけです。雪景色ならライトグレー、色が多すぎて迷った場合にはチャコールグレー
かな。でも黒は使いません、黒は強い色過ぎて目立ってしまいます。
もうそろそろ完成が見えてきたのだけど、まだちょっと足りない感じがする。一つは季節感、二つ目に時間帯、そして場所的なもの、こういったシチュエーションに
関するものが弱い。
それからお酒を置いたカウンターだけど、もともと1/32スケールぐらいのサイズ感で屋根がフィギュアより低いというのはやはり不自然です。このあたりを修正
して完成させたいと思います。
17 移動販売車を固定します。画像は自作した取付具
を設置しているところです。
18 ちょっと寂しいので赤ちょうちん他、電飾を追加する
ことにしました。
移動販売車については特に問題はないので、ベースボードに自作した固定用のパーツを取り付け(上の画像)、しっかりと移動販売車を固定します。
こういうことはきっちりやっておかないと、作品を移動した時に悲しい思いをすることがある。
「お酒が飲みたくなるような演出」ということで、赤ちょうちんとお酒のカウンター、そして車内にも暖色系のLEDを取り付けることにしました。付属のコードが
ちょっと太すぎるので2本のうちの1本はエナメル線に変えます。
赤ちょうちん、車内、そしてお酒のカウンターへとコードを引きまわします。
完成した後にこういうことをやるのは結構大変です。とりあえず何とかなったんだけど、できるなら最初から仕組んでおけばよかったと思いました。
お酒のカウンターはこの時点で1cmかさ上げしています。
20 薄い紙を着色したあと型抜きして紅葉をつくります。
あとはベースボードに張り付けて秋を演出します。
12 地面部分は砂を含んだ下地塗料で仕上げてゆ
きます。
透けるほど薄い紙を用意して、Mr.カラーの緑、黄、オレンジ、赤などをたたくように塗って、わざとムラのある仕上げにします。乾いたら葉っぱの形に
ぬけるパンチを使って紅葉をつくります。
もうこれさえまいてしまえば季節は晩秋、赤ちょうちんに誘われて誰もがお酒を飲みたくなる季節・・・というわけです。
あとはフィギュアを配置し細かな修正をすれば作品は完成です。
<完成画像>
個展まであと2ヶ月というところで、ようやくずっと作り続けていた「静岡おでん」のジオラマが完成しました。
これをつくりはじめた頃はまだ少し寒いぐらいの時期だったけど、もう完全に季節外れになっちゃいましたね。
主人公はハセガワから発売されている1/24匠シリーズのレースクイーンです。
( ハセガワ フィギュアコレクション No.9 レースクイーン Amazonでは990円)
身長はこれで7cm弱といったところです。ポーズは若干変更し、メイクは市販の化粧品などを使って仕上げています。
背後にある移動販売車はアオシマから発売されている軽トラの移動販売シリーズの一つ「静岡おでん」です。
( AOSHIMA 移動販売No.3「静岡おでん」、Amazonでは¥2180 )
基本的にはキットそのままなのですが、やや作りづらいところがあったり、リアリティーに欠けるところがあって、あちこち修正を加えています。
手前の日本酒カウンターはジャンクパーツの箱から探してきた屋台を自分なりにアレンジしたものです。
設定としては、どこかの駅前の広場とか、道の駅などで「静岡おでん」と「静岡の銘酒」のキャンペーンにやってきたという感じです。
このジオラマの大きさは19cm×14cm×15cmの手のひらサイズです。
日本酒カウンターに掲げられた暖簾には、静岡にある27の酒蔵の代表銘柄のラベルが印刷されています。
静岡というと、近年は酒どころとしての評価は高い。それも静岡酵母によるところが大きいと言われ、過去には毎年開催されている全国新酒鑑評会の
金賞に、約半数の蔵が入賞したこともあるそうです。
画像の一升瓶は、3Dプリンターで出力されたキットをネット通販で見つけて購入したもの。(Emy 650円)
季節感が欲しいなと思って、紅葉した葉をあちこちに撒いてみた。
こういう演出って自分は大好きです。
暖色系のLEDを仕組んであるので、部屋を暗くして点灯するとこういう感じの写真を撮ることもできます。
手前のレースクイーンが人差し指を立てているのは、「No.1」じゃなくて、「おひとついかが?」ということ。
紅葉の舞う晩秋、少し北風が吹きこむような夕暮れ時、もしこういう赤ちょうちんを見つけたら、誘惑に負けてつい立ち寄ってしまうに違いない。
今回そういう妄想を形にしてみたわけです。
さて、賢明なかたならすでにお気づきかもしれませんが、「おでん」と「お酒」のほかに、ここにはもう一つ静岡の名産品が登場しています。
さてそれは何でしょう?
それはプラモそのもの。現在静岡県には10社のプラモメーカーがあって全国のプラモの出荷額の80%を占めているんだそうです。
ということで、ある意味この作品は静岡の名産品そのものというわけです。
2023.06
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 & Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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