eye4工房番外編
宿バス停
<リメイクが完了した miho のためにジオラマ用の背景をつくりました>
<製作のイメージ>
毎日毎日暑い日が続いている。
お仕事のない日は早朝にジョギングして、朝ごはん食べたら早くから開いているスーパーに行って買い物して、あとは一切外に出ないで創作活動をしています。
先日出来上がったオリジナル球体関節人形の miho もいろいろとお色直しをしながら、個展に持ってゆく準備を整えています。
基本的に自分の場合にはドールやフィギュアをつくって終わりでなく、あちこちに連れて行って撮影したり、思い描いたシーンをジオラマとして再現するための
登場人物になってもらったりしています。
だからドールやフィギュアを主人公とした写真やジオラマそのものが、ある意味、作品の完成形ということになります。
ということでこちらの miho にも相応しい背景をつくってあげようと思います。
といっても個展まであと3週間というなかで、現在制作中のものを含めて2っつ作るというのはかなり難しい。通常は一ヵ月に一作のペースなので、自分でも
けっこう無理してるなって思います。
絶対条件は「簡単でしかも効果的であること」です。
そんなときふと思いついたのが、JR御殿場線の「東山北駅」から「松田駅」まで歩いた時に通りかかった富士急バスの「宿」という印象的なバス停です。
このあたりに昔は小さな宿場でもあったのかな?
山北と小田原を結ぶこの道自体がかなりの古道のようで、沿道には点々とお地蔵様や道祖神を見ることができます。ただ風化がかなりすすんでいて、その多くはいったい
どのような所以でここに存在するのかは分かりません。
更に進むと酒匂川に出る。訪れた時は大雨のあとだったので、水は濁り、ものすごい勢いで下流に向かって流れていました。
もともとこのあたりは川の流れる勢いが強く、大雨のごとに濁流が平地を飲み込んでしまうようなところだったということです。江戸時代に富士山が噴火したときには、
その噴出物によって河床が浅くなって土手が決壊、大被害が出たこともあった。
1609年に小田原藩によって「文命堤」がつくられ、その被害は減ったというものの、現在までの間にたくさんの人がここで命を落としてきた。少なくとも治水が完了する
までは、人々には石仏や道祖神を置いて祈ることしかできなかったんだろうと思います。
先ほどの「宿」という地名も、雨が続いて旅人が足止めをくらったときの宿が、そこにあったということなんだろうな。
<背景の製作>
1 実際の風景からバス停本体の表示板をプリントア
ウトします。
2 板目紙や角材からフレームをつくって、バス停
本体を組み立てます。
印象的なものがあれば何でも写真に撮る。
先ほどのバス停も写真に撮って、グラフィックアプリ(GIMP)で加工してプリントアウト、それを板目紙に貼り付けます。
あとは100均で買ってきた角材でつなぎ合わせればそれらしきものが出来上がるここまで1日半。
3 100均に出かけて太めの角材とスチレンボードを購入、これを組み合わせて60cm×30cmのベースボードをつくります。
あとは手元に合った発泡スチロールで段差をつけます。
Aは道路、Bは歩道に仕上げる予定です。バス停の背後は最初の画像だと草地になっているけど、このCの部分には石仏や道祖神を置く予定です。
とてもコンパクトだけど、この地域の雰囲気は十分に出せると思います。
4 ベースボードとバス停本体に軸とパイプを仕組み、
取り外し可能とします。
5 材料のスチレンボードや板目紙の間にできた隙間に
モデリングペーストを埋めます。
収納や移動のため、バス停本体は取り外し可能とします。このとき軽量かつ安価に仕上げるには、100均で扱っている「竹の箸」と「木製ストロー」が丁度よいです。
竹箸を少し削ってやるとぴったりと木製ストローに収まる。まるでこのためにあるみたいです。
6 モデリングペーストに「浴びっこサンド」を混ぜてか
ら着色したものをアスファルト部分に塗ります。
7 更に色合いを濃くしたり薄くしたり、あるいは少量
の茶色を加えるなどして変化をつけます。
8 土の部分はモデリングペーストを茶色に着色して
「浴びっこサンド」混ぜて塗ります。
土の部分はモデリングペーストを茶色に着色して「浴びっこサンド」混ぜて塗るだけでなく、これが乾く前に更に「浴びっこサンド」をさらに振りかけ、ジオラマ用に売られている
小石なども置いてみます。
これだけでけっこうリアルな土になります。
画像の下半分はAのコンクリート部分ですが、こちらは艶消し剤を添加した塗料で塗った後、薄めたチャコールグレーをぽたりぽたりと落としてシミのような感じに仕上げました。
9 道祖神や水神をスタイロフォームからつくります。
( 土の部分には風化した道祖神と水神を置きたいと思います。
基本、石でできたものは発泡スチロールやスタイロフォームなどを使って表現します。ただ石らしく仕上げるにはちょっとした工夫が必要です。
まずは発泡スチロールやスタイロフォームなどを適当にカットし、荒めの金属やすりで磨きます。
このままだと荒すぎて使えないので、ティッシュペーパー(通常2枚重ねになっている)を1枚にはがし、これを発泡スチロールの塊の上にのせて上から水で溶いた
木工ボンドを塗り付けます。
これでぺったりとティッシュペーパーは張り付くので、この上から「浴びっこサンド」をパラパラとまきます。
乾いたらモデリングペーストを少量混ぜ込んだ水性アクリルで着色します。この時も更に「浴びっこサンド」をふりかけてやると、不思議なぐらい石にしか見えない
発泡スチロールが完成します。
あらためて組み立ててみました。
ピンクの矢印に示されたものは金属片を取り付けたステーです。自分のつくる球体関節人形は首の裏側にネオジムマグネットを取り付けてあるので、これだけでバス停横に
安定して立たせることができます。
あとは植物表現と簡単な汚し作業を加えたら完成という感じになりました。
10 細かな苔や草は鉄道模型でよく使われるパウダー
類を素材として表現します。
11 葉の細長い草はジオラマ素材の長さ5mmから1cm
のファイバーを混ぜたもので表現します。
12 100均で手に入る造花を最後に使います。但し
まずはつや消しの表面処理をします。
葉の細長い草はジオラマ素材の長さ5mmから1cmのファイバーを混ぜたもので表現するのですが、これはまず、KATOの草原のりを塗り、スタティックアプリケーターで静電気を
起こしながら振りかけます。
基本、細かな方から順に地面を埋めてゆく、最後は100均で売られている造花を使います。そのままではおもちゃ的な感じがしてしまうので、まずは台所洗剤の入った水に漬け込み、
乾燥させた後にMr.カラーで着色します。
そのままだと色が落ちることがあるので、艶消しのトップコートを最後に吹き付けます。
13 水神様や道祖神は汚しを加えます。
道路沿いでは煤煙の汚れがつきやすいので、艶消しのチャコールグレーを薄く溶いて、細い筆で何度も上から垂れた感じに塗るとそれっぽく仕上がる。
ライトグレーに少量のグリーンを混ぜたものをぼたっと落とすように塗ってゆくと、地衣類の感じになります。
更に最後は艶消しクリアーに少量のタンを混ぜて吹き付ければ、埃っぽい感じに仕上がります。
14 バス停には錆びた感じを表現します。
黒、茶、赤などのパステルをカッターで削り、薄め液を含ませた筆にとって塗り付ければ簡単に赤錆が表現できます。こちらもつや消しクリアーでトップコートすれば簡単には
色が落ちなくなる。
15 アイキャッチャーとして赤トンボをつくります。
ここまできたところでもう一工夫です。
真鍮線を束ねて芯をつくり足を6本引き出します。そしてこれをエポキシパテでくるんで形を整える。
着色して透明なプラ板で羽をつくれば赤とんぼの完成です。
<完成画像>
先日、miho という17年前につくった球体関節人形をリメイクがやっとで完了したのですが、これに合わせる背景をつくっていたので、あらためてセットで画像をお送りします。
宿バス停は実在する山北町のバス停で、この少し先にはたびたび氾濫を起こした酒匂川が流れています。
このあたりの道ばたには、ものすごくたくさんの道祖神や石仏、水神、その他もろものの神様の宿る石の遺物が並んでいて、その数に圧倒されます。
その多くは風化して何が書かれているのか分からなくなってしまっているけど、おそらくは治水がすすむまでは、人々は祈ることしかできなかったのだろうと思います。
少しおしゃれしてバスでお出かけする女の子、きっとどこかで待ち合わせをしてるんだろうな。
そんなイメージで夏の終わりの1シーンを再現してみました。
ポイントはやっぱりトンボですね。
これがあることでこのジオラマを見たとき笑顔になれる。
2023.09
camera: Panasonic DMC-LX7 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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