eye4工房番外編

「ルパン三世カリオストロの城

クラリスとカール





<宮崎アニメ初期の名作>

 「ルパン三世 カリオストロの城」この宮崎アニメ、初期の名作を何度見たかなあ?
 今回、たまたまジャンクパーツの箱に眠っていたフィギュアを発見して、このジオラマを製作してみました。













<フィギュアをの製作>

 ジャンクパーツの入った箱は実は「宝箱」、作品作りにつながる様々なものが眠っていたり、ここから突然アイディアが閃いたりする。
 新しくはじめるジオラマづくりは名作「ルパン三世 カリオストロの城」です。



 ジャンクパーツの箱から発見したのはクラリスとカールです。
 ルパン三世「カリオストロの城」に登場した自動車シリーズというものがあったけど、おそらくはそれに付属していたレジンキャストキットです。ジャンクパーツの箱の中から
取り出しました。キットとしての出来は良くないけれど、時間をかければちゃんとしたクラリスと愛犬カールになりそうな気がする。

   1 カールを製作します。まずはキットをチェックして、修正を加えます。
    

 このカールがいないとクラリスがクラリスだと分からなくなる可能性があるので手は抜けません。
 ところがこのキットの場合、見るからに頭が大きすぎて、しかも後ろ足が細く、お尻も小さい。そこでこれらを上の画像のように修正し、あとは首輪も追加です。


   2 塗装を施します。
   

 バランスの悪かったカールの方も、面長だった顔を削り、下半身にパテ盛りしたら良い感じになってきました。省略されていた首輪も追加しました。カールは「黒い犬」
なんだけど、本当に真っ黒にすると存在が強くなりすぎるので、ここは少し調子を落としてブラックグレーで着色します。
 こちらも劇中の雰囲気そのものに仕上がったと思います。

   3 クラリスをつくります。こちらもまずは全体をチェックして修正を加えます。
    

 クラリスですがワンピースにはフレアどころかしわ一つない。全体につるんとした感じなので、リューターで削りを入れました。
 面長な顔は、まずは顎を削りややふくらみを持たせるようにして修正します。また全体に薄っぺらな感じがしたので、後頭部を中心にエポキシパテを盛ります。


   4 塗装します。
   

  顔の方はまずはキャラクターフレッシュで塗った後、艶消しのクリアーを吹き付けて人間用のチークなどで少しずつ色をのせてゆく。これを何度か繰り返して思った色合いに
なったところで筆を入れて仕上げます。
 最初は上の瞼から、そしてこれを基準にして眉毛や唇を整えます。・・・あんまり似てないけど、まあ可愛くできたからOKにします。



 このあと時間をかけて手を加えたら、ちゃんとクラリスになってきた。
 がんばったら何とかなるもんだ。





<ジオラマとしてのプラン>

 

 あとはどういう背景で仕上がるのかという点ですが、ジャンクパーツボックスのなかに、こんなカリオストロの城の模型を見つけていたので、最初はこれを活用するつもりでした。
このお城を遠景として、湖の底から出現した古代ローマの街並みの一部を再現する。
 こちらは劇中に出てこない架空のシーンになります。



 もう一つのアイディアは単なる丘の上、ルパンを見送る最後のシーンを演出するつもり。こちらも名シーンだからつくってみたい。
 さてどちらにするか・・・。

 選択に迷って、しばらく作業が中断してしまいますが、結局は後者の「シンプルに丘の上」を選びました。
 さわやかな風景こそ、クラリスには似合っているように思ったからです。





<背景の製作>

5 楕円形にスチレンボードを切って、何枚か重ね、
 ジオラマの概形をつくります。
6 ここに細かな扇形に切った、スチレンペーパーを
 張り付けてゆきます。


7 できてしまった隙間をモデリングペーストで埋めて
 ゆきます。
8 この上にティッシュペーパーをのせて上から水で
 薄めた木工ボンドを塗ります。

 ジオラマベースをつくる方法はいろいろあるけど、自分の場合には軽量であって、それでいて簡単に壊れない形式を選びます。保管や移動を考えると、それが一番重要です。
従ってスチレンボードやスチレンペーパーを多用することになる。特にスチレンボードは100均でも扱っているので安価に仕上がります。
 最後にティッシュペーパーを貼るのですが、二枚重ねになっているティッシュペーパーは一枚にはがして使います。上から水で薄めた木工ボンドを染み込ませると適度に
しわが寄って起伏が目立たなくなり、水性塗料が
乗りやすくなります。



 クラリスとカールを載せてみました。
 ご覧のように丘のピークを中央でなく右側に寄せています。この方が奥行きのある構図になる。もし左右対称の真ん中に置いてしまったらつまらなくなる。シンプルなジオラマだけに
こういうところには配慮したいと考えています


   10 このドーム型の背景を着色します。
   

 スチレンボードとスチレンペーパーでつくった土台に、ティッシュペーパーを張り付けてつくったベースに色をつけています。
「どうせ草原にするなら色なんか塗らなくても」と思われるかもしれませんが、塗らないと仕上がりに多少の違いが出てきます。このあと張り付けるパウダー類は完全に下地を覆い
隠すことはできないので、重みを感じるような仕上がりにはなりません。
 あと水性アクリルは100均のものでも良いけれど、ここに少量の水とモデリングペーストを加えてやると、下地の強度が増し、つやも抑えられるのでおすすめです。




 シンプルであるがゆえに、丘の上の草の生え方には注意したい。
 稜線上は人や動物の行き来があったりするので草は短く、やや黄色みをおびている。(A)
 通常の領域は草丈10cmほどの牧草だとすれば、スケールを配慮したら長さ5mmほどになる。(B)
 裾野に向かって傾斜が急になると人が入り込むことは少なくなるので草丈は増す(C)
 なお今回はシンプルにまとめるつもりなので、花や石などは置かないようにします。置いたら多分主役がぼける。

 Aで使用するのはNOCH(KATO)から発売されている細かなファーイバー(左)、ここに鉄道模型で用いられるパウダー(中)を混ぜます。ファイバーだけだと密度が足りなくて、
どうしても下地が透けるので、自分は必ずパウダーを混ぜます。
 B、Cで使うのは汎用品の5mmから1.5cmの長めのファイバー(右)、単純になりがちなので2~3種類混ぜると良いです。ここにやはりパウダーを混ぜて使います。

11 プランに従い、スタティックアプリケーターを使って、
 草原を表現します。

 ベースにKATOの草原のりを塗った後、上記のファーバー&パウダーをスタティックアプリケーターを使って撒きます。あっという間にきれいな草原ができあがります。
 Cの周辺部にはKATOのジオラマ糊スプレーを吹き付けたあと、やや長めのファイバーを追加します。これを繰り返すともふもふ状態にすることもできます。
 ちなみにこのジオラマ糊スプレーは便利なのですが、周辺がべたべたになるので、必ずシートや新聞紙などを下に敷いて作業しましょう。またノズルが詰まりやすいので、
使用後は台所洗剤を少量含ませた水を何回かスプレーして中を洗浄しておく必要があります。




 カリオストロの城を丘の向こうに置いて撮影してみた。良さげな感じです。


   12 フィギュアの足裏はエポキシパテで高さ調整し、
     真鍮線を通して固定します。
   

 これにて製作は完了です。製作期間は正味3週間ぐらいかな。





<完成画像>



 クラリスとカールのフィギュアを使って、「ルパン三世 カリオストロの城」のジオラマをつくってみました。クラリスは大好きなキャラで、いずれ作品として扱ってみたい気が
していました。
 最初はカリオストロの城を背景にして、湖から出現した古代ローマの都市などをつくってみようと思ったのですが、自分の表現したいものとはちょっと違う感じがして予定変更、
このようなルパンを見送るエンディングのシーンでまとめました。

 作品はスチレンボードとスチレンペーパーでつくった土台に、ティッシュペーパーを張り付けてベースをつくり、その上にスタティックアプリケーターを使って草原表現をしています。



 遠景として使ったお城の模型は、実は市販品です。(おそらくはもう販売されていない)
「こういうものは一からつくれよ」という意見もあるかもしれませんが、イメージした空間を再現するのに、利用できるものは利用する。こういう使い方はありだと思います。

 フィギュア自体は、ルパン三世「カリオストロの城」に登場したプラモの自動車シリーズというものがあったけど、おそらくはそれに付属していたレジンキャストキットです。
ジャンクパーツの箱の中から取り出しました。
 身長はクラリスが8cmほど、カールは5cm、いずれも1/20スケールです。キットとしての出来は良くなかったので、2つとも時間をかけて修正しています。
 完璧な仕上がりではないけど、ちゃんとクラリスと愛犬カールには見えると思います。



 宮崎駿監督が映画の世界で最初に注目されたのは、おそらく「ルパン三世 カリオストロの城」だと思う。
 意外性のあるストーリーと素敵エンディング、そして登場人物のなかでも、やはりクラリスの健気で、見ているものに思わず「守ってあげたい」と思わせてしまうキャラクターが
良かった。



 でもインターポールがカリオストロ公国に大挙して踏み込んだ後、公国とクラリスはどうなってしまったのか?
 損害賠償その他で国の経済は破綻、貧乏のどん底で国民は飢えに苦しみ、あるいは騒乱が発生するかもしれない。映画を見た後しばらくして冷静になると、そのことがもの
すごく気になりました。

 これからこのカリオストロ公国は本当に大変な状況になるに違いないのだけど、ルパンとの別れや彼を追いかけてきた銭形警部とのやりとりのシーンがあまりに良すぎて、
それらがみんな吹っ飛んじゃう。そんなこと微塵も思わせない。
「いや、奴はとんでもなものを盗んゆきました・・・。それはあなたの心です。」
「はい。」
「ルパン三世 カリオストロの城」、見終わった後にみんなが幸せになれる、やっぱり歴史に残る素敵なエンディングです。



2023.10
camera: Panasonic DMC-LX7  /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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