eye4工房番外編
カゼノトオリミチ
<さりげない日常の風景>
Campus Friends Ⅱ というキットに入っていたスクーターとフィギュアで、晩秋の土手の風景をつくってみました。
こちらはNHK「みんなのうた」からイメージをいただきました。
<フィギュアの制作>
タミヤのCampus Frends Ⅱはとってもよくできたフィギュアで、またこれを主役にしてジオラマをつくります。今回利用するのはスクーターとそのオーナーの女の子です。
1 まずは台所洗剤を溶かした水に一晩漬けて乾かす。これは基本ですね。
2 最初はスクーターから制作にとりかかります。
スクーターは特に説明の必要もないほど、あっさりと仕上がると言いたいのですが、けっこうこれが難しい。パーツがともかく小さくて、下手にピンセットでつまもうとすると、
どこかに飛んでいってしまって行方不明になる。
トラブルがないようにまずはランナーの上で着色しつつ、少しずつ組み立ててゆきます。
塗り分けはしっかりマスキングして吹き付ける方が良いとは思うのですが、何分にも小さいのでマスキングがかなりの手間になりそう。そこで今回はすべて手塗にします。
がしかし、プラの色が濃いターコイズブルーなので、白い塗料が乗りにくい。下地が透けなくなるまでに4回塗りなおした。ここはプラの素材色を白にしてほしかったところです。
車体がある程度仕上がったらデカールを張り付け、しっかりとクリアーを吹き付けてデカールを保護します。このデカールも細かくて正確な位置に置くのが難しいです。
完成までに1日30分から1時間の作業で5日ぐらいかかった感じです。
うまくゆかなかったところは多々あり。このプラモを完璧に仕上げられるのは、そうとう熟練した人でないと無理じゃないかな。
3 フィギュアの製作は、まずは真鍮線の取り付けから
さてスクーターのオーナーの女の子ですが、ポーズをいじることなく完成させるつもりです。
ただパッケージ通りではつまらないので、着ているものの色や模様ぐらいは変えようと思ってます。
製作の途中、 「NHKみんなのうた」で以前聞いたことのある「カゼノトオリミチ」という曲のことをふと思い出した。 (堀下さおり 作詞・作曲)
放送されたアニメーションがとっても素敵で、とっても疲れてはいるんだけど、気分を変えて前に進もうという感じの曲がぴったりで、とっても印象的な作品に仕上がっていました。
できればあのアニメのようなイメージで完成させたい。
4 女の子の方はヘアーと服装を少し変えて完成させます
主人公の制作に入ります。手を加えるところは1点のみ。ヘアーについては風になびく感じを出したかったので、エポキシパテで成形します。ある程度固まったところで、
デザインナイフを入れて髪の流れを表現し、形を整えます。
形が整ったところで、例によって顔の方から仕上げます。
まずはキャラクターフレッシュで塗ったあと、艶消しのクリアーを吹き付けて人間用のチークなどで少しずつ色をのせてゆく。これを何度か繰り返して思った色合いに
なったところで筆を入れて仕上げます。
最初は上の瞼から、そしてこれを基準にして眉毛や唇を整えます。
服装に関してはオリジナルの爽やかな配色で仕上げます。白、チャコールグレー、ブラックを基本にして、赤い線や手持ちのデカールで変化をつけてみました。
デカールを使う場合には紫外線をカットするMr.カラーGX113つや消しクリアー、塗膜に強いGX114つや消しスーパースムースクリアーでコーティング処理をしておくのが
良いと思います。
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5 ヘルメットも適当なデカールを使って、それらしく
仕上げます。 |
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6 犬はジャンクパーツの箱から拾い上げた。出来が
良くないので手を加えます。 |
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ジャンクパーツの箱から見つけた犬は多分1/32スケールの成犬ですが、あんまり可愛くないので、ネット上の画像を参考にしながらから豆柴に仕上げようと思います。
鼻を短く削って小さくし、とがった耳も丸める、あとは全体にエポキシパテを盛ってまるまるした感じに仕上げます。白、タン、そして少量の茶色で変化をつけてそれらしく塗る。
目は小さく丸く描く。
日頃よくお散歩をしているときに、次の作品のイメージや、行き詰まった制作の問題解決のアイディアが思い浮かんだりすることがあります。実際、お散歩というのは想像力を高める
のに効果があるそうで、先日、NHKの「チコちゃんに叱られる」を見ていたら、その理由を説明していました。
机の上で物事を考えると、どうしても知識記憶が優先されて新しい発想が生まれてこない。そこでたとえばお散歩のようなリラックスした状況になると、アイディアの断片のようなものが
あるとき急に結びついて、新たな創造につながるんだそうです。
ここから先は背景づくりをすすめて、そこにちょっとした演出を加えます。
言うのは簡単なんだけど、ここは「全体像を思い浮かべながら」作業をするところなので、作品作りの核心です。
1週間ほどイメージを膨らませ、一人と一匹はとある土手の上で絡んでいるというシーンを再現することにしました。身長7cmほどのフィギュアとスクーター、そして犬を配置するだけなら
15cm四方もあれば十分ですが、その場所が土手であることを立体的に表現するには一回り大きい方が良いでしょう。
<背景の制作>
再現するシーンがイメージできたところで製作開始です。ベースサイズは25cm×20cmに決定、これは土手とその下の河原がちょうど再現できるサイズです。
7 基本100均で買ってきた角材やスチレンボードでベースをつくってゆきます。
フレームは100均で売っている角材を互い違いになるように組み合わせて接着します。経験上、これが最も安価なフレームづくりです。
同じく100均で購入したスチレンボードで立体構造をつくります。石膏や粘土などでつくる方法もあるけど、これが最も毛器量に仕上がって、しかも安価です。
スチレンボードやスチレンペーパーは単独だと弱いですが、こういった面で組み合わせてやると構造的な強度が出てくる。できてしまった隙間や段差などはモデリング
ペーストで埋めてやると、1kgぐらいのものでも上に乗せることができます。
軽いということはとても大きなメリットで、保管や移動のための労力は格段に低くなります。
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8 フィギュアを置いて、バランスの調整を行います。
黒い部分は厚みを増したところです。 |
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9 ジェッソで下地を整え、粘土で起伏をつくってゆき
ます。 |
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出来上がったところにフィギュアを配置したら、予定より土手上が狭い感じがしたので、スチレンボード2枚(暑さ1cm)を張り付けて幅を広げました。
ジェッソを塗ったのは粘土単独だとスチレンボードになじまないからです。
この作品はシーンとしてはとても単純で、土手にスクーターでやってきたら子犬がいたというもの。
凝ったジオラマもつくるけど、こういう日常的で「なるほど、こういう場面もあるね」みたいなものも結構好きです。ただその分「自然さ」みたいなものは失われてはいけない。
10 土の部分をつくりあげます。
舗装した道というのもありだけど、今回は雨上がりで水たまりの残る土の道の方が味わいがあると思いました。
まずは100均で買ってきた茶色のアクリル絵の具を全体にざっと塗って下地をつくります。
そのあとでモデリングペーストをアクリル絵の具で茶色に着色したものを用意して、筆で塗ることができる程度に水で薄めた下地塗料をつくります。これを土の部分に塗った後、
塗料が乾く前に小動物用の「浴びっこサンド」を撒きます。
下地塗料は少しずつ明るい色に変化させ、また固着させる「浴びっこサンド」にも鉄道模型用のバラストなどを少しづつ加えて、粒子の大きさに変化をつけます。
11 水たまりをつくります。
雨上がりを再現するために水たまりをつくります。
KATOから発売されている「さざ波」という商品があるのでこれを使います。さざ波は水溶性なので、水を加えることができます。まずはぽたぽた状態の溶液をつくり、少し
大きめの範囲に塗ってゆきます。土の色が少し濃くなって「水が浸み込んで湿っている地面」を再現することができます。
乾燥を待って、このあと再び「さざ波」を塗って水たまりを表現します。このとき加える水は少なくて良い。
12 草の表現をします。
画像左でAは土手の上で、人などの往来があるので草はまばらで短い。Bは土手側面、草は全面的に生えているけれど、定期的に草刈りがされているはずなので、草丈は短め。
Cは河原、こちらは草刈りは行われていないので、やや荒れている感じにする。
例によってスタティックアプリケーターを使って草原を再現します。今回は「秋の色」を再現しようと考えているので、基本的に黄緑から黄色のパウダー類を使います。メインは
カーキ色のターフ(A)、ここに20%程度の緑のターフ(B)と10%程度の緑のジオラマパウダー(C)を混ぜたものをベースパウダーとします。
この調合は実際に撒いてみてテストすると良いでしょう。もちろんテストなので糊はつけません。
草丈の変化や荒さはファイバー類で調整します。用意したのは2mm、5mm、10mmのファイバーです。(D、E、F)
土手上の草はベースパウダーに2mmのファイバーを10%程度混ぜたもので表現します。「くさはら糊」に少量の水を混ぜたものを必要箇所に塗って、スタティックアプリケーター
でふりかける。側面は5mmのファイバーを20%混ぜたものを使い、河原は5mm及び10mmのファイバーを15%ずつ混ぜたものを使って草原を再現します。
難しそうに見えるけど何度かやればすぐにコツは掴めると思います。
「浴びっこサンド」と「スタティックアプリケーター」の2つで自分のジオラマづくりは変わりました。
13 土手を挟んで人の住む側には、蓋つきの排水溝を
つくります。
奇麗に草原は仕上がりましたが単調すぎて物足りません。
そこでさらに少しばかり変化をつけます。特にこのままではどちらに川があるのか、どちらに人が住むのかさえも分かりません。人の住む側にはコンクリートの蓋つきの排水溝を
再現してみました。そして単調だった側面と下面にはKATOから発売されている低い丈の草や、ちょっと長めのファイバーを足して変化をつけました。
14 手芸用のドライフラワーを適当に切って、丈の長い
草をつくります。
川のある側には背の高い草を追加します。材料となるのは手芸用のドライフラワーです。これをまずは水で薄めたマッドジェルメディウムつけて乾かす。天然素材のものはすぐに
ボロボロになってしまうので、メディウムでコーティングするわけです。
乾いたら適当にむしって3から5cm程度の長さに整えます。
これを1本1本接着してゆく、面倒でもこればっかりは仕方ない。このとき草を指の腹で軽くしごいて湾曲させ、さらに少し傾けて接着させると風に吹かれているような感じが表現できます。
あと川原は大雨が降ると水量が増し、上流から石ころが運ばれてきます。だから鉄道模型用の大きさ2~3mmぐらいのバラストをところどころに接着する。こうすると良く見る
川原の風景に近くなります。(本当はもっと複雑だけど)
こういう表現というのは、普段からいろんなものを見ていると自然に思いつくものです。あと足りない部分があれば想像力で補う。
ということでまた少しリアルな空間になってきました。
生えた草が枯れかけている・・・晩秋
長い丈の草が傾いている・・・風が吹いている
土手上の道には水たまりが残る・・・雨上がり
子犬がいる・・・日中
舗装されていない・・・車が通るのはまれ
シンプルで要素は少ないけど、そのなかで季節や時間帯その他のシチュエーションを再現するのが、こういうジオラマをつくるうえでのポイントだと思う。単なる土手なんだけど
いろいろ考える。
15 水彩画セットを用意します。
あとはどうしてスクーターのオーナーである彼女がここにやってきたのか、こういう人のいない田舎っぽい状況だから、それを説明する必要がある。
つくったのはスケッチブックと水彩画セット、そして水筒です。スケッチブックは実物を縮小してプリントアウトしたもの。やっぱり知名度の高いのは Maruman、この表紙を見れば
スケッチブックだと気付いてくれるに違いないと思った。
水彩画セットと水筒はプラ材から切り出しました。
さてあとは主役たちの配置を考えて、この小物をレイアウトすれば完成です。
<完成画像>
タミヤのCampus Frends Ⅱはとってもよくできたフィギュアで、またこれを主役にしてジオラマをつくりました。
今回利用したのはスクーターとそのオーナーの女の子です。
スケールは1/24です。女の子の身長は6.8cm、スクーターは7.1cmという大きさで、自分としては細部まで作り込むには限界サイズです。組み立てるのは簡単と
言いたいのですが、スクーター自体がものすごく細かくできているので、組み上げるだけでも大変でした。
晩秋、雨上がりのある日。
ふとやってきた土手、そろそろ帰ろうと思って片付けを始めたら、小犬がやってきた。
「君は何をしにやってきたの?」
そう言いたげにじっとこちらを見ている。
ジオラマサイズは25cm×20cm、高さ13cm。
100均で購入したスチレンボードで立体構造をつくっています。地面は基本、茶色のアクリル絵の具で着色したモデリングペーストを下地塗料として、これに小動物用の
「浴びっこサンド」を加えて質感を出しています。
彼女がここにやってきたのは、ちょっとした気分転換に絵を描こうと思ったから。
2,3枚描いたら少し気分も晴れた。
そして次の瞬間、小犬が駆け寄ってきた。
草は例によってスタティックアプリケーターを使って表現しています。道や土手の側面、河原では植生も違うので、場所によってファイバーの種類を変え、最後に手芸用の
ドライフラワーを追加して変化を出しています。
どうしてスクーターのオーナーである彼女がここにやってきたのか、それをさりげなく説明するためにスケッチブックなどを置いてみました。スケッチブックは実物を縮小して
プリントアウトしたもの。
主人公の女の子は完成度が高いので基本的にはポーズをいじることなく完成させています。ただ風が吹いているというシチュエーションなのでエポキシパテで髪は成型し
直しています。
こちらはジャンクパーツの箱から見つけた犬です。こっちは1/32ぐらいのやや痩せた成犬だったので、全体にエポキシパテを盛ってまるまるした感じに仕上げています。
どうってことのないありふれた空間だからこそディテールにこだわりたい。
枯れかけた草、長い丈の草が傾いている、道上に残る水たまり、子犬、そしてスケッチブック、それが季節や時間帯その他のシチュエーションを表現する。
このジオラマのイメージは「NHKみんなのうた」で聞いたことのある「カゼノトオリミチ」からいただきました。(堀下さおり 作詞・作曲) いろいろあったけど前向きに進みたいという
歌詞と、清々しい感じのアニメーションがとっても良かった。
戦車の登場するジオラマをつくったこともあるけど、今は「情景」という言葉に相応しい、少し心に浸み込むようなものがつくりたいです。
2023.12
camera: panasonic DMC-LX7 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage
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