eye4工房番外編

第2水源地



<ティラノサウルス>

 「ルパン三世 カリオストロの城」のジオラマに完成の目途がついたので、次のテーマに取り組むことにしました。
 「こんなものつくりたいな。」というアイディアはいくつかあるので、そのなかから今作れるものを選びます。
















<ティラノサウルスのリメイク>



 今回始めるのは恐竜関連です。けっこう良さそうな恐竜のフィギュアが出回っていて、全長30cm、全高17cmのこのティラノサウルスがAmazonで1600円。
 メジャーで正確に測ったら体長38cmでした。ティラノサウルスの成体は体調13mと言われているので、これは1/35に相当します。自分はこれを1/24人のフィギュアと
組み合わせようと思っているので、サイズ的にはちょっと足りません。
 実は同じ時代を生きた同じティラノサウルス科の恐竜に、ティラノサウルスとよく似たアルバートサウルス(6600年前から7000万年前)がいて、こちらは体長8mから10m
と言われている。模型の38cmの体長を1/24スケールで換算すると8m10cmで、データ的にはぴったりです。そこでこちらを名のろうかとちょっと思いましたが、アルバート
サウルスを知らない人は多いはずなので、当面はティラノサウルスの幼体ということで話はすすめたいと思います。



 迫力十分で一般的な恐竜コレクションとしては問題ない。でもリアルなジオラマとして使用するなら手を加えた方が良いと思った。
 分割して金型をつくった形跡が残っていてバリも残っている。しわの寄り方も不自然です。艶消し塗装はしてあるのだけど、なぜか後塗りの黒い塗料はつやがありすぎです。
そして何より目がしょぼい。あと迫力出したかったのは分かるけど、やっぱり歯はオレンジでなくアイボリーの方が間違いなく良い。

1 モールドの荒れをエポキシパテの盛りやリューター
 の磨きで修正し、再塗装します。

 バリはリューターで取り除き、しわの不自然なところ、金型のつなぎ目などはエポキシパテで修正します。(画像左)
 修正が終わった後、Mr.カラーのRLM82が近似色だったので、手を加えたところに吹き付けます。まあなんとか自然なつながりになった。(画像中) 但しこのままだと少し単調な
感じがするので、RLM82に少しつや消しブラックを混ぜたものを斜め下方から吹き付け、しわの存在感を強調します。
 RLM66ブラックグレーで模様を描き込みます。(画像右) 

 さてここで質感を整えたいし塗装に深みを持たせたい、そこで2種類の変化を加えます。
 半つや消しのクリアーに少量のブラックを混ぜた塗料をつくり、これを上方から吹き付けてゆく。これで重厚感が増し、更には爬虫類独特の鈍い艶感を出します。(A)
 Mr.カラーブラウンFS30219を薄めて下方からまばらに吹き付ける。(B)



 色味の奥深さ出そうと思ったら、補色系の塗装を行うと良いです(緑の場合には赤)
 ちなみに自分が良く使う仕上げ塗装としてはもう一つあって、つや消しトップコート+ホワイト系塗料、こちらはぱさっとした乾燥した感じや風化した感じが出る。(C)
この3つが仕上げ塗装の基本で、あとは適当にほかの効果と組み合わせてゆく感じです。

 重厚感と奥深さの感じられる仕上げになったかな? 画像にしちゃうと微妙な変化が伝わらないのだけど、結構よい感じです。


2 UVレジンを使って眼を作り直し、歯の色もアイボリー
 に変更します。

 顔周辺の最初の状況が左画像です、ともかく何より目がしょぼい。あと迫力出したかったのは分かるけど、やっぱり歯はオレンジでなくアイボリーの方がやっぱり
本物っぽい。
 まずは目に手を加えます。リューターでボール状に目をえぐり、そこに黄色の塗料を流し、さらに中心部にオレンジ色を少量加えます。乾いたところで黒く塗った
直径1mmほどの小球を固定します。(画像中)
 あとはつまようじでUVレジンを塗ってLEDで紫外線を照射します。
 歯はアイボリーに塗りかえ、口まわりをブラックグレーで強調した。そして全体に先ほどの半つや消しクリアー+ブラック、及びブラウンで全体のつやと色合いを
整えれば出来上がりです。(画像右)




 こっちは送られてきたばかりの状態。



 こっちは修正後。
 時間をかけただけの効果はあったと思う。多分この仕上げをメーカーに望んだら1600円ではとても買えないと思います。




<ベースボードをつくる>



 とりあえずどういうシーンにするかは、ある程度考えているので、試しに箱絵を切り抜いたものをティラノサウルスの前に立たせてみました。
 おそらくはこの時間というのがジオラマづくりでは最も大切な時間帯で、あらゆる可能性を探りながら配置や演出を考えてゆきます。納得がゆかなければ1週間ぐらい
考えるけど、それ以上は無駄な時間になってしまうので一旦はやめる。そしてあるとき、たとえばお散歩の途中で閃いたりする。そんなもんです。


   3 全体の配置を検討します。
   

 ジオラマサイズは24cm×30cmに決定です。早速、100均で買った角材とスチレンボードを組み合わせてベースづくりを始めます。
 歩いて1分のところに100均があるってとっても幸せなことです。ジオラマとか模型作りというのは、最終的にけっこう雑多な素材を必要とする。だから自分にとって100均
というのは立派なストックハウスを持っているようなものです。

4  角材とスチレンボードを組み合わせて、ベース
 ボードをつくります。
5 木紛粘土という、地面に近い感じの粘土があった
 ので、初めて使ってみることにしました。

 ティラノサウルス自体は型に樹脂を流し込んでつくられたもので、けっこうな重さがある。(300g以上) そこで更に2cmの厚さのスチレンボードを重ねて強度を増しました。
(画像中の黒い部分)
 たまたま「木粉粘土」なるものを100均で見つけたので使ってみることにしました。色合いが土に近いので都合が良い。
 ただ粘着性は少ないのでスチレンボードに木工ボンドを塗ってから、薄く延ばしてゆく。あとは乾燥する前にフィギュアをのっけて足跡をつけ、ところどころに小石を置いて
ゆきます。



 乾燥がすすんで次の段階に進もうかと思ったら、粘土が収縮して反りが出た。この粘土の収縮率はかなり高い、ここは接着剤を更に強力なものに変えて次の段階に進みます。

6 更に細かな砂や小石を追加して塗装します。今回
 は湿った地面を表現します。

 地面をリアルな感じで仕上げるために「浴びっこサンド」と「サンゴ砂」を用意しました。浴びっこサンドをベースにして10%程度サンゴ砂を混ぜ込んだブレンド砂を用意します。
 ここから先はリアルな地面づくりをします。
1 モデリングペーストに浴びっこサンドを30%程度混ぜ茶系のアクリル絵の具で着色する。そしてここに水を加えて筆で塗れる程度に薄めて下地と塗料をつくります。
2 この下地塗料をベースボードに塗った後、これが乾く前にブレンド砂を上からまく。
3 乾燥したところで、もう一度上から下地塗料を塗って小石類を固定します。

 ここで選択肢としては大きく2つが考えられます。一つは荒れて乾燥した岩場の風景、もう一つは湿潤な植物の繁茂する風景です。
 自分は後者をイメージしていたので、
4 KATOの「さざ波」を水で少し薄めたものを全体に染み込ませるような感じで塗ってみました。ご覧のようにこれだけで、しっとりした地面に変化します。

7 ジオラマパウダーやファイバーを追加して、朽ちた
 植物や苔の表現を追加します。

 TAMIYAのテクスチャーペイントの「草カーキ」に「さざ波」を粘着剤として少々加えたものをまずはベースに塗ります。このあとこれが乾く前に短いファイバーやターフを
4種類ぐらい混ぜて撒く。(画像左) 結果はこんな感じで、あまりこの草の破片がベースボードに馴染んでいない。
 でもこれはある程度予想の範囲内です。緑と土の赤みは補色の関係にあるので、彩度の高い方が浮いてしまう。
 そこで再びベース塗料として用いたアクリル絵の具+モデリングペースト+浴びっこサンドの組み合わせを、水で薄めて上から何度か塗ってみます。(画像右)
 こういうとき草の緑の彩度を徐々に落としてゆけば、だいたい問題は解決します。


   8 水たまりや水を含んだ泥を表現します。
   

 続いて地面を更に湿った感じにもってゆきます。さざ波に少量の黒を混ぜて水で薄めたものを何度となくくぼんでいるところに塗ってみました。
 これで見た目の湿り気が増して、地面がぬかるんだ感じになります。少しずつの塗り重ねは面倒かもしれないけど、失敗のない方法です。







<植物の表現>
 次に植物の表現を行います。
 恐竜のいた中生代には、きれいな花の咲く被子植物はほとんど存在せず、ジオラマで再現しようとしている湿地帯は、シダ植物や裸子植物が生い茂っている景色だった
と思われます。



 早速100均に出向いて手ごろな植物を探します。
 恐竜の時代は湿潤で平均気温が40℃に及んだとも言われ、恐竜だけでなく植物も大型化していた。だから100均に普通に売っている1/1スケールの観葉植物をそのまま使っても、
サイズ的なものに問題はない。むしろ雰囲気が合うかどうかが問題です。
 ただそのままだと、いかにもソフビ的でリアリティーに欠けるものになってしまうので、ここはきっちりと下処理をします。

9 100均で買ってきた植物に下処理を行って、ジオラマ
 で使えるような状況にします。

 まずは台所洗剤に漬け込んで表面を洗い、乾かした後に高耐久ラッカースプレーのつや消しクリアを吹き付ける。これは後で塗る塗料の剥がれを少しでも防止するためです。
そのあとはグリーンから茶系の塗料で吹き付け塗装を行い、最後に湿った地面に生える植物に相応しいようにつやの調整を行います。今回はUVカットのつや消しスーパー
クリアーに少量のクリアを加えて半つや消しに仕上げました。(画像左)

 その他のポイントとしては、
 植物は葉緑体の分布が表と裏で違うので、裏面(A)には少量のホワイトを加え、表面(B)は濃いめに仕上げる。(画像中)
 放射状のものは、葉の扇端をイエローを加えた塗料でやや明るく仕上げ(C)、土に近い根元の部分は茶系の塗料を加える(D)。(画像右)

10 ヒートガンを軽く当てて、植物のよじれを直し、形状
 を整えます。

 さてここからはベースに植えてゆくのだけど、やり直しは簡単ではないので様子を見ながら少しずつ仕上げてゆきます。



 まずはじっくりと構想を練ります。基本ここはイメージなしで適当にやってゆくと必ず失敗する。事前に十分にイメージを膨らませ、できるならスケッチなどしておくと良いと
思います。

11 大きな植物はつまようじなどを使って固定してゆ
 きます。

 まずは中心となる植物群を2つほど配置ししました。
 画像左にあるように、大ぶりなシダ植物の根元はこんな感じで、あまりお見せしたくない状態です。ここはうまく目立たぬように隠したい。そこで土の色に着色したモデリング
ペーストに「浴びっこサンド」を混ぜて根元に塗る。そして鉄道模型用のパウダーや短いファイバーなどを3種類ほど混ぜたものを乾く前にパラパラと撒いて筆で押し付けます。
(画像右)

 このあと順に小さな植物等を配置してゆくのですが、いくつかポイントがあります。



 更に背の低い草で根元を隠します。中心となる大きな植物の根元は隠す」
 また背の低い植物の配置も3つを一組にして、黄色い三角形で示したように「不等辺の三角形を意識する」というのも大切です。
 ここは生け花の世界にも通じるようなところがあるかもしれません。



 「規則正しく等間隔に並んでいる」というのは何が何でも避けたいところ。
 遡って最初に植えた2つの植物群も三角形を意識している。(画像左)
 奥の青い三角形で示した植物群は背景として植えたもの。そして「少し重なるようにして」中心となる赤い三角形で示した植物群を植えました。
「真ん中に中心となる植物をどんと置く」「左右対称」なんてことはしちゃダメです。



 前景は青い三角形で示した背の低い草と倒れかかった植物で表現します。
 背景、中景、前景が重なり合うことで奥行きが出てくる。
 倒れ掛かった植物を追加したことで、恐竜に動きのようなものが感じられるようになりました。
 とりあえず良い感じかな。


   12 案内プレートを追加します。
   

 そして手前の黒いスペースにこちらを追加です。
 1/24スケールでつくったティラノサウルスの解説プレートです。そうこのジオラマは約7000万年前の地球をリアルに再現するのが目的じゃなくて、博物館の展示コーナーの
1つを表現するものです。



 ティラノサウルスを固定したところです。細部を詰めなければいけないところはあるけど「気温40℃に及んだという湿潤な時代」の雰囲気は出たのではないかと思います。





<フィギュアをつくる>
 ところで主役はティラノサウルスというわけではなく、最初にご紹介したタミヤの「キャンパスフレンズⅡ」です。
 いよいよフィギュアを添えれば作品完成というところまでやってきました。

13 基本的にはキットをストレートに組みます、唯一
 変更するのは指先だけです。

 キットは特に問題もないので基本ストレートに組む。でもスカート部分には隙間が出てしまうので、ここだけは瞬間接着パテを使って修正します。こういう部分では最も使い
やすい修正剤です。(画像左)
 唯一手を加えたのが指先です。スマホを左手に構えて撮影しようとしているポーズなのですが、恐竜の前での記念撮影というシチュエーションで、状況からするとスマホを
横持ちから縦持ちに変えて、なおかつ角度を少しだけ上向きに修正する必要がある。(画像右)
 デザインナイフで削りを入れて指先で太さ0.5mmの指の角度を変える・・・、指がつりそうになりました。

14 人間用の化粧品をメイク材料として使い、肌の表現
 を行います。

 メイクは例によって人間用の化粧品を使います。
A まずはMr.カラーのNo.111キャラクターフレッシュで塗装してから、Mr.カラーGX113つや消しスーパークリアーを吹き付け下地を整えます。
B 着色には人間用のチークやシャドウを使います。太さの違う綿棒を3種類用意して少しずつ作業をすすめます。一度ではあまり色が乗らないので、GX113の吹き付けと
 綿棒による色乗せを交互に行って整えてゆきます。(画像左)
C このままだと塗装がぼやっとしている感じなので、上瞼を基準として虹彩や眉毛、唇などをMr.カラーで描いてゆく。イメージとしてはメイクに「芯」を入れてゆく感じです。
 (画像中)
D そして最後にGX114つや消しスーパースムースクリアーを吹き付けて仕上げます。(画像右)
 フィギュアの塗装については見栄えや存在感のあるものが好まれるので、陰影やコントラストを強調する塗装がよく紹介されていますが、自分としてはこういうニュートラル
な表現も良いと思う。何より背景に馴染んで自然です。

15 バッグなどの小物類を追加し、更に衣服にアク
 セントをつけます。
 

 さて、いつもだと引き続いて衣服にもGX114をベースにした吹き付け塗装をして終わりなのですが、このままだと少しだけ物足りない感じがした。
 まずはバッグ2つを追加です。またスマホはキットにも入っていたのですが、厚さが1mm(スケールサイズ2.4cm)もあるので0.5mmのプラ板から作り直しました。ここが
ジオラマのポイントとなるところなので厳密に厚さを合わせます。(画像左)
 もっとカジュアルな方向に振ろうと思って、ジーンズには適当なデカールを探してみて貼り付けました。(画像右)

 仕上げのトップコートはバッグ、スマホ、ハイヒールはクリアーで、スカートとパンツはGX114+30フラットベース、トップスはニットなのでGX114+188あらめ・ラフで変化を
つけて仕上げました。



 このフィギュア身長7cmほどですが、表情があってとても良い。1週間ほどで性格良さそうなお姉さん二人に仕上がりました。





<完成画像>






 中生代末期の地表を再現した、とある恐竜博物館の展示室を再現してみました。
 スケールは1/24、但しティラノサウルスの方は成体としてはやや小さめ。ジオラマサイズは24cm×30cm×23cmです。



 ティラノサウルスはAmazonで1500円ぐらいで売られていたもの。これをベースにしてモールドを部分的に削り直し、ペイントし直したもの。アイはUVレジンで作り直しています。



 その前で記念撮影するのはタミヤのキャンパスフレンズⅡというキットに含まれる二人分のキットです。スマホを握る手以外はポーズをいじることなくそのまま作りあげています。
肌の部分の塗装は例によって人間用の化粧品を多用しています。







 最も時間がかかっているのは地面部分の製作です。
 約6500から7000万年前の高温多湿な気候下、巨大化したシダ植物が繁茂する湿原を再現してみました。植物の主な素材は100均で入手したもの。湿った地面はモデリングペースト、
アクリル絵の具、浴びっこサンド、ジオラマ用のパウダー、さざ波などで作りあげています。






 「こういうシーンて絶対にあるよね。」 そう言い切れる情景作品になったと思います。



2024.03
camera: Panasonic DMC-LX7 /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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