leahのリメイク



<17年前の球体関節人形をリメイクした>

 さて一通りのリメイクが完了したとお伝えしたオリジナル球体関節人形 leah ですが、シンプルなワンピースを着せて撮影テストをしてきました。
 人間というのは、ただ見ただけでは主観が入りやすくて欠点を見落とすことがある。ここは最終確認ということで平塚の花菜ガーデン(県営のフラワーパーク)に行ってきました。



 着せたのはミニ丈のパーカーワンピースで本来はSD用につくられたものです。
 2月のフラワーパークは咲いている花も少なく入場者も少ない。でもその分、気兼ねなくドール撮影ができます。屋外での撮影というと、レジンキャストされたドールでは紫外線による
黄変や素材の劣化が気になるところですが、自分のつくる粘土製のドールはこの20年間で黄変や劣化は見られていません。



 いちばん気にすべきチェックポイントはドールアイへの光の入り具合です。
 多くの部屋は室内灯が一つあるだけで、そちらに向けてドールを鑑賞することが多いから問題はない。ところが外に出てみて花を背景にして撮影したら、何かドールアイに
光が入らないで、暗くアイが沈んでしまったなんてことはよくある。たとえストロボを使っても、うまくゆくことばかりではないです。
 小屋の中で撮影してます。外光が差し込んでアイがキャッチライトしている。
 自分が思うにキャッチライトすると表情まで輝く。キャッチライトしないアイはそのレンズ形状に問題がある場合がある。円錐型に近いものはダメです。



 暖かい日差しの下での撮影は楽しい。
 やはり自分はこういうナチュラルな仕上げ、ニュートラルな表情を持つドールが好きです。



 今回の撮影テストの結果は◎です。
 自信をもって個展で展示させていただきました。



<17年前の画像>
 まずはリメイクの解説にをする前に17年前に制作した頃の画像です。自分としては5体目の球体関節人形です。

 

 DD(ドルフィードリーム)のL胸のボディラインを参考にして、 470gという超軽量に仕上げたものです。意欲的な作品だったのですが、いささか仕上げが荒い。
 上の画像は撮影後の修正や合成で欠点を補っています。



 あらためて撮影してみたら、今となっては恥ずかしいぐらい下手です。
 まずは貼り付けていたドールヘアーを剥がして、お掃除します。DDを参考にして独自のラインでボディをまとめようとしのだけど、何かバランスが悪い。



<ボディの修正>
 これまでも何回かリメイクの記事は書いているので、事細かな解説はそちらに譲るとして、今回はそのポイントだけをレポートしたいと思います。
 まずはばらばらにしないで、このままの状態で関節部分のバランスをとる修正をしようと思います。  もうかれこれ2年ほど新作の球体関節人形をつくっていない。というのも古いお人形を出来が良くないまま放置しておくのが可愛そうだからです。  新作をつくるよりも、もしかしたら手間がかかるかもしれないけれど、必ず可愛いお人形にします。  リメイクするってことは、お人形を成長させることだと考えています。



1 関節部分を修正
 具体的には、
A 股関節の幅が狭すぎて、腰から腿にかけてのラインがつながっていない。
B 向かって右側の肩関節の可動域が足りなくて、腕が真っすぐ下におろせない。
 などの点を修正します。



2 ボディラインの修正
A 左右の肩の位置が違っている。どちらかというと向かって右側の方が内側に入りすぎているような感じです。左右で違いを感じたら、より正常だと思われる方に
近づけます。この場合には、右側の肩関節を外側に2mmほど移動させることにします。
B 腰のパーツから太もものパーツにかけてのつながりが良くない。とりあえずまずは腰骨の上の部分を少し削って様子を見ることにします。
C 左膝関節のつながりが良くないので、削って修正します。
D 胸部パーツの胸下部分を厚くする。
E 腹部パーツの下部を薄くする。



3 スムースなつながりを意識して修正
 自分自身が考案したフィールドライン理論に基づいて、各パーツがスムースにつながることを意識しながらボディラインを整えてゆきます
A ヘッドの分割部分をスムースなラインでつなげる。
B 首がやや右側に傾いていることを修正。
C 分割してつくった腰関節の部分ですが、上下のつながりが良くないので修正。
D 下半身から太ももにかけてのつながりが良くないので修正。
E 膝部分の段差をなくす。
 ほかにも問題はありますが、手を加える部分ところは全体で数か所に限定して、しかも修正箇所に隣接する部分には手を加えないようにします。同時にいくつも
変更してしまうと、結果として修正が間違っていた時に何が原因なのか分からなくなってしまうので、このような配慮をします。



 こちらが全ての修正を終えて、下塗りまですすんだ段階です。
 全然違うラインになって、ほぼ新作と言っても良いぐらいです。




<自分のつくる人形のスタンダードな様式にあらためる>
 ボディラインを整えるだけでなく、平行して様々な部分に藻手を入れています。17年も経過するとやっぱり技術的な進歩も大きいです。

 

1 テンションゴムの通る穴の形状を変更
 左が変更前、右が変更後です。テンションゴムを通す穴は可動域を確保しながらできるだけ小さくします。その方がポージングの安定度は増します。


 

2 関節の形式をあらためる
 肘は二重関節にして自由度を増す。一方で膝は回転楕円体に直して前後にのみ可動するよう、自由度を下げました。


 

3 首関節の固定方法を変更
 首関節は最もテンションのかかる場所なので、金具の形状を変更して、エポキシパテで補強しました。



4 マグネット仕様を追加
 金具を埋め込んでマグネットが衝くようにします。たとえばこれでマグネットピアスが取り付けられるようになります。一方で首関節にはネオジム家具ネットを埋め込み、
鉄の金具などがあればスタンドなしで立たせることができるようにしました。



5 軽量化
 安心安全を考えて、各パーツはかなり厚く重くつくられている。重いと転倒した際の破損確率が高くなるので、可能な限り、裏側から削りを入れて軽量化しました。が





<ボディラインについての新しい解釈>
 ボディのつながりについて、いくつか新規のアイディアを導入してみました。

 

 

 基本的には関節部分を「包み込む」という解釈で良いかと思います。



<塗装とコーティング>
 透明感のある肌をつくるという芳香性を持っていつも作業をすすめています。

 

 具体的には工程表にあるように、下塗り>本塗装>コーティング>メイクとすすめますが、その工程は30以上にわたっていて、とっても時間がかあkる。
 特にコーティング作業は透明層をつくるのが目的なので、いつも絶え間ない埃との戦いになる。

 

 最近では「高耐久ラッカー」や「Mr.カラー」の塗膜が強くなってきたこともあり、今後はウレタンのコーティングはやめようかと思っています。




 メイクに関してはここ数年間、人間用のチークやシャドウを多用して仕上げています。













 ご覧のようにこちらも最初の状態から激変している。
 つや消しクリアーの吹き付けとチークやシャドウによる色つけを何度か繰り返し、最後にMr.カラーで「メイクの芯を入れる寄る」みたいなやり方が、やっと
身について来たように思います。少々時間はかかりますが失敗のない方法です。





<完成画像>






 手足が長くて8.5頭身、市販のお人形にはないボディライン、今自分のつくるドールの完成形のひとつかな。
 自分の場合にはドールを背景付きで展示することが多いので、ニュートラルな表情で仕上げることが基本になっています。その方がそのシチュエーションによって様々な表情に
見て取れるので。
 ただこのドールについていえば、完全なニュートラルではなく、ほんのわずかの寂しさのようなものを感じます。






 このまましばらく眺めて、撮影してみて、何か問題を感じたら微修正をする。だから完成とはまだ言えない。というか、同じドールを3回以上リメイクしたこともあるので、本当の意味での
完成はないのかもしれない。
 人形作りはエンドレスです。少しずつ成長する。

2024.03
camera: Panasonic DMC-LX7  /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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