eye4工房番外編
大根川
<思川桜とカワセミ>
3Dプリンターによって造形された1/64スケールのフィギュアを使って、ご近所の河原の風景をジオラマにします。

こちらが秦野から平塚方面に流れる大根川の実際の風景です。
観光客が押し寄せるところではないけれど、ちょっとした桜の名所になっています。この桜は思川桜といって、小山市にある小山修道院に栽培されていた十月桜の突然変異種。
ソメイヨシノに比べると開花時期は1週間以上遅く、よりピンク色が濃い。こんな並木が300mぐらい続いています。また半八重咲で枝一杯にボリュームがあるので、メジロさんや
スズメさんのように蜜を食べにくる野鳥にも大人気です。

桜の写真というと、桜のピンク+菜の花の黄色+青い空という組み合わせが代表的だけど、咲くのが少し遅い新緑の時期なので、こんな感じでピンク+新緑+青の
組み合わせになります。
清々しくて良い。

今回はこの景色の一部を再現しました。



歩道を自転車で走る二人。

土手道で何かを見つめる女子一名。

そのときカワセミが餌を目指してダイブした・・・。

こちらは本物のカワセミ君がダイブしているところです。
大根川の名物は桜並木と様々な野鳥たち、そのなかでもカワセミ君はカメラマンがやってくるほどの人気者です。

実はこの情景のスケールは1/64、ジオラマサイズは25cm×20cm、大きく見えるかも知りませんが、2台の自転車がこの1円玉の上にのります。自転車のスポーク
なんて太さ0.2mm以下。
最近の3DプリンターとPCによる造形技術はものすごく進歩していて、これまででは考えられないほど、フィギュアは精密にできている。
問題はこれをきちんと組み立てて、塗り分けられるかどうか。
でもきちんと完成させることができたら、作品の幅は確実にひろがる。3Dプリンター+PCという簡便な設備で製造できるから、いろんなタイプのフィギュアが出回り
始めていて、とっても楽しい。
自分はきっちりつくるなら1/24、今回の作品のようにある程度広範囲の情景を表現するなら1/64が良いような気がします。実はすでに1/64のフィギュアは結構な
数入手していて、個展が終わったらまた新作をつくろうと考えています。
あとは自分でもBlenderとかやれたらいいんだろうけど、先は長そうだなあ。
<フィギュアについて>
ここのところ創作活動のペースが少し上がって、立て続けに完成品を発表できそうな勢いです。
もちろん一方で次の作品の構想も考えなくちゃいけない、でも良いアイデアが浮かばない。。こういうとき、何にもない日ならばお散歩に出かけます。

カワセミがいた。最近数が増えてきたのか1日に3羽ぐらい見ることもある。ほかにもたくさんの野鳥がいて、しかも距離が近い。まさに野鳥の宝庫といいたいところです。

せっかくなので先日手に入れた1/64のフィギュアを使ってジオラマをつくれないだろうかと思った。
問題はカワセミまで表現できるかということですね。1/64だと体長が1.5mmぐらいになっちゃうな。
そこでこのカワセミ君の存在に気付いてもらうために、更に1体のフィギュアを置き、このフィギュアの視線を使ってみようと考えました。
1 下地を作り、真鍮線を固定します。
まずはピンバイスで穴を開けて、0.5mm径のステンレス線をフィギュアに取り付け、サーフェーサーを吹き付けます。
ご覧いただくとお分かりのように、男性の乗る自転車のスポークはステンレス線よりはるかに細く、太さは0.2mmもないと思う。だから穴あけやステンレス線の
挿入など、単純な作業なんだけど、かなり怖い。
サーフェーサーを吹き付けると修正点が見えてきます。
左画像では3Dプリンターの台座から伸びたランナーを切り取った痕跡が何ヶ所かあるのでこれを削り取ります。
自転車のフィギュアにはもう少し手を加えました。ボディから浮いているサスペンダーが途中で欠損していたので、紙でこれを補う。(A) そしてものすごく短いショート
パンツとハイソックスの組み合わせが、合ってないような気がしたので、ハイソックスのモールドを削り取ってしまう。(B)
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2 人間用の化粧品を使って、フィギュアをメイクして
ゆきます。 |
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例によって肌の部分からメイクを始めます。
まずは肌の部分にMr.カラーの111キャラクターフレッシュを塗る。そしてあとは必要に応じてMr.カラーのGX113を吹き付けながら、人間用のチークやシャドウを使って
メイクしてゆきます。
その塗り方ですが、これだけ小さいと(顔の長さは3mmぐらい)、麺棒でメイクするのは不可能です。そこで化粧品を小皿にとって薄め液を含ませた極細筆で少しずつ
色を乗せてゆく感じです。
そして乗せ過ぎたと思ったら、先をとがらせたつまようじでこすって落とす。今回化粧品で行ったのは陰影の強調と身体の赤みのある部分に色を乗せることのみにしました。
そして途中で何度か撮影してみて、結果を確認します。(これが重要)
基本的なメイクに問題がなければ、唇の部分に薄めたMr.カラーでほんの少し朱を入れる。目の部分は描かず、薄めたチャコールグレーを流し込む。
一連の作業が終わったら、最後にMr.カラーのGX114を吹き付けて表面を保護します。
3 ボディと自転車本体の塗装を行います。

3Dプリンターを使うと、小さな作品なら精度0.1mmで正確にプリントアウトできるらしいですが、人間の塗り分ける能力はそこまで高くない。しかも一体成型してあるので極めて
塗るのが大変です。
上の画像は、身長2.5cmのフィギュアの足の間にある、直径1mmほどのフレームを赤く塗っているところです。塗ることのできる角度を選んで筆を入れてゆく作業は至難の業、
決して初級者向けではない。

拡大鏡は必須ですが、左のような作品を固定して塗るものは、筆を差し込む角度が選びづらいので、最近自分は使わなくなりました。
これに対応するためには、右のようなヘッドルーペが向いています。
作業は机の端に両手首を押し付けるようにして行い、手振れを起こさないようにするのがコツです。
また筆は模型用として売られているものでなく、ネイルアート用の3本120円ぐらいの極細筆が使いやすい。(TEMUで買った)筆が良い状態である時間はとても短いので、
むしろ消耗品と考えてどんどん新しいものに変えてゆく方が良いです。

塗装を何とかやり終え、ストックしてあったデカールから使えそうなものを選んで貼り付けます。(マークソフターは絶対必要)
乾燥したところで可能な限り質感を変えてトップコートします。自転車とヘアーはGX113に少量のクリアーを加えた半つや消し、衣服はGX113に少量のつや消しあらめ・ラフを加えて
ざらっとした質感を出す。それ以外はGX113そのものという感じになりますが、何せ相手が小さいのでこちらも吹き付けを正確に行うのは難しい。

最後は撮影して拡大してみる。問題点があれば修正します。
このスポークの表現を見たら1/64スケールにはちょっと見えない。
でも大きさ3cmしかないちゃんとした1/64です。
<ジオラマベースをつくる>

ここがジオラマの舞台となる大根川で、このあたりでは秦野市と平塚市の境界になっています。このジオラマを制作するにあたって取材に出かけました。
冬なのできれいでも何でもないですが、中央に並ぶのは思川桜の並木で、満開の景色はとってもきれい。左は運動公園に通じる歩道、そして右側が大根川です。

思川桜とならぶここの名物はカワセミ君です。多い時には200mの間に3羽ぐらいいたりする。この日もお昼寝中のカモさんの横で狩りをしてました。
あとで写真見たら、カモさんはなんと片足でお昼寝してる。よく倒れないな。
4 ジオラマのプランを図面にします

現地取材から図面を起こします。
左側は側面です。思川桜は満開、歩道を走る自転車二台、そして大根川にはカワセミ君がいて、それを土手で見つめる女の子がいる。
縦横に並ぶ数字は端からの距離を示すものです。(単位はcm)
右側は上面図ですが、全てがただただ平行に並ぶだけ。変化がないので少し手を加えないといけないかもしれない。
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5 角材を組み合わせてべーーすボードのフレームを
つくります。 |
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ベースボードは角材で枠組みをつくるところからスタートです。
今回はちょっとだけきれいに仕上げようと、角を45°に傾けてカットして組み合わせることにしました。
でも45°カットだなんてきれいにできるもんじゃない。こういうときにはカットしたときに出たおがくずを取っておいて、木工ボンドと一緒に練って隙間に詰める。
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6 上からスチレンボードを張り付けて、地形を整えて
ゆきます。 |
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上部は7mm厚のスチレンボードを組み合わせて、地面の形状をつくってゆきます。
スタイロフォームや発泡スチロールのかたまりをカットしてつくる方法もあるけれど、精度の点では断然こちらの方が上です。
ベースボードのサイズは25cm×18cm、この程度の大きさがいちばん扱いやすい。
川、斜面、土手、桜、歩道がただただ平行に並ぶだけでは変化がなさすぎなので、いちばん右の画像にあるように、歩道を緩やかにカーブさせることにしました。
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7 表面の起伏や質感を整えてゆきます。また塗装を
行うための下処理をします。 |
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表面上にカッターなどで削りを入れて変化をつけます。あとは布やすりで荒く磨いて、モデリングペーストで均します。
表面がスチロールだと塗装作業がやりにくいので、ティッシュペーパーを1枚にはがして地面の上にのせ、上から水で溶いた木工ボンドを染み込ませます。こうすると強度が
増すだけでなく、水性の塗料が塗りやすくなるし、粘土もはがれにくくなる。
このとき土の部分には、木工ボンドが乾く前に「浴びっこサンド」を撒いておくと、ざらっとした質感が出ます。
コンクリートの部分は板目紙やケント紙で表現します。ここはスケールによって違いますが、1/64だとつるっとした感じの部分はケント紙、小石が混じったざらっとしたところは
板目紙という感じかな。

こちらは実際の風景です。土手斜面には突起のあるコンクリート板が使われています。突起は高さ3cmほど、1/64だと高さ0.5mmに相当します。
これを表現するのはかなり難しいので、今回はこの画像を元にしてプリンターで表現することにしました。
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8 川を再現します。地面を整えてから透明レジンを
流し込みます。 |
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川底を再現します。
茶色に着色したモデリングペーストに「浴びっこサンド」混ぜ、水で薄めて下地塗料をつくります。そしてこれを塗って再度「浴びっこサンド」を撒きます。
次に川の水表現を行います。
ポリプロピレンの梱包テープで縁をつくり、ベースとの境目に粘性の高いUVレジンを流して硬化させます。こうすれば透明レジンを次に流し込んだときの隙間漏れが起きません。
透明レジンを流し込んで硬化させたら、表面張力による縁の部分の盛り上がりを削ります。
このあとKATOのさざ波を筆で塗って、川の流れを表現します。(上の画像)
す。
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9 地面も川底と同じ処理をする。また歩道はプリンター
で仕上げて汚し塗装をします。 |
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プリンターでつくった歩道には、チャコールグレーでところどころにシミのような汚れを加え、全体に艶消し剤を多めに添加したタンをうっすらと吹き付けて、埃汚れを表現します。
あとは隅っこの部分にところどころ水で薄めた木工ボンドを塗って、砂や茶色のパウダーを撒いて、土や葉っぱの汚れを表現します。
シーンとしては桜の咲く風景なのですが、この時期はまだ植物は生え始めたばかりなので、まだまだ枯草部分は多いはずです。だからまずは冬の景色をつくり、その上で淡い
緑色の植物表現を行えば春先のシーンが演出できるというわけです。
枯草表現に使用するのは3タイプ7種類、まずは枯草色のターフ、そして枯草色と茶色のファイバー、あとは手持ちのドライフラワー4種類です。
ちなみにドライフラワーは種類によっても違いますが、経年劣化でぼろぼろになってしまうものが多いです。だから下処理を行ってから使用すると良いです。
その方法はリキテックスのパーマネント マット バーニッシュ を水で5倍ぐらいに薄めたものをつくり、ここにドライフラワーを漬け込んで乾かし、表面をコーティングするというもの、
これでかなり強度は増すはずです。

歩道周辺は花壇として手入れされているので、枯草表現は控えめです。配合はターフとファイバーが 2:1 といったところです。(A)
土手から川に至る斜面部分は、年に1,2回草刈りされる程度、だから植物表現は多めです。肺胞はターフとファイバーが 1:2 といったところです。(B)

川に近いところは背の高い植物も多いです。ここはドライフラワーを利用して荒れた感じにします。(C)

フィギュアの身長は26mm、1/64というスケールを考慮していただければ、第一段階の出来としてはまあまあではないでしょうか。
さて冬の景色が再現できたところで、ここから先、少しずつ季節をすすめてゆきます。
<植物の表現>
まずはこの思川桜をできるだけリアルに作ろうと思います。
市販のものも販売はされているのだけど、鉄道模型用で販売されているものは花の粒子が荒く、見た目に美しいものはそれなりに高価です。素材さえそろっていれば、
リアルなものを作ることはそれほど難しくはないです
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9 リアルな桜を市販の4つの素材から材料からつく
ります。 |
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素材1は「紅白の梅」として販売されているもので、針金をよじり合わせてつくってあります。
まずは梅の花を落として、左のように枝の形を整えます。
素材2は「オランダドライフラワー」という天然の植物を乾燥させたものです。細かな棘のような枝が密集しているのが特徴です。
天然素材なので酸化や紫外線の影響を受けやすいと考えられます。そこでリキテックスの パーマネント マット バーニッシュ を水で5倍ぐらいに薄めたものに漬け込んで、
完全に乾燥させます。こうすることで表面が保護され、強度も増します。
あとはこれを茶色に塗る。そして適当な大きさに切って、ゴム系接着剤で「紅白の梅」に取り付けます。
素材3は「桜の花」、市販品で出回っている粒子が1~2mmのものです。枝にスプレーのりを吹き付け、桜の花の素を上から撒きます。
1回では密度は高くならないので、これを3回ほど繰り返しました。

これが桜の花を3回撒き終えたところです。
市販品の出来の良いものがこのレベル。ただ少し花の粒子が荒い感じがします。1/64スケールだと、花びら1枚が0.2mmぐらいの粒子で再現されているのが望ましい。

素材4は「桜パウダー」、とても細かな粒子でできている。(KATO 日本のさくらのはなびら)
スプレーのりを吹き付けたあと、最後にこれをもう一度撒いてやると、とてもきれいな桜に仕上がります。これなら1本1000円以上の値がつけられるかな。
ポイントとしては「紅白の梅」→「オランダドライフラワー」→「桜の花」→「桜パウダー」という順で、少しずつ粒子を細かくしてゆくことです。こうすることでふんわりとリアルな桜の木が
できあがります。
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10 あとはジオラマに必要な街灯や、カワセミをつくっ
てゆく。 |
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並木に並行して立てられている街路灯もランナーやプラ板からつくってみました。
カワセミの体長や翼長を1/64に換算すると、それぞれ3mm及び4mmとなる。プラ板をこのサイズにカットしてから、上面形を切り出した。
なかなか1/64スケールは手ごわい。
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11 春の植物表現を雑多な素材から行ってゆきます。
水彩画のように少しずつ重ねてゆく。 |
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3月というと新芽の季節、草丈はまだまだ低い。だから明るい緑のパウダーと短めのファイバー2種類を混ぜて、草の表現を行います。これらをブレンドしたらKATOの繁茂深雪
ボトルに入れて、静電気を起こしながら、糊を塗ったベースに振りかけてゆきます。

あっという間に乾燥した冬の風景が、春先のものに変わってしまいます。
ポイントは糊の塗り方かな、自分はKATOの草原のりを使っているけど、水で少し薄めて筆にとり、ちょんちょんとまばらに地面につけてゆく。想像力を働かせて、草が育ちやすそうな
ところに重点的に糊をおいてゆくとリアルな感じになります。

歩道沿いにはいくつかの木が植えられ、またその他にも野生の植物が見られるので、次はこれを表現します。
土手の横壁にはヒメツルソバという、ピンクで球形の花を咲かせる植物が育っている。
探してみたら細い毛糸のようなものに細かなピンクの花表現をしたものが売られていたのでこれを購入した。(TEMU 356円)
川には葦の仲間で草丈のある野草があるので、手持ちのドライフラワーで表現します。

中央のやや背の高い植物ですが、まずは水で薄めたパーマネント マット バーニッシュ に漬け込んで完全に乾かす。そしてゴム系接着剤を落とした厚紙の上に置いて扇状に
広げます。(右画像 左)
歩道沿いには芙蓉の木があるのですが、成長が早いので、冬場は全て切り取られて根っこだけになっている。モデリングペーストに伸ばしランナーを短く切ったものを押し込み、
これを表現します。(中)
マサキの低木が歩道の反対側に植えられているので、市販品のなかから似たものを選んで使います。(右側)
そしてフィギュアを配置すれば全てが完了です。
<完成画像>






2025.03
camera: Panasonic DMC-GX9 & OLYMPUS 12mmー50mm / graphic tool: GIMP 2.8
+ Ichikawa Daisy Collage 10
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