浜松ジオラマファクトリー
山田卓司の世界
2025.05.01
自分は人形やフィギュアをつくり、ときには背景もつくってジオラマにしたり、あとは人形たちを撮影して遊ぶという活動をしています。人形やフィギュア関連の
ことをひろく総合的に楽しむのが自分流ではありますが、世の中では特定の分野をさらに追及して、達人とか名人と呼ばれるような人もいる。
いわゆるジオラマが芸術作品であるとは思わない人もいるかもしれませんが、立派な創作活動の一つであることは間違いない。そして自分が思うに、その実力と
経歴から、達人として山田卓司氏と荒木智氏(アラーキー)の二人の名前は外すことができないと思う。
新幹線に乗ってやってきたのは浜松ジオラマファクトリーです。浜松駅から徒歩5分の「ザザシティ浜松西館」のなかにあって、山田卓司氏のジオラマ作品が随時70点
ほど展示されています。
最近になってこちらに拡張移転してきたという話です。(入館料 大人300円)
山田卓司氏は浜松出身のプロモデラーで、様々なテーマで作品をつくられているのですが、そのなかでも特に評価が高いのは昭和を描いた作品ではないかと思って
います。スケールは1/8から1/24程度、登場するフィギュアもほとんどが手作りで、その表現力には目を見張るものがある。
金田家の肖像
1960年代にウルトラシリーズという怪獣映画がTVで放送されるようになりましたが、その最初のシリーズがウルトラQでした。こちらはその第15話「カネゴンの繭」の
エンディングシーンを再現したものです。
その昔、前日に見たテレビ番組は必ずと言ってよいほど、次の日の学校の話題の中心になっていた。
今では大河ドラマの視聴率も10%ぐらいだけど、その昔は30%を越えるような番組がいくつもありました。
昭和40年秋の夕食
親子三世代が食卓を囲む、そしてその中心にはテレビがあった。これが昭和の家庭の風景の代表的なものの一つでした。少年のポーズは「シェー」というもので、
漫画「おそ松くん」の登場人物イヤミの行うギャグです。
そして今、このような家庭はほとんど希になってしまった。
50才以上の未婚率3割、出生率1.20、華族団らんという言葉も、そのうち消えてしまうんじゃないかと。
OLD DAYS BUT GOOD DAYS
山田卓司氏というと、やはりテレビ東京「TVチャンピオン」で優勝4回したというのが、知名度を上げるきっかけになったと思う。その第1回全国プロモデラー王選手権で制作した
「蝉時雨」をリメイクしたのがこちらの作品です。
夏休みの暑い一日の思い出を、さりげなく表現したところがいいね。
引っ越しの日
引っ越して遠くに行ってしまうその日、大切にしていた飛行機のプラモを友人にプレゼントするシーンを再現しています。
こちらも「TVチャンピオン」で制作された作品です。
おままごと
昔から女の子の遊びというと、おままごとが代表的なものだった。
右端は誰かの弟なんだろうけど、そんなところに無理やり男の子一人連れてゆかれると居心地が悪い。そんなシーンを再現したらしい。
でも今はジェンダーレスがすすんでいるから、嫌がる男の子も減ったかもしれない。
踏切
浜松の平田町にあった踏切をジオラマに下もの。リアルな人物表現がいいね。
夏休みの1シーンを描いたさりげない作品です。静かでのどかで、自然そのものの感じが良い。
終戦の思い出
こちらもTVチャンピオンで制作された作品です
模型少年の日々
さて男の子の遊びというとチャンバラのようなやんちゃなものと、あとはこういうプラモデルも人気があった。自分もそうでしたが、週末になるとこういうお店に出入りして、
展示された作品を眺める少年の姿があった。
昔に比べると模型屋さんと本屋さんの数は減ったね。そしてその分、プラモも本も気軽に買えるようなお値段じゃなくなってきた。
おもちゃは作るものから、出来上がったもので遊ぶ時代に、そして「モノ」ではなく、仮想空間のなかで遊ぶ時代へと変化してきている。アートの分野でもAIが台頭してきて、
そのうち人間は創るよろこびの大半を失ってしまうのではと、自分は危惧しています。
その昔、プラモの世界と言えば戦車や飛行機が主流で、しかも今とは違ってモーターが入っていて走ったり、プロペラが回ったりするものが中心のいわゆるおもちゃだった。
そしてそのおまけとして簡易なフィギュアがついてくるのが一般的だった。
そしてタミヤはそのフィギュアそのものに注目、様々なタイプ、ポーズの兵士を取りそろえるようになる。
それ以降はミリタリーに限らず様々なリアルなフィギュアが開発され、新たに模型の世界にフィギュアという独立したカテゴリーが成立するようになった。
大魔神
ビリケン商会から発売されていた大魔神に手を加えて、映画の1シーンを再現したもの。雑兵のフィギュアはすべて自作したという作品です。
こちらの会場はすべて撮影可なのだけど、すべての作品は透明なアクリルケースで保護されています。今回のレポートで大失敗しているのは、撮影機材としてコンパクトな
カメラしかもってゆかなかったことで、ケースの反射が画像を不鮮明にしてしまった。
可能ならばPLフィルターの取り付けが可能なカメラを持ってゆくことをおすすめします。
関ヶ原の戦い
歴史舞台をテーマにする作家は多くない。こちらの作品はフィギュアや背景の仕上げが素晴らしいのはもちろん、その構成や配置、ポーズなどが計算されつくして
いてすごい。
仏師
後方に並んでいるのはARTPRAの四天王像です。この4体を生かすため、仏師たちの工房を作り上げたという作品です。こういうものを作ろうという発想がまずは
すごいな。また仏師たちはすべてエポキシパテによる自作だそうで、こちらもすごすぎる。
左はツクダホビーのラプトルを主役にして制作したジュラシックパークもの、右はおそらくタミヤのプラモだと思う。
市販品もそのまま使うのでなく、時間をかけて作り直せば、とても見栄えが良くなるという見本でしょう。
あしたのジョー 丹下拳闘クラブ
こちらはフィギュアを含めてフルスクラッチされたもの。自分も経験がありますが、二次元のものを三次元で表現するのってすごく難しい。正面だけ、あるいは横顔だけ
似せるのはできるのだけど、どの方角から見ても違和感なく仕上げているのがすごい。
山田卓司氏の仕事場をジオラマにしたもの。
へー、こういう普通の場所で制作してるんだって、まずは思う。そして左に写っているのは娘さんで、その状況そのものが机の上にさらに縮小されてジオラマに再現されている。
これを見て、自分あたりはウルトラQの第17話「1/8計画」や、SF映画「ミクロ決死圏」などを思い出してしまうのだけど、ちょっと古すぎるかな。
テーブル上のジオラマを更に拡大しました。
更にそのテーブルの上にはまたジオラマがあるのだけど、さすがにフィギュアまでは置かれていなかった。
もともとのジオラマのスケールは1/6程度、従ってテーブル上のジオラマは1/36(おそらくは1/35のフィギュアがベース)、だからもしその上のジオラマを再現するなら1/216と
なって、今なら出来の良いZゲージの1/220フィギュアが販売されているので、多分できないことはない。
ぜひ実現してほしいなって、ちょっとだけ思いました。
現状、プラモの世界はいわゆるガンプラがけん引していて、次に美少女系のアクションフィギュア、次にミリタリーものやキャラクターものという感じでしょうか。
山田卓司先生もガンプラを主役にしたジオラマをいくつも制作していて、まずはそちらをご紹介します。
いくつかあるガンプラものでは、右側の作品がいちばん気に入りました。(作品名のメモを忘れました)
黒い球体が割れて赤い液体が滴るという、意外性のある演出がおどろおどろしていて良い。
ガンプラものは小スケールであるがゆえに、リアルな作品の製作が難しい。この作品はガンプラに生命感を与えているという意味では画期的かも。
ゴジラ
怪獣モノはガンプラと違って生命体なので、感情移入はしやすい。でもこれだけイメージがころころと変わるキャラクターは珍しい。
こちらも作品名不詳、ドイツ3号戦車とフィギュア2体のシンプルな作品です、腰の高さまである草原のなか、索敵をする二人の戦車兵の緊張感が伝わってくる。
こういうさりげない作品が自分は好きかな。
How Many Miles to the Batttlefield?
タミヤのサイドカーセットを利用した作品、案内表示もキットのものだそうで、最近は案外簡単にこういう作品が出来てしまうらしい。
今ではスマホやPCがあれば、ジオラマのアイディアさえもAIの助けを受けることができるわけで、だんだんと人間のやることが少なくなってきている。
がしかし、それらをきちんと使いこなし、作品としてまとめてゆくには、経験や知識、技巧といったものが必要なわけで、全くの素人に材料を与えても、このような作品にはならない
のも事実です。
会場の一角にはコンテストの受賞作も展示されていました。
こちらはハイスクール国際ジオラマグランプリ2025の作品です。
プラモやジオラマといったモノつくりの世界が縮小気味なのは、今に始まったことではないと思う。若い人がこの世界に目を向けるきっかけという意味では、こういうコンテストの
開催に意味があると思う。
苦言を言うなら、一部のイベント会社が高校生相手に全国規模で行っているもののなかには、明らかに営利目的のものがあって、自分は応援する気になれません。
(もちろんこのコンテストではない)
安土城 ~信長と秀光の思い出~
こちらは浜松ジオラマグランプリ2021大賞作品、船舶用1/350スケールのフィギュアを配置して、安土城築城の様子を再現したのだという。その迫力と緻密感に圧倒されます。
作者の青山祐司さんはこのジオラマグランプリで三連覇を達成した。
ネコブネ ~ノラの箱舟~
浜松ジオラマグランプリ2023大賞、ノアの箱舟とネコバスのイメージが合体したものだそうです。こちらも力作だね、1年かけて作品作りをしてるのかな?
ということで浜松ジオラマファクトリーのレポートはこれにて終了です。もっともっとたくさんの作品を撮影してきたのですが、ここから先はぜひ現地で実物をご覧になるのが
良いと思います。
作品は三次元、画像は二次元で全くとは言いませんが、見え方は変わります。
いろんな意味で勉強になった浜松ジオラマファクトリーですが、そもそもは浜松の活性化につながる新名所として、またものつくりの技術と精神の伝承を目的として
「NPOはままつ未来会議」が第一弾としてつくったものだそうです。
なるほど、300円という格安の入場料設定というのも頷けます。
追伸
これまでジオラマグランプリの存在は知らなかったのだけど、自分も出品してみても良いかなと、帰りの電車の中でふと思った。
ただ今年の申し込みはすでに始まっていて、新規に制作している時間もないし、サイズにも制限がある。だからこれまでつくってきた小さな作品のなかから選ぶことになりますが、
それではコンテストに向けて1年かけてつくった作品に見劣りするのは明らか。
少し考えて、それでも出してみることに決めました。
結局コンテストのための作品制作は今後もしないだろうし、ただただすごいという作品に興味はない。だったら自己主張として自分らしいものを出品する。
まずは皆が共感できる作品、そこに登場するフィギュアの心情が伝わってきて、その空気や雰囲気が感じられるもの、そういうものを今選んでいるところです。
2025.05
camera:Panasonic DMC-TZ60 / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
サイトのトップページにとびます