十日町
越後妻有アートトリエンナーレ
2025.5.29 ~ 5.30
梅雨入り前の最後の時期に新潟県の十日町市に行ってきました。以前から気にはなっていたのですが、越後妻有アートトリエンナーレと題された
広域芸術祭が開催されていて、広大な十日町・津南区域に様々な種類や形式のアート作品が展示されています。
広域でしかも山間地なので、今回はドライブしながらそれらの作品を巡る旅になります。
5.29 THU 天気:晴れのちくもり
9:00
関越道の越後湯沢ICを下りて、国道353号線から十日町を目指します。
中里かかしの庭
Chiris Matthews(UK)
長いトンネルを抜けたら小さな集落があって、唐突に作品が出現しました。
川に沿ってに点々と案山子を模したモニュメントが置かれ、自然と一体になってる。
自分は事前に作品をgoogleマップからピックアップしておいたのだけど、全てがリストアップされているわけではないので、専用のサイトからアプリを
ダウンロードしておくのが良かったみたいです。
アートもすてきだけど、道端のお花畑が負けずに美しい。
AKE SWIMMING
白羽毛集落のこどもたち+青木野枝(日本)
元は小学校だったところに作品展示はありました。景色は良くて越後の山々が一望できます。
作者の青木さんはここで子どもたちと作品を一緒に作ったのだそうです。
こちらの芸術祭は「人間は自然に内包される」を理念にして、十日町地域の広大な大地を美術館に見立てて、アーティストと地域住民がともに作品を制作したり、
展示運営することを目的としているようです。そしてタイトルの「妻有り」とは、この地域の地名に由来するものです。
Set North for Japan (73°33′2″)
Richard Wilson (UK)
鳥居の右後方に写っているのが作品です。
ロンドンにある作家の自宅をもとに、実物大の構造だけ、方位を保ったまま妻有に移動させたというもの。
でも撮影するなら、作品中心でなくどうしてもこういうアングルでまとめたくなる。
そして道路沿いにはものすごくたくさんのきれいな花が植えられている。
芸術祭が地域と一体になっているって感じです。
ドライブしてたら、急に現れた巨大な円筒群。
こちらはアートではない、アートではないのだけど、もの凄い存在感のある防災ダムでした。
10:00
家の記憶
塩田千春(日本/ドイツ)
外から見たら、ごくありふれた普通の民家なのだけど、入ってみると無数の黒い糸が張り巡らされている。
塩田千春さんの作品は東京の個展で拝見したことがあるけど、このような作品が、こういうところで見られるというのが素直に嬉しい。
ちなみにこの作品は入口部分しか撮影できませんでした。説明では火曜水曜が休業で、この日は木曜日、やっているはずだったんだけどな。
今回の芸術祭は2024年にスタートしているので、一部の展示はすでに撤去されたりしているものもある。また土日のみ公開という所も多い。天候などを
理由に臨時に休業することもあるので、事前によく調べて日程やタイミングなどを計ったほうが良いと思います。
すぐそばにあった大宝神社という村の鎮守様、ご神木がものすごく立派でした。
10:15
こちらは十日町市立里山科学館で、通称は「森の学校」キョロロ、内容としては参加体験型の自然科学館です。(入館600円)
こちらはまず建物自体がアート作品になってます。
左手に見える塔の中に入る。
下方には赤く染まった空間が見える。燃えるような地球の中心を描写してるのかな。
上方には青く深い空間、きっと宇宙の広がりみたいなものを表現してるんだろうなあ。
美術館で効率よく作品を見るのと違って、その場所を一つ一つ巡りながら作品を探してゆくのって、色んな発見や驚きがあって面白い。
もしかしたら、本来はこうあるべきなのかもしれないと思いました。
11:00
十日町市立里山科学館から先は少し山深いところ二入ってゆきます。
こちらは「美人林」と呼ばれる面積3ヘクタールほどのブナ林です。
大正末期、木炭にするために全て伐採されてしまうのですが、その翌年にはブナが一斉に芽吹いて成長し、現在の姿になったのだという。
ただただ静かで美しい。そしてときおり野鳥の鳴く声が聞こえる、そんな場所です。
11:25
こちらは星峠の棚田です。
大きさや形も様々な水田がひろがって、その水面に青空が映る。水田に水が入った時期だからこそ、ここには訪れてみたかった。
人生のアーチ
イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソビエト連邦/アメリカ)
自分には人が誕生してから、この世を去るまでの間を淡々と表現しているように見えました。それぞれの時代において様々なものを背負って生きている。
松代地区には芸術祭の作品が数多くあるのだけど、自分がその存在を知らなかったり、土日のみの公開だったり、あるいは駐車場から急坂を上って40分
だったりで、見ることができなかった作品がものすごく多くなってしまいました。 「良く調べたら?」そう言われちゃいそうだけど、旅っていうのは、だいたい
調べすぎると、分かっているからつまんなくなる。またみんなの知っているところばかりになって、発見がなくなる。
旅のプランは「事前の一筆書き」でなく、「点と点を結ぶ程度」が良いと自分は思ってます。
12:45
この後は松代の街中で昼食です。
「小春食堂」というところで定食をいただいたのですが、ものすごくボリュームがあって満足でした。(定食900円~)
食後はコーヒーということで、古民家カフェ「 澁い」というところに入ってみました。
外見は少しヨーロッパの香りがするのですが、建物自体は日本の古民家を再生したものだという。
柱や梁がものすごく太い。こんなもの今新築したら何億かかるんだろ? すごいものを見てしまったという感じです。
吹き抜けになった入口から、2Fに祀られた神棚も見える。2Fそのものは建築事務所になっていて、NHKにも出てくるカールベンクスさんがそのオーナーです。
松代の街自体はそれほど賑わっている感じではないのだけど、古くて良いものが残っていて、それを現代につなげるような街づくりがすすめられていると自分は
見ました。
そしてその中心にいるのは、やっぱりカールベンクスさんなんだろうな。
こんな山間の小さな町で、これだけビジュアルなところは見たことがない。街そのものがアートになっている感じです。
この画像を見てスイスあたりをイメージする人も多いのではないかと思います。
13:45
十日町は芸術の街として、いわゆる地域おこしを進めているのだと思いますが、その中核となる施設が次にご紹介する越後有妻現代美術館です。
この建物の設計は札幌ドームや京都駅ビルなどを手がけた原広司氏で、数々の受賞歴を持つ世界的に名の知られた建築家です。
美術館は入ってすぐに広大な池がひろがり、そのまわりを吹き抜けを回廊が囲むという、なかなか見られない空間になっています。 この美術館そのものも
立派なアートです。
今現在、美術館の中心企画は「無色の人 春」と題された三宅感氏の作品展です。
エントランスには巨大な立体彫刻群が展示されてます。
天井から吊り下げられているのは、様々なものでつくられた宇宙船です。
下の立体彫刻の一つをアップにするとこんな感じです。高さは4mほどもあって、2016年に岡本太郎賞の大賞を受賞した巨大壁画だそうです。
原色で塗りつぶされたレリーフがいくつも並ぶ。
この作品群から受けるパワーがすごい。
真っ白い作品もある。影の使い方がいいね。
三宅さんはアート制作の傍らで重度身体障害者の訪問ヘルパーとして働いているという。介助現場で様々な家族の日常に入り込む中で、自らが「無色透明」
となることこそが、他人同士を繋ぐ役割を果たせるのではと考えるようになったという。
ここから先は企画展以外の部分をご紹介します、とても全部は載せられないけど。
白い服
未来の思い出 ターニャ・バダニア(ロシア)
薄衣の背後にLEDが取り付けられで輝く、あたかも人がそこにいるようで生命感を感じる。
Resounding Tsumari
マルニクス デネイス
コントローラーを操作すると、等高線のような緑の発光が変わってゆく。この一帯の地形をあらわしているそうで、同時に音の響きも変わってゆく。
movements
目(日本)
天井から何かがたくさん吊るされていて、きらきらと輝く。
最初は「きっと白い夜空でも表現しているんだろうな」と思った。
近づいてみたら、テグスの先に吊り下げられていたのは無数の時計のムーブメントだった。しかもどれもがちゃんと動いている。
「電池が切れたら、交換するのが大変だろうな」って思った。
浮遊
カルロス ガライコア
豪雪地帯の家屋と世界の都市の建物をかたどった紙が、ガラスケースの中で雪のように舞い降りる。
LOST#6
クワクボリョウタ(日本)
小さな鉄道模型にライトが仕組まれていて、そのライトに照らされて様々なものが壁に映る仕組みです。床に置かれているのは織機の部品だろうで、
「なるほど、こういうアートもあるのか」と思った。
ちなみに十日町の織物は名産品の一つです。
Force
名和晃平(日本)
天井から黒いオイルが連続的に下に向かって流れている。洗練されていてインパクトがある。
今回の旅の最大の目的はこの美術館に来ることだったのだけど、思った以上にすごかった。申し訳ないけどこのレベルでまとまっている美術館てなかなかない。
それが失礼ながら県庁所在地でもない十日町にあることが、更にすごいです。しかも入館料は1200円と、地方にある一般的な美術館と変わらない。
こういう作品を背景にして人形の写真を撮ると、やっぱりアーティスティックな写真になるね。
そして「作品のアイディアに困ったら、ここに来ると良いかもしれない。」と思った。
それだけインスパイアされるものがこの美術館と十日町にはあります。
15:15
メインはアート見学ですが、もちろん街中の散策などもしてきました。
美術館のお隣には道の駅「クロステン十日町」があります。こちらでひときわ目を引くのは巨大な吊るし雛で、高さ10m、重さ350kgもあるとか。雛の数は全部で
12,088あるそうで、柱には誇らしげに「ギネス世界記録」の認定証が取り付けられていました。
大きくて迫力十分です。
このあたりは新潟の山間地で有名な豪雪地帯です。
駅前の公園には近年の最大積雪量をあらわしたモニュメントがある。一本一本の緑のパイプが積雪量をあらわしていて、中には4m近い年もあった。すごいね。
次に行ったのは十日町市博物館です。やはり十日町のことを知るのなら絶対に行っておきたい施設です。 (入館600円)
近年の生活風景を再現したコーナーです。
雪が2階以上の高さまで積もる冬は、やはり暗く辛い。
冬の人々の生活の中で発展してきたものが織物、弥生時代から続く十日町市の織物文化を展示するコーナーがあります。
信濃川によってつくられた河岸段丘上に人々が住み始めたのは、今から2万年ほど前の旧石器k時代からだといわれています。そして現在までに150もの遺跡が発見されて
いて、発掘されたものが展示され、それぞれの遺跡についての解説もあります。
縄文時代、この一帯にはすでにたくさんの人々が住み、文化的にもかなりの発展を遂げていたようです。
ここでの最大の見ものは火焔型土器だろうと思う。
笹山遺跡から出土し、 国宝に指定されている火焔型土器がずらりと並んでいる様はすごい。教科書に載っているものを、そのまんま見ることができます。
こちらの土器は現代アートとして見ても恥ずかしくない。いかに縄文人がアーティスティックな感覚に溢れていたか驚くばかりです。
本日のお宿はこちらの「うめハウス」、一戸建てで一泊8000円、気兼ねなく過ごせるのが良い。
宿に荷物を置いて、今度は街中を散策です。
古い建物がいくつか残っていて、しっとり感がある。
18:00
晩御飯は「豊吉」というお店に行きました。
暑かったのでビールから入りましたが、お刺身の盛り合わせ(1900円)が抜群のおいしかった。利き酒セット(700円)もリーズナブルでとても良い。あとは
焼き物や地酒などを注文したけれど、どれもみなおいしくて、しかもお手頃価格でした。ここは絶対にお勧めの居酒屋さんです。
もう夏至も近いので、帰り道はまだ完全に暮れてはいなかった。西の空が良い感じに染まっていました。
この日はおなかいっぱいでした。たくさんのアートと立派な現代美術館、国宝のある博物館、しっとり感のある街並みとおいしいお料理やお酒の飲める居酒屋さん。
これ以上何を望めばよいのでしょう。
でもやっぱり、これがわずか人口4.5万人の都市とは思えない。十日町はすごい。
十日町市は世界最大級の野外アート展として知られる大地の芸術祭「越後妻有アートトリエンナーレ」の開催地として知られ、その中心になっているのは越後妻有里山
現代美術館であることは間違いない。でも市内にはそのほかにもいくつもの大小のギャラリーがあったりする。
宿泊した晩、そして次の日の早朝には駅中心にぐるりとお散歩してきました。
大地の響
藤巻秀正
ほくほく線とJRが乗り入れている十日町駅の西側には、西口公園と呼ばれるそこそのの大きさの公園があって、こちらではたくさんの立体造形が楽しめます。
まだ暗い時間帯だったので、画像が荒れててすみません。
そして現代美術館へと続く遊歩道にも、素敵な作品が置かれていて目を楽しませてくれる。
この作品を見て、今つくっている縄文をテーマにしたジオラマのアイディアを思いついた。
wintercirclet
小松宏誠
こちらは、ほくほく線十日町駅のエントランスにある吹き抜け空間に飾られているシャンデリアで、空や風、ひかり、そして雪を表現しているそうです。
右下にあるのは「駅ピアノ」、もちろん誰がひいても良いピアノです。
雪の日にこのシャンデリアの下で演奏が聴けたりしたら、ちょっと感動するかもしれないと思った。
改札に続く階段には、十日町の誇る織物がいくつも展示されている。
現代アート、音楽、織物、十日町ってけっこう素敵なところなんだって、この駅に降りた人は思うでしょう。
ここは多分、地元の高校に続く通学路の一つなんだろうと思う。
工場の壁に壁画が描かれていました。芸術祭のマップにないので、高校生が描いたものかもしれないと思いました。
学校生活を淡々と影絵のように描いている。でも今回の旅のなかでは、最も印象に残る絵の一つでした。
こういう日常の中で見学できるアートって素敵だと思う。
5.30 FRI 天気:雨
8:20
宿泊した翌日は早朝から雨模様でした。それでもあと一ヶ所だけ立ち寄ってから、神奈川に帰ろうということになりました。
やってきたのは清津峡渓谷というところです。
越後湯沢のスキー場の裏側にあって、細く狭い谷を清津川が流れる。そしてその川に沿ってかつては散策路があったそうですが、それが使用できなくなって、
今現在の散策用トンネルがつくられたのだとか。(見学料1000円)
これなら雨が降っても関係ない。
入口から750mにわたってこのトンネルは続き、途中、いくつかの見学ポイントが設けられています。
また3つの見晴らし所からは、渓谷の荒々しい岸壁が望めます。
眼下には清津川の急流、トンネル自体はこの川に並行して彫られていて、奥に向かって登ってゆく感じです。
この見晴らし所は、まるで「タイムトンネル」みたい。
中央のあるのは実はトイレで、ちゃんと使用可能です。壁はハーフミラーになっていて、外の景色が見える。ここは見逃しやすいところですが、ちゃんと
覗いた方がいいよ。
アルミパネルの張られた見晴らし所、こちらもちゃんとアートしてる。
奥に行くと次第に寒くなる。
そして750m先の最終地点にはパノラマステーション(水鏡)がある。端の方の水深が浅くなっていて、トンネルの扇端まで歩くことができます。
トンネルのいちばん先まで行ってみたらまだ雪がどんと積もっていた。上着が必要なぐらいの別世界です。
クツが塗れるのも嫌だったので、裸足になりましたが、むちゃくちゃ水が冷たい。
もちろんここが最大の撮影ポイント、どういう写真を撮影するか、ちゃんと考えてから行った方が良いかもしれません。
2025.06
camera:Panasonic DMC-TZ60 / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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