須賀川


ヒーローたちの街



2025.06.21
 今回は福島県の須賀川町を訪ねました。須賀川というところの知名度は高くないとは思いますが、特撮の円谷英二監督や、1964年の東京オリンピックのマラソン競技で
銅メダリストとなった円谷幸吉氏の出身地として知られるところです。



6.21 SAT 天気:晴れ
8:50
 自分の場合、趣味として人形やジオラマなどをつくって、自らのイメージした空間をつくったり撮影したりしているわけですが、日本ではそれを職業としている人たちもいます。
 そのなかでもいわゆる「特撮」と呼ばれる分野には、以前より興味を持っていました。



 やってきたのは岩瀬という地区、一面に田んぼの広がる気持ちの良いところ。



 今回訪れたのは「須賀川特撮アーカイブセンター」です。福島県の須賀川は「特撮の神様」と称される円谷英二監督の出身地で、ここアーカイブセンターには特撮に関する
様々な資料が集められています。
 これまで特撮ミニチュアなどの貴重な資料は、撮影が終わって廃棄されたり、行方不明になったりで、必ずしも適切な保存がなされているわけではなかったそうです。(2020 開館)

 

 エントランスにはウルトラマンや仮面ライダー、巨神兵などのヒーローが出迎え、頭上には特撮で使用された飛行機が空を舞う。
 ちなみにこのアーカイブセンターでは撮影はOKなのだけど、理由は分かりませんがカメラは×、スマホのみ〇というルールがあるのでご注意を。

 

 収蔵庫には様々な映画やドラマで使用されたミニチュアがずらりと並びます。ざっと見て、その数は200近いのではないかと思う。

 

 そして中央の戦艦ヤマトはミニチュアとはいえ7.5mもの長さがある。スケールはタミヤのMMシリーズと同じ1/35です。
 右側の環境部分はさらにその2倍の大きさで1/17.5、この精密さは圧巻だね。(男たちのYAMATO 2005)



 古いところではウルトラマン(1966)に登場したジェットビートルやウルトラホークなど、ウルトラマンシリーズの特撮に登場した乗り物がずらりと並びます。



 新しいところではこの巨神兵かな。(巨神兵東京に現わる 2012)  造形が見事、怖さが伝わってきます。



 2Fは映画等で使用されたジオラマが展示されています。
 こちらは「帝国製麻ビルディング」ほか、NHKの大河ドラマ「いだてん」(2019)で使用されたものを展示しています。1/18という巨大スケールで、なるほどここまで作り込むことによって
リアルな空間ができるわけだと納得しました。
 TVもどんどん高詳細になってきているので、そこに登場するミニチュアも色形だけでなく、質感まで画として求められるようになっているんだろうな。



 こちらは1/15スケールでつくられたリアルな民家、その手前には1/8の公園がある。



 そしてその奥には1/25スケールの街並みがひろがり、遠景は1/60でつくられている。
 ミニチュアを撮影すると、どうしてもピントが合った前後はぼけてしまう。それを避けるには、このようにスケールを順次変えてゆけばよい。すべての範囲にピントが合うようにして、
リアルに見せるこの工夫を「強遠近法」というそうです。



 更にこのアーカイブセンターでは、特撮技術を後世に伝えていく役割を担って、「須賀川特撮塾」などを通して若手の育成なども行っているそうです。

 特撮は奥が深い。ジオラマつくる人ならインスパイアされる場所ですね。
 しかも寄付のお願いはありますが、基本的に入館料は無料なのはすごい。







9:40
 「須賀川特撮アーカイブセンター」のある岩瀬市民サービスセンターは旧岩瀬村の中心地で、この周辺には点々とその歴史遺産が残されています。
 近くに長命寺という桜で有名なお寺があります。(開山等は不詳、住職不在) 桜の季節ではありませんが、周りにはたくさんの花が咲いていました。



 ここにはたくさんの石碑が立ち並んでいて、独別な場所であったことがわかります。
 但し誰がどのような目的でこれらを立てたのか、分かるものは少なくなってきている。googleマップにはこれらの存在すら記されていません。

 この地域の地名は「畑田」というのですが、その地名の由来についてはパネルに記されていました。八幡太郎が戦において、この地にたくさんの白旗を立てたことから畑田と呼ばれる
ようになったのだそうです。
 八幡太郎は源 義家の通称で、平安時代中期から後期にかけて活躍した武将です。後に鎌倉幕府を開いた源頼朝や室町幕府を開いた足利尊氏などの祖先にあたる人物です。
 父である源 頼義とともに、前九年の役では奥州 安倍氏と戦った。その時の景色が「畑田」の地名の由来になったということだと思います。



 こちらは石造阿弥陀三尊来迎供養塔、こちらは鎌倉中期の末法思想を伝えるもので、全国的に例を見ない多式の三尊仏だそうです。(県指定の文化財) 阿弥陀如来を中央に
右側に観音菩薩、左側に勢至菩薩の三尊仏が彫られているて、一刻でも早く成仏したいという人々の願いがあらわれているのだそうです。
 この一角はのどかな田んぼの中にあるけど、雰囲気がなんか違う。感じるものがある。





 

10:00
 須賀川特撮アーカイブセンターから市の中心街までは距離にして10kmほど離れたところにあります。
 市街地にはウルトラマンやウルトラセブン、エレキング等々、ウルトラの仲間たちが歩道上に置かれていて、皆の目を楽しませてくれるところです。



 中心部にtette(てって)という市の施設があって、ここには図書館や交流館がおかれ、市民が様々な形で利用できる文化施設になっています。

 

 そしてその最上階(5F)には円谷英二ミュージアムがあります。
 須賀川特撮アーカイブセンターが特撮関連の施設であるならば、こちらは円谷監督自身と、監督が撮影にかかわった作品の解説が中心になります。
 入り口には、どーんと撮影に使われたゴジラがいたりします。






 こちらは展示物の一つで、撮影現場をジオラマにしたものです。
 アーカイブセンターが特撮に使用された模型を中心に展示しているのに対して、こちらはあらためて博物館の展示物として制作されたものが中心になります。



 人類が怪獣に立ち向かうとき、よく出てくるのが航空自衛隊のF86とこの陸上自衛隊のメーサー車、何度怪獣に破壊されても健気に立ち向かう人類の代表です。



 こういった資料がたくさんあるほか、円谷監督の人物像や取り組んだ作品、そしてアーカイブセンターで撮影された特撮映画の一部が公開上映されています。
 撮影に関しては、こちらはスマホでなければいけないという制限もありません。



 見どころはあらためてこのミュージアムのために制作されたジオラマや模型の数々でしょう。製作者の名前こそわかりませんが、かなりの兵(つわもの)と推測します。

 

 「浜松ジオラマグランプリ」に出したら、間違いなくグランプリ受賞候補になるに違いない。

 

 これまで見たゴジラの中では、間違いなくいちばん凶暴に見える造形です。こちらも必見の作品です。
 こちら円谷英二ミュージアムは市の中心にあって交通の便も良いです。しかもこちらも入館料は無料、お近くにお越しの際にはぜひどうぞ。おすすめします。



10:40
 ここ須賀川には全国の牡丹園で唯一の国指定名勝である須賀川牡丹園があり、また最近では円谷監督の出身地であり「特撮関連」の施設が全国に名を知られるようになりました。
 一方で須賀川は古くから栄えていた地域で、平安時代以降は戦略的な要衝でもありました。

 

 市街地ではやはり須賀川城址には行っておきたいところです。
 須賀川城址は、鎌倉から足利将軍家へと権力が移ったのち、陸奥統治強化のために、もともとは鎌倉幕府の御家人であった二階堂氏が築城したものとされます。しかしその後は
伊達政宗により攻め落とされ、城は伊達氏配下の武将によって引き継いだものの、江戸時代の初めに廃城となってしまいます。

 そして本丸跡には二階堂氏を祀る「二階堂神社」が建てられた。周辺にはかすかな遺構はあるものの、須賀川の市街地を歩いても、400年の時を経た今、ここにお城があったとは
気づかないかもしれません。
 ただこちらの二階堂神社、社殿こそとても小さいのですが、毎年11月には「日本三大火祭り」と称される「松明あかし」が行われ、たいそう賑わうそうです。

 

 こちらはひときわ濃い緑に覆われた「神炊館神社」です。須賀川城主であった二階堂為氏が信州諏訪神を合祀して、1598年に現在の諏訪町に遷宮したと伝えられます。
 400年を超える鎮守の杜は、とても市街地にあるとは思えないぐらいに深いです。
 江戸時代になると朝廷より「諏訪大明神」として「正一位」の位を授かり、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の途中、当神社を参拝したとも伝えられます。

 

 神社だからお守りもある。
 ウルトラマンのキャラとの新旧合体、須賀川のお土産は絶対にこれです。







 

11:10
 実は須賀川を訪れるのは2回目で、10年ぐらい前の印象に比べると街自体が明るくすっきりと変わった印象がある。
 そろそろお昼ということで、市役所近くの食堂にお邪魔しました。こちら「かまや食堂」は人気店のようで、この日は行列こそなかったものの、ひっきりなしにお客様が訪れる感じでした。

 初めてのお店では、メニューの最初にあるものを注文するのが一つのパターンではあるけれど、この日はとても暑かったので「ごまだれつけ麺」をオーダーしました。
(1200円 麺は最初から大盛り)
 きりきりに冷やされた麺の食感が絶妙、スープがまた抜群でかすかな酸味が食欲を増す。一口飲んでみたけどおいしくて、つい全部飲んでしまいそうになった。
 他のお客様はやはりメニュートップの「中華そば」(900円)を注文している人が多かった。こちらはまた次回ということにしたいと思います。







 こちらは須賀川市役所です。2011年3月11日の東日本大震災により、旧庁舎は倒壊は免れたものの解体を余儀なくされ、最近になって建て替えられた。(2017年再建)
 震災というと、太平洋に面したところでの被害がもちろん大きかったのですが、この須賀川においては局地的に震度が大きく、最大で震度6強であったという。
(内陸部ではいちばん被害が大きい)
 きっと10年前に訪れたときには、まだまだ復興もなかばだったのだと思う。その頃は確か須賀川特撮アーカイブセンター、円谷英二ミュージアムもなかった。



 そして須賀川市役所新庁舎の入口には「ウルトラの父」がどんと仁王立ちしていて、その下には「M78星雲」とは姉妹都市であることを示す記念碑が誇らしげに置かれています。
 姉妹都市提携が2013年、そして市内にウルトラマンのヒーローたちが置かれ始めたのが2015年、復興とともにウルトラの街として再生を続けているということでしょう。

 こういうのを真面目に大人がやっていることが素晴らしい。
 心の支えや、地域の誇りってとっても大切なことだから。






 市庁舎には「ウルトラフロア」という展望台があって、ここからは世界で唯一、ウルトラの父の目線で市内を見渡せるという。 (ここも入館料は無料です)



 あともう一つ、1964年の東京オリンピックで銅メダリストとなった円谷幸吉も、この須賀川が出身地です。一躍ヒーローになった円谷幸吉ですが、その後は故障もあって悲しい
生涯を終えることになる。
 市内を流れる釈迦堂川沿いには彼のメモリアルホールがあります。




2025.08.13 追記

 「MOZU ミニチュア展」を見るために須賀川まで行ったのだけど、そのすぐ近くに「円谷幸吉メモリアルホール」があるので、こちらにもお邪魔してみました。
 須賀川出身の円谷さんというと、特撮の円谷英二監督、そして東京オリンピックで活躍した円谷幸吉選手の二人の名が、間違いなくあげられると思う。



 このメモリアルホールは須賀川市営の体育館に並置されていて、入館は無料です。
 その壁面には1964年の東京オリンピックのマラソン競技で走る背番号77の姿がある。



 彼は高校卒業後に自演隊に入隊し、体育学校で指導を受けるようになると、めきめきと頭角を現す。長距離種目での国際大会優勝や世界新記録を出すなど、一躍オリンピック候補
として名乗りを上げた。
 資料館にはその栄光の記録や盟友 君原健二氏との関りなど、日本長距離界の一時代を築いた彼の歴史が展示されてます。

 

 その奥には東京オリンピックでの雄姿、そして着用していたユニフォームやシューズなどが展示されています。

 

 もちろん東京オリンピックで得た銅メダルも誇らしげに展示されています。

 東京オリンピックでは水泳競技や柔道をはじめとして、数々の日本選手がメダルを獲得したのだけど、陸上競技は不振で最終日までメダル数は0であった。もうマラソンは
陸上競技界にとって最後の砦といってもよい状態だった。

 結果はエチオピアのアベベ選手が独走状態で金メダル。そして二人目に国立競技場に入ってきたのが円谷幸吉選手で、競技場は驚きと大声援で沸いた。ただすぐそのあとに
入ってきたイギリスのヒートリー選手に最後の最後で抜かれて、3位でゴール。
 しかし東京オリンピックのエンディングにふさわしいその戦いに日本中が沸いた。



 円谷幸吉選手が色紙にサインを求められたとき、必ず「忍耐」の文字が書き添えられた。
 たゆまぬ地道な努力を続ける、それが彼の生き方であったのだと思う。

 東京オリンピックの後、彼は一躍名の知られた存在になり、次のメキシコオリンピックでのさらなる活躍が期待された。しかしその後は故障が続き、満足に走れない日が続いたという。



 そして自ら命を絶つ。享年27歳であった。
 メモリアルホールには自筆の遺書も展示されています。

 「父上様、母上様、三日とろろ美味しゅうございました・・・」で始まるその遺書には、疲れ果てて走れなくなった自らの心情が述べられていて、心が痛みます。



 誠実で真面目だったのだろうと思う。
 そして銅メダルがちょっとだけ重かったのかもしれない。そう思いました。

 もう東京オリンピックから60年以上が過ぎて、円谷幸吉の名を知らない人の方が多くなってしまったとは思うけど、日本中に感動を与えたランナーがいたってことは、紛れもない
事実です。

 合掌



2025.06
camera:Canon Powershot G9X mk.2 ほか / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



サイトのトップページにとびます