情景のなかの人形たち 9+
2025.07.25
3月に瀬戸屋敷で開催した個展「情景のなかの人形たち 9+」}のイベントレポートです。少々トラブルがあって、今回ようやくUPすることができました。
ただ内容自体は問題なく、評判も上々だったと思います。
<二ヶ月前>
自分自身の個展「情景のなかの人形たち 9+」開催まで2ヶ月を切るところまできた。
準備の方も、今月からいよいよ本格的に取り組む予定です。ついては何をすればよいのかということなのですが、作品の方は今現在取り組んでいるもの
までのなかから選ぶとして、会場の方もよくよく見ておく必要がある。 展示する作品を取り巻く環境、とりわけ光の具合については把握しておかないと良い
展示はできません。

こちらが会場となる「瀬戸屋敷」です。こちらは江戸時代に建てられた築300年の古民家を移築した開成町の施設で、様々なイベントや体験学習などが
行われるところです。特に「ひな祭り」や「あじさい祭り」といったイベントではメイン会場の一つとなって県内外からたくさんの人が訪れる。
さて、ここにやってくるまでの間にチェックしたことは搬入日の経路です。自家用車で極力平坦な道を選んで移動するのですが、その距離22km、所要時間
は42分でした。細かなことだけど知っておきたいポイントです。

瀬戸屋敷は江戸時代にこの地の名主だった瀬戸家のお屋敷で、茅葺であることはもちろん、水車や土蔵、囲炉裏、井戸など、昔の農家の特徴を残す貴重な
存在です。(イベントが入っていなければ、無料で自由に見学ができます)
また名主ということで家族の出入りする土間や庭だけでなく、お客様用の玄関も別につくられています。そして今回お借りするのはこの玄関とその左右の部屋
です。(ちょうど画像に写っているのがその範囲)
いちばん右側の「広間」、18畳あってすべてが板の間になっている。いちばん奥まったところはかなり暗い。
従ってここには「暗いところに向く」あるいは「スポットライトが効果的」な作品を置くことになる。あといろいろとライティングには気を遣わないといけない感じだな。

<一ヶ月前>
制作途中の作品作りを急いでいます。展示可能なものがはっきりしないと、展示会場のレイアウトも決まらないからね。

こちらは最近リメイクの完了した remi という創作球体関節人形です。
ジオラマという形式では展示まで時間がないので難しい。ということで演劇などで見られるちょっとしたステージを作ってみました。

こちらは角材とイグサマットでベースを作り、他のドールスタンドを移植したもの。背景の暖簾はガシャポンの景品です。

こちらは和服に着替えた ayana という人形です。
ところがこれに合う草履がなくては、ちょっと格好がつかない。

ということでこちらもソックスを加工して、草履に見せかけることにした。

あとは一つ一つ点検し、破損があれば修理する。
そして保管するのは専用の箱、体積を最小限にして、安全に運ぶためです。
<2週間前>
人形やフィギュアをつくって、それを主人公にした情景を制作している人は、それなりにいるとは思うのですが、自分のように個展まで開催しちゃうという人は
ほとんど見かけません。
昔はイベントで販売もしていたけど、創作人形そのものが下火になって、自分の制作物が押し入れに入れたままの状態がしばらく続いた。こういう状況は
本当につまらないし、お人形たちも可愛そう。
そこで試しに個展という形で公開したら、けっこうこれがおもしろい。
今回で言えば会場面積70㎡のすべてを、自分の思い描いた世界を再現する空間として使うことができるわけで、これはイベントの時に与えられる90cm×90cm
のスペースとはけた違いの充足感があります。

こちらは最近になってリメイクが完了した remi という人形の以前の姿です。左がリメイク前、右はリメイク後です。
左画像の背景はGIMPというフリーのアプリで合成・加工してつくっています。こういう画像は結構簡単で、古民家の写真と人形の画像さえあれば、30分ぐらいでつくる
ことができます。

背景として使った画像が残っていたので、今度はリメイク後の姿を張り付けてみました。
11年の時を経て、人形も成長したけど、自分自身も少しずつ見方考え方が変わってきている感じがしました。

そしてなんでこういう画像を作ったかというと個展PRのためのDMをつくるためです。
裏面はこちらの内容です。コンパクトに個展の開催期間や内容を記入し、自分のブログやHPのアドレスものせておく。でも今だったらQRコードが一番良いでしょうね。
そして昨日、個展会場の瀬戸屋敷にこのDMを持参しました。受付に置いてもらってPRできるということだったので。こういう機会は利用しない手はない、作品がどんなに
良くても、PRしなくちゃ気づいてもらえない。
またたとえ会場に足を運んでもらえなくても、このDMを手にした方のなかには、ブログやHPの読者になってもらえる方がいるかもしれない。
瀬戸屋敷では恒例の「ひなまつり」が3月上旬にかけて開催されるということで、この日は雛人形などの飾り付けで忙しい様子でした。
こちらも結構見応えのある内容で、自分も2回ほど見学に行ったことがあります。人形が好きなら結構楽しいと思います。
<1週間前>
おおむね一ヶ月前には、展示できそうな作品の見当がついて、個展会場の大まかなイメージが出来上がります。今回は築300年の古民家での開催ということで
「和」のイメージで展開してゆきます。
作品数は全部で37点、全てが情景展示になります。いつもは写真展示もあるのだけど、場所的な関係から数点のパネル展示のみで、今回は基本的になしとなります。

さて個展開催まで一ヵ月となった時点で最初にやらなくてはいけないのは、期間や金銭的なものなど個展に関して確定したこと、開催までに必要な準備、展示作品
そのものなどを、いったん書き出しておくことです。そうすればそれがそのまま確認資料やチェックリストになります。

そしてそれに並行して行うのは、所有している作品の中から、今回のテーマやイメージに合う作品を選ぶという作業です。
とはいってもすべての作品を引っ張り出して比較するのは大変なので、上の画像にあるようにインデックスプリントの中から選びます。インデックスプリントはWindows
でも標準で可能ですが、プリンターのメーカーから出ているアプリの方が使いやすいです。
それから画像のファイル名は自分の場合、<HA005_シュナの旅_2308_2330>などと少し長くしています。意味としては<整理番号+名前+制作年月+大きさ>です。
とくに最後の大きさは会場レイアウトの時に絶対必要で、たとえば2330とあれば、幅23cm、奥行き30cmということで、どういう大きさの展示台が必要なのか、すぐに分かり
ます。
そしてこれが確定したら、作品の点検と修復作業を行う。
いまこれを急ぎでやっているのだけど、「こうしたらもっと良くなる」みたいなアイディアが生まれたり、創作球体関節人形の展示の場合には、背景とのマッチングを変更
することもあります。

3つ目にやることは会場配置です。これまではテーマに沿って、作品を並べるという作業だったのですが、ここ最近は照明や光線について配慮するようになってきました。
良い作品でも照明が良くないと輝かない。
上の画像がその配置図の一部(上面図、18畳の正方形)ですが、太陽光線の向きを赤い矢印で示しています。光はほぼ右側から入ってくる。左半分に大きめの作品を
並べる予定なのですが、おそらくは光量不足になる。
ということで、ここには大容量のモバイルバッテリーとLED3セットが必要だと結論付けました。(オレンジ色の矢印) もちろんチェックリストもこの部分を修正します。
こういうところは美術館のちゃんとした展覧会なら、職員の方が設置・調整してくれるのでしょうが、完全にプライベートな催しだと全て自分でやらなくちゃいけない。
こういうことは事前に会場の下見をして、よく観察しておくこかないと気付かないことだと思います。

配置図をつくるということは、個展のシミュレーションを行うことだと思う。
そこで得られたイメージから必要な会場案内の作成を行います。入口と出口には、簡便なあいさつ文のを掲げ、必要に応じて順路の矢印などを置く。
更に新たにつくった作品や内容に変更した作品については、キャプションを作らなくてはいけない。
絵画などメジャーな分野であれば、作品そのものだけで良いかもしれませんが、ジオラマや創作人形はあまり一般的ではないので、解説しないといけない部分は多々
あります。さもないと「この人形はどこで売ってますか?」「私がつくりました」「えー、噓でしょ」みたいなことになります。
キャプションをつける作業が終わると、人の流れなどをイメージしながら、期間中の待機場所(椅子)を決め、必要最低限の案内方法などのシミュレーションします。
これって結構大事で、来場者の反応はかなり違います。そしてこれは開催期間中にも微修正してゆきます。
やっぱり最後の一週間がいちばん忙しいかも。今週末は予定も入っているし・・・。 「もっと余裕もってやれば?」
そんな声がどこからか聞こえてくるけど、けっこうこのギリギリ感は好きです。
<3日前>
この段階は最終点検と梱包作業が中心で、さすがに「まだ造ってます」では遅すぎる。

先日完成した「蝶の妖精」という作品です。高さ60cmあると、保存箱は基本的に側面から取り出す形式になります。
でもそうすると全体が重くなるし、容積もかさばる。移動や保存のことを考えると、できるだけ軽く小さくしたい。

実は最初から分割式にしてあって、左側の本体と右側のスタンド部分は分割できます。
ですがこのままだと、本体部分が転倒してしまう可能性が高い。そこで画像の中央にあるような、移動時用のコンパクトなスタンドをつくってみた。この3つを組み
合わせると、左画像にあるように高さ30cmのサイズに収まり、且つベルトで3つをしっかりと結びつけることができるようになります。
あとは作品がぴったりと収まるような箱をつくって、ベースがすっぽりと埋まるような発泡スチロールの枠を底面に貼り付けたら保存箱は完成です。 )
作品を構想するとき、良い作品をつくろうと思うのは当たり前だけど、保存や移動への配慮みたいなものが、頭の隅っこにあると良いと思う。
笑い話ですが、部屋の中で大きな作品を作っていて、最後は部屋から出せなくなって、一旦分割せざるを得なくなったことがあります。

先日作った手桶と花、たとえ小さくてもデリケートなものは専用箱をつくります。
小さいものは、メール便で使われるような固くて薄い段ボールを使うのがベストです。こちらも手桶がぴったり収まるように穴を開けた発泡スチロールを底面に
貼り付けました。
多分これで破損はないはず。
最後、作品というのは埃をかぶらない、紫外線に当たらないところに置いてあげないといけない。だから自分としては保存箱まで作って、そこに作品を収めた
ところで本当の完成だと思っています。

そしてすべての作品を専用箱に収め、これをリビングの一角に積み重ねる。
積み重ね方にもルールがあって、大きなもの重いものは下、そしてこれを114×90×122cmの範囲に積みます。これはマイカーの荷室と同じサイズで、要するに
積み込みのシミュレーションをしてるってことです。
幸いこういう感じで準備を進めて、大きなトラブルになったことは、これまでありません
<前日>
けっこう自分はぎりぎりが好きなので、いつも直前まで準備を続けるのですが、今回は最後の3日間は点検のみで済むように計画しました。
やはり個展前だとちょっとした興奮状態になっているわけで、冷静さを取り戻すためにも作業量は減らした方が良いでしょう。結果としてミスも少なくなります。
また緊急のトラブルに対応できる余裕も生まれます。
昨日の朝、ブログを書こうとして、PCのスイッチを入れたらモニターに何も映らない。PCのクラッシュは2回経験しているので、普段は2台のPCをOneDriveでリンク
させて使用しているのですが、どちらのPCでも結果は同じだった。
ということで故障したのはモニターだということが分かる。
簡単に書いているけど、もしPCが2台なければ、故障したのが本体なのかモニターなのか、すぐには分かりません。壊れたら困るものは予備を持っていた方が絶対
に良いです。

下の部屋から出先で使うノートPCを持ってきて作業をします。でも画面が小さいので画像編集などは本当にやりにくい。自分にとってノートPCは永遠にメインマシン
とはならないだろうな。

近くの電気店が開くのを待って、早速モニターを購入、32,800円でした。
PCモニターはサイズや性能などにかなりの幅があって、いちばんポピュラーなのは24インチのFHD(1920×1080)あたりで、15,000円ぐらいからあったりする。でもこれだと
細部が見えづらく、フォルダーをいくつも開くような使い方はやりづらい。
最低限と言えるのはWQHD(2560×1440)、細かな分見えづらくなるので、やはり27インチはほしい。これまでつかっていたPCもこのタイプでした。
そして今回買ったのはUHD(3840×2160)で、いわゆる4Kと呼ばれるもの。やっぱり高詳細で使いやすい。何たって画素数はポピュラーなものの4倍もある。

もう作品の方はいじらないことにして、この3日間で「あった方が良いな」というレベルのものに手を付けた。すでにPR用のDMはつくってありますが、追加で名刺などつくってみた。
これも過去の経験上、あった方が良いなと思ったもの。台紙は100均で売ってた元林の「テンプレートBANK」というやつです。
個展をやると、搬入搬出の日は忙しいのだけど、お昼時とか天気の悪い日はけっこう暇になって、1時間ぐらい何もすることがないって時もある。
スマホいじってゲームするでも良いのですが、前向きに行動するなら、これからの作品作りのアイディアを練ったり、目の前の作品のリメイクを考えたりするのが良いでしょう。
ということでコンパクトなスケッチブックなどを持ってゆく。
あとは、スマホやカメラあたりは当然のこととして、板の間が冷たいに違いないと、あったかいソックスなどを準備する。

会場のなかにはけっこう暗くなってしまう場所があるので、LEDとモバイルバッテリーのセットが最低3つ必要になります。用意したのは予備を含めて、この4セットと
充電器2台です。
モバイルバッテリーは20000mAhのものが3つと4400mAhが1つ。LEDは1.3Wのものが3つと1Wのものが1つです。
たとえば1Wというと、5Vの条件下で使用した場合に200mAの電流が流れる。だから20000mAhのモバイルバッテリーならば、理論上は100h点灯させることができる。
でも実際には気温が低かったり、劣化がすすんでしまったりということもあって、良い条件で点灯し続けるのは50hぐらいと考えて良いかと思う。
これをメインで使う20000mAhバッテリーと1.3WのLEDに当てはめると33hほど、3日間は持つ計算だけど、念のためにもう一個予備を持っていくという感じです。

上は球体関節人形を壁面に埋め込んだStratum(地層)という作品です。(1/3スケール90cm×60cm)
この画像自体は自分の部屋でちゃんと照明を整えて撮影しました。部屋全体を照らす天井のライトと追加のスポットライト1個という感じかな。今回はこの作品をベストな
光で演出できるかどうかも一つのポイントです。照明はもちろん、背景にも少し手を加えてみました。

あとは近所の神社にお参りに行った。
明日はまた雪が降るんだって。お天気のことは、神様にお願いするしかないかな。
<1日目>
自分自身の個展「情景のなかの人形たち 9+ 」が始まりました。
会場の瀬戸屋敷には12:00前に到着して荷物を下し、あとはコンビニでお昼を買って「春めき桜」を眺めながら食べようかと思っていた。

ところが行ってみたら、まだほとんど咲いていなかった。咲いていたのは梅の花。
今年の桜の開花は全体に遅れているみたいですね。満開まではあと10日ぐらいかかるかもしれない。

一方で西の方を見ると、箱根の山が白く煙っている。山火事であるはずはないので、花粉であるに違いない。自分は軽度の花粉症ですが、今年の花粉はけっこう
手ごわそうです。

13:00に設営を開始して、形が整ったのは15:00少し前、予定よりちょっと時間がかかった感じです。
動線を考えて、予定されたレイアウトを少し変更する必要はあったけど、ほぼイメージ通りの会場ができあがりました。

こうやってみると、ジオラマって和室に置いても、全く違和感なく馴染みます。机が低い分、身近に感じられて「ジオラマ」というよりは「情景」という呼び方の方が相応しい感じがします。

蝶の妖精
開催場所が築300年の古民家ということで、床の間に似合う作品を制作してみました。
1/24スケールのフィギュアに羽をつけて蝶の妖精に見立てています。

青い空
晩秋の晴れた日、外で本を読んでいたら、イロハモミジの葉っぱが落ちてきて、それがそのまま本の栞になったという作品です。こちらは1/3スケールのオリジナル
球体関節人形を主役にした大きな情景です。
難しいのがやっぱり照明でした。大きな茅葺き屋根に室内照明が一つという感じで、全体的に暗くて、外から入ってくる光も時間帯によって変わる。
結果として照明の位置をこまめに変えながら展示することになりました。

stratum
オリジナル球体関節人形を地層内に埋め込んだ作品で、今回背景部分を再調整しています。
この作品については、何故か不思議なぐらいにこの部屋の暗い照明がマッチしていて、あらためて照明によって作品自体の完成度も変わって見えるんだということを認識
しました。
初日、しかも2時間半ほどの展示時間ではありましたが、それなりの反応もあって楽しかったです。
明日は曇りのち夕方から雪なんだそうです。お客さんが来るかどうかちょっと心配です。障子が解放された古民家に一日いたら、とっても寒いだろうなあ。とりあえずあったかい
スリッパを持ってゆくことにします。
<2日目>
今日はやっぱり天気が悪いなと思っていたら、途中からぽつぽつと降りだしてきた。

昨日は晴れて風の強い日だったので、箱根の山は花粉で霞んでいたけど、今日は雪で白く霞んでいる。

会場の瀬戸屋敷は開け放った空間で運営するのが基本だそうで、この日の展示会場は室温5℃以下でした。着込んできて、手袋までしたけど、とっても寒い。
もちろん外光も弱くて暗い。
こんな日に人が来るのかな? 駅近くならともかく、ここはバス+徒歩15分、しかも自家用車があっても外出したくないような天気です。
でも何だか良く分からないけど、40名近くの方々が訪れて作品を見て行かれた。ありがたいことです。今日の景色にぴったりなのはこちらの作品ですね。

next evolution
こちらは矢沢俊吾氏の next evolution というガレージキットを主役にした作品です。フィギュアを花の一つに見立て、生け花のようにまとめた作品です。
この日は暗い床の間に白く浮かび上がって見え方が昨日と違う。少し神秘的にさえ見える。(1/12スケール)

初雪の遠藤原
雪の日ということで、こちらの作品をピックアップしました。
遠藤原というのは平塚市の北にある丘陵地帯で、まるで信州に行ったみたいに広大な畑がひろがっているところです。この作品は明治から昭和初期あたりの時代を
イメージして、嫁入りの風景を再現したものです。雪の日の嫁入り、集落の外れまでやってきたところで、花嫁はそこに並ぶお地蔵様に挨拶をしてゆく。
ちなみに地区には嫁入りにまつわる悲しい出来事なども言い伝えられています。(1/72スケール)


賽の河原
何年か前に恐山を訪れたことがありますが、あの空間のインパクトはすごかった。
もちろん地面は乾燥していて水など流れているはずもないのだけれど、何かが激しい勢いで流れ過ぎていったような圧力を感じて、まさに現世と死後の世界の
境界線そのものでした。(1/6スケール)
今日は外光の少なさ、暖色系の暗い蛍光灯、冷え切った空気、そういったものが作品を引き立たせているかもしれないと思いました。
お出かけには最低だけど、この日この場所での鑑賞条件として、むしろ良かったかもしれません。


森の神社
こちらもとある青森の神社のイメージで制作しました。鳥居というのは人間世界と神の世界の境界線です。
ぽっかりと森の中に開いた空間に鳥居があって、一瞬ここに何かが降りてきたような感じがして、空気が変わった感じがしました。
築300年の古民家というのは、作品を包み込むね。
間違いなく神秘性が増す。
<3日目(最終日)>
さて自分自身の個展「情景のなかの人形たち 9+」も最終日となりました。
2日半という会期はこれまでのなかでも最短で、もうあっという間でした。

3日目にして、やっと春らしい感じのお天気になりました。箱根の山々には昨日の雪が残っている。
さて今日のレポートはいくつか持って行った過去作品のご紹介からです。

ティラノサウルス
中生代末期の地表を再現した、とある恐竜博物館の展示室を再現してみました。
スケールは1/24、但しティラノサウルスの方は成体としてはやや小さめ。ジオラマサイズは24cm×30cm×23cmです。植物などは素材は100均で入手したもの。
湿った地面はモデリングペースト、アクリル絵の具、浴びっこサンド、ジオラマ用のパウダー、さざ波などで作りあげています。背景は自分の持ち得ている技術を存分に
発揮したつもりです。 「こういうシーンて絶対にあるよね。」 そう言い切れる情景作品になったと思います。

静岡おでん
設定としては、どこかの駅前の広場とか、道の駅などで「静岡おでん」と「静岡の銘酒」のキャンペーンにやってきたという感じです。このジオラマの大きさは19cm×14cm×15cm
の手のひらサイズです。
日本酒カウンターに掲げられた暖簾には、静岡にある27の酒蔵の代表銘柄のラベルが印刷されています。
静岡というと、近年は酒どころとしての評価は高い。それも静岡酵母によるところが大きいと言われ、毎年開催される全国新酒鑑評会ではに、約半数の蔵が金賞を受けた年も
あるそうです。
そして静岡はプラモデルも名産ということで、このジオラマには、おでん、お酒、プラモの3つが取り込まれているということになります。

マリリンモンロー
こちらは別々に販売されていたヘッドとボディを組み合わせたものです。
ヘッドの方は外れを引いてしまったのか、全く似ていなかった。それどころか可哀そうなぐらい瘦せこけた頬をしていました。そしてあまりの酷さに4年ぐらい放置して
いたのが事実です。(1/6スケール)
そしてこれを4年前にダメもとでリメイクして、ここまでたどり着いた。
苦労はしたけど、ちょっとだけ自身がついた作品でもあります。

霧雨
畳、暖簾、傘、そして彼女の着ている薄手の和服。 そこから連想するものは伝統的な商家の立ち並ぶ街並み、あるいは旧宿場町。 季節は梅雨、あるいは初夏の頃。
そういうイメージで背景を整えてみました。(1/3スケール)
モデルドールはオリジナル球体関節人形の remi です。(石塑粘土 57cm 2010 )

春休み
少々アレンジしていますが、このバス停自体は山北町にあります。周辺には道祖神や水神、石仏、様々な石碑が多く見られるところで、その昔は酒匂川の氾濫で
たくさんの人が命を落とした場所だということです。
春休みになって、仲の良かったクラスメートたちとこれから遊びに出かける。
今日は思い出作りの日です。
でも、いつまでも友達であることは変わらない。
モデルドールはオリジナル球体関節人形の nanami です。(石塑粘土 54cm 2013)
ジオラマの方はもちろん、こういったお人形たちにも目を留めてゆかれる方も多かった。 「すごいですね。これってどこで売ってるんですか?」
またこの言葉を聞いてしまった。
手作り人形は、もはや普通の着せ替え人形としてのマーケットはなくなって、芸術的な価値のあるもの、あるいは著名人の創作人形が、たまに紹介されるだけの
時代になってしまった。
最早、西暦2000年頃の創作人形のブームや、1回のドールイベントに数万人が押し寄せたことなどは遠い昔の話になってしまいました。
「もう一度そういう時代は来るんでしょうかね?」
これについて自分は否定的です。以前は1世代30年で再流行があるかもしれないと、うすうす期待していたこともありましたが、時代は根本的に変わってきていると思う。
もうすでに、出来の良いレジンキャストドールが1/3スケールでも1万円台で入手できる時代になっている。高価で扱いの難しい、手作りの着せ替え人形を選ぶ人間が、
まだどれだけいるのか? その人形の個性を気に入った、ごくごく一部の人間に限られると思う。
そしてこれからは、よくできた人形を3Dスキャンしてデータ化し、PCで好きなボディラインに編集して3Dプリントする時代に入ってゆく。「少し足を長くして」「もう少し微笑んで
いる感じに」こういったオーダーもAIによって自動化されるに違いない。
近い将来、オリジナルドールとは、そういうものを指す言葉になっている可能性が高いのではないでしょうか。
それでも自分のつくる人形の場合には、独自の透明感のあるリアルな肌の仕上げや、メイクの微調整、そして何より背景との組み合わせという部分で、まだまだ存在する
ことの意義を持っていると思います。
今やっていることの可能性を信じています。
だから個展も続けます。

すべてが終わってご近所の居酒屋で反省会です。
この日もお酒は間違いなくおいしかった。
<その後>
いつもだったら個展開催後、このブログとHPにそのまとめを書いておしまいなのですが、今回はちょっとトラブルがあって、まとめをせずに4ヶ月も引きずってしまった。
発端は3.11(火)に瀬戸屋敷の管理者から連絡があったことです。簡単に言えば、展示内容に問題があったので、今後利用する場合にはいくつかの点について改めて
ほしいという、利用の制限に関するものでした。
具体的には3つの点の修正を求められました。
「大変に申し上げづらいのですが」という前置きの後、まずは「見学者のなかに人形が怖いという方がおられたので、今後は人形の展示を控えてほしい。」ということ。
人形を怖いという方は確かにいますが、これがダメというのは納得がゆかない。公私とわず全国のどこのギャラリーだって、人形展示を禁止しているところなどないはず。
しかも前週まで開成町の主催する「ひな祭り」がここで開催され、何百というお人形が並んでいた。なぜ雛人形は良くて創作人形がダメなのか、その理由が全く分からない。
もしそれが伝統的な人形でないからというのであれば、まさにこれは差別的な扱いです。
このあと「自分自身は全く問題がないと思っているのですが、こういうことを申し上げざるを得なくなりました。」という言葉の付け加えがありました。額面通りに受け取れば、
これは個人の意見でなく、何かの決定事項なんだろうなと、自分は推測した。
2つ目に「裸の人形があった」これは事実のみの指摘でしたが、おそらくはこちらも控えて下さいということだと思う。こういうことを言われるのも初めてです。これも芸術表現の
一つで、決して性描写してはいないのだけど。
3つ目は「洋の表現を避けて、和の雰囲気でまとめてほしい」
すごいよこれ、管理者の方でつくるべきものを指示してるんだもの。もしこれが自分が管理者から報酬をもらって作品を作り、展示するのであれば別だけど、自分は利用料を
払っている、これを作れって言われる筋合いはない。
何か上から目線で、利用させてやってるんだからいうこと聞け、みたいに感じ取れて本当に不愉快でした。自分は展示室を自分の思うイメージでまとめたいのだが、表現の
自由など、はなから考えてくれないらしい。
そしてで最後に「できるなら小さいフィギュアの登場するジオラマだけにしてほしい。」とも言っていた。
上にあげた3つの問題点の指摘は、個展が終了して2日後の電話連絡でした。もちろん瀬戸屋敷の利用規約の方はきちんと読んで守っている。はっきり言って管理者の問題点
の指摘は、規約を越えた内容で正当とは思えない。
また開催にあたっては、内容が「人形を主役にしたジオラマ」である旨を担当者に直接説明し、ネット上での連絡もしている。
更に開催期間中は、問題点を指摘した方も含めて瀬戸屋敷で働いている方々にもご覧いただいた。その際、展示内容についての問題点の指摘は全くいただきませんでした。
なぜそれが一転して「人形展示はできません」なのか、どうして利用制限の連絡をいただくことになったのか、その経緯が全く分からなかった。
一晩おいて冷静になって考えた。
管理者の考えは間違っている、これは戦うしかない。きっとここを利用して嫌な思いをした方は他にもいるに違いない。明らかな表現の自由の侵害、そして名誉棄損にもあたる。
何らかの決定事項ということなので、瀬戸屋敷を管理する開成町の産業振興課に事態を伝え、公式文書としての回答を求めることにしました。
内容は不当な扱いをしないことの要望を中心にして、そこに職員の研修充実や、施設利用と使用料金等の要望を加えたものです。
2025.03.12
開成町産業振興課御中
瀬戸屋敷の利用に関して
3月7日より9日までの期間に、自分自身の個展を開催いたしました。内容としては自分の造った人形やフィギュア等を主役にしてジオラマ形式で展示するというもので、対象は
近隣の風景だったり、自分のイメージした架空の世界であったりします。
会期終了後の11日に瀬戸屋敷を管理する方から電話連絡があり、今後の利用について制限を加えたい旨のお話がありました。 その内容に承服しがたい点や疑問などが
ございますので、整理してお伝えします。
1 まずは連絡いただいた内容をお伝えします。
「人形が怖いという方がおられたので、その展示を控えてほしい。」
人形を怖いという方は確かに居られますが、自分の造る人形は決してグロテスクなものでなく、市販の人形と同等以上の美しい描写を目指しています。
しかも前週までここでは「ひな祭り」が開催され、何百というお人形が並んでいたはずです。その会場の利用で、このようなコメントをいただくとは思いもしませんでした。
もしそれが伝統的な人形でなく、新しい創作人形であるからというのであれば、まさにそれは差別的な扱いだと思います。
「裸の人形があった」
これは事実で2作品が該当します。ただこれも芸術表現の一つで、かつまた性描写しているものではありません。またこれらの作品展示で他の公共施設からクレームを
受けたことはありません。
「洋の表現を避けて、和の雰囲気でまとめてほしい」
自分としては和洋どちらの作品もつくります。良いものを追求しています。このコメントについては個人の創作志向に関するもので、はなはだ不愉快です。
しかも瀬戸屋敷に併設しているカフェでは抹茶でなくコーヒーも飲めるし、ソフトクリームもある。矛盾だらけで何を根拠にしたものなのか理解に苦しみます。
以上、利用制限の連絡をいただきましたが、表現の自由を尊重する姿勢などは全く感じられず、その根拠も乏しく、上から目線で差別的ですらあります。この点について
強く抗議し、訂正ならびに謝罪を要求します。
2 次は利用規定等についてです。
上記3項目については利用規約に触れられていないことで、11日の電話連絡で初めて耳にしました。
利用規定についてはきちんと熟読しており。今回の連絡は規約外の内容で心外です。
また開催にあたっては、内容が「人形を主役にしたジオラマ」である旨を担当者に直接説明し、ネット上での連絡もしております。
更に開催期間中は、制限のお電話をいただいた方も含めて職員の方々にも会場にお越しいただき、「すごいですね」「懐かしい」「素晴らしい」などのコメントをいただき、
写真を多数撮ってゆかれる方もいました。 しかもその際、展示内容についての問題点の指摘は全くいただきませんでした。
一般の方々のなかには「今日この日、ここに来て本当に良かったです」と感動の言葉をいただいたこともありました。
一般的には利用規定に反しない限り、よほどのことがなければ展示内容に関して管理者が制限を加えることはしません。それは検閲行為にあたるからです。
なぜそれが一転して、利用制限の連絡をいただくことになったのか、その経緯を知りたいと存じます。
そのうえで公共機関の利用制限を加えるということであれば、正式にその根拠と内容を文書として通知いただきたく存じます。
3 運営を特定の会社に委託していることは存じていますが、瀬戸屋敷は公的な存在であるはずで、それがゆえに運営に関しては、恣意的なものでなく公務員と同等の
規範意識を持って行うべきと考えます。
そのため開成町としてどのような研修を行っているのか、または委託した会社にどのような研修を要請しているのかをお聞かせください。
4 次は利用の予約に関する要望です。
webまたは電話による予約になっていますが、その決定の過程が不鮮明です。団体旅行の方が多く訪れますが、そちらが優先されているのではないかと疑いの気持ち
を持ちたくなります。
ぜひ予約方法を改善していただき、公平性を確保していただきたいと思います。
5 利用料金についてです。今回は2スペースで1日2800円でしたが、4月からは2.5倍の7000円になります。67㎡の会場で7000円というのはかなりの高額で、たとえば平塚市
美術館ではその2.2倍の面積(148㎡)でも4000円でお借りできます。
利用料金については1時間のほかに1日単位の料金を設けるなどの改善を望みます。 以上、公文書としての回答を望みます。

10日ほどで回答文書が送られてきた。
回答者は開成町産業振興課長とあしがり郷瀬戸屋敷館長の連名でした。ただまず、ちょっと気に入らなかったのは、文書には文責者の氏名はなかったこと、関係者の名前もなく、
まるで匿名文書だった。
回答の内容としては、不快な思いをさせたことを謝罪し、今後の利用に関しても制限や条件を加えないことが明記されていて、こちらの主張が受け入れられたように読める文書
ではあった。
だが事実経過に大きな間違いがある。途中、このような記述がある。
「本件について、今後の瀬戸屋敷の利用について条件や制限を付する意向はなく、一般のお客様からご意見があったという事実を展示主催者である○○様にお伝えするため、
指定管理者より連絡させていただきました。」
文章全体として読んだとき、「人形が怖いという人がいた」それを管理者として伝えたいだけだったが、それがうまく伝わらなかった。そう言いたいらしい。
問題発言があったことには一切触れず、言い回しでごまかそうとしている。ずるい。
この文面で頷けって言われてもな。あんまりにも酷かったので、この部分については何度か連絡を入れて、文言の変更を要求した。
でも誠意ある回答などなかった。「管理者の連絡に制限や条件を付する意図はなかった。」という嘘の繰り返し、最後は「要望すらしていない。」と言い切った。
そして5月の後半になって、再び次のようなメールを送った。
(前略)
自分が指定管理者より伝えられた内容で、見学者の声と言えるのは「人形が怖いという方がおられた。」という一言のみです。そのあと指定管理者から伝えられた「(人形が怖い
という方がおられた)ので、今後は大きな人形の展示を控えてほしい。」「裸の人形があった」「洋の表現を避けて、和の雰囲気でまとめてほしい」「小さなフィギュアを使ったジオラマ
だけの展示にしていただけるとありがたい。」などの言葉は、とても具体的で管理者自らの意に沿うような展示にしてほしいという明確な意図がある。
(中略)
これについて前回の回答には、やはり「利用についての条件や制限ではなかった。」更には「要望でもなかった。」の記述がある。 「要望すらしていない」という言葉には、あきれる
ばかりてす。あれだけ明確に展示内容にコメントしておきながら、「あれは電話の向こうでの独り言だった」とでも言いたいのでしょうか。
管理者は明確に間違いを起こしたのが事実。電話連絡による発言は極めて不適切で、全面的な撤回を要望したいと考えます。
そして6/18日付けで発言の全面的な撤回を告げるメールが送られてきていた。
なお送信は開成町の町長直々のもので、明快に判断していただいたことに感謝したい。

青い空
自分は人形が苦手な人がいることは十分に理解しているし、更に言えば、自分のつくるような人形は、リアルであればあるほど「まるで生きているかのようで怖い。」
とコメントを残す人が増えるのが現実です。
世の中には釘の刺さった人形をつくる人もいるし、サルバドールダリのような気持ち悪い絵画を描く人もいる。でも見たくなければ目を背ければ良い。表現の自由の
一方で「見ない自由」や「立ち去る自由」が確保されていることで、世の中はで折り合いをつけている。見たくなければ見なくて済む、それが自然なかたちです。

next evolution
「裸の人形があった」これは内容や展示方法にもよる。性行為の描写は公共の場で避けるのは常識として、たとえば等身大のリアルな裸像を駅前に置いたら、
やっぱりまずいかもしれない。ちゃんと服を着せるか、何か手を加えて人そのものとは区別できるようにしないといけない。
たとえばブロンズ像ならば人と違う質感で青銅色だから、裸でも公園の真ん中にもおけるわけ。上の作品も縮小して演出を加えることで、床の間に飾ることができる
作品になっている。要するに作者として何を伝えたいかが問題になると自分は考えています。

Zirai Ryosan
こちらは「地雷系 量産型」女子2名が、白いお屋敷でお花見をしているというシンプルなジオラマです。桜の季節が近いということで展示しました。(1/24スケール)
「洋の表現を避けて和の雰囲気でまとめてほしい」
これについては、自分の作品の何が問題なのか全く分からない。これは絶対に許されない言葉だと思う。
瀬戸屋敷は公共の施設であるがゆえ、利用者の選別などは決して行ってはいけないはずです。管理者の意向に沿うように利用者を選別している、そうとられるような発言は
慎むべきでしょう。たとえそれが単なる感想であったとしてもです。
むしろ公共性や公平性というのであれば、こちらの方が問題として大きいかもしれない。
今回の個展は展示作品は少なかったけど、これまでの個展のなかでも成功した方だと思います。
会場にお越しいただいた方には「すごいですね」「懐かしい」「素晴らしい」などのコメントをいただき、なかには「今日この日、ここに来て本当に良かったです」と感動の言葉を
いただいたこともありました。
やって良かったな。そう思っていたところに例の突然の電話です。
でもこの件については自分もいろいろと反省するところはある。いくら「決定事項を伝える電話」であったとしても、あれだけ平然と臆することなく、言い切られてしまったのは事実で、
そもそも自分のような人間が、人形やフィギュアを主人公にした情景展示の個展をやったとしても、誰もがすぐに受け入れてくれるかというと、それはそれほど簡単なことではない。
たとえばジオラマを常設展示するギャラリーは浜松ジオラマファクトリーのみだし、人形を専門とする美術館は全国で20にも満たないと思う。作家も同様で情景師アラーキーや
山田卓司さんの名を知る人、人形で言えば吉田良さんや恋月姫さんを知る人は、100人いても一人いるかいないかというレベルなのではないでしょうか。
それだけマイナーな世界で、この2つをまとめて個展をやる人間など、もしかしたらこの国で自分一人かもしれないな、と常々思っています。
マイナーだということは、それを目にしたことのある人は少ないということ。
普通の人が作品を理解し、作者の伝えたいことを感じ取るのは難しいと言うことです。
現実に展示してある創作人形を指さして「これどこで売ってるんですか?」と聞かれたり、「粘土でできています」と説明しても手作りであることを信じてもらえないこともあった。
ジオラマにしても、中国製の安いキットがあって、1週間ぐらいで簡単に完成すると考えている人も多い。
話を少し変えると、吉田良さんの名前は知らなくても「リカちゃん」や「ジェニーちゃん」あたりはほとんどの人が知っている。創作人形を知らない人にとっては、人形とはそれが
すべてなんだと思う。
作品を並べてあっても全く無関心で素通りしてゆく人もいる。人は多様な考えを持つ存在だから、それはそれで全然かまわない。でも創作そのものに興味がないという人は
増えてきているように思う。
少し前までは町に必ず模型屋さんが1軒はあって、プラモは特に男の子の間では人気があった。けど今は本屋さんと同様、模型屋さんは町から姿を消し、子供たちは完成品を
求める。そして手に取ることのできるものから、今は少しずつバーチャルの世界に移行している。
自分の個展が絵画や版画、木彫、そういったよくあるものであれば、おそらく何のトラブルも起きない。
無名に近い自分がマイナーな世界でやっていること自体が、理解されない、あるいは誤解される遠因になっていることは間違いないと思う。
ならば知名度を上げることを考えれば良い。
そのために人気キャラクターや時流のテーマを扱うなども考えないではないけれど、残念ながらそれは自分のやりたいことではない。
プロを目指すなら、そうしなくてはいけないのだろうけど、自分が目指すのは一流のアマチュアで、お金はいらない。
さてトラブルの話ばかりでは、個展で何をやろうとしたのかわかんなくなっちゃうので、次は内容の話です。
今回は大きく3つのパートに分けて作品を展示してました。

腐海の尽きるところ
ナウシカのフィギュアはプラモをベースにつくっていますが、この作品の見どころは、やはり腐海の植物とよみがえりつつある旧世界の植物が共存するこの空間です。
劇場アニメ版ではオームの怒りをナウシカが鎮めるシーンでお話が終わっていましたが、その原作となるアニメージュ文庫(全7巻)ではさらにその後の世界も描かれて
いました。
旧世界は様々な毒によって大地が侵されていた。腐海の樹々はその毒を取り込み、そして自らはきれいな結晶となって、やがては大地の新たな土となる。腐海の最深部
ではその浄化がすすみ、再び生命のあふれる世界が再現されつつあるという。(第6巻)
この作品はそれを参考にして、平和が訪れたであろう最終第7巻の少し先の時代をイメージして制作しました。 (1/20スケール)
エントランスに近い一番目立つ場所には、自分にとっての代表作や特にメッセージ性の高いものを8つほど置かせていただきました。
環境破壊が進むなか、人類はいつまでたっても反省せずに戦いを繰り返す。「風の谷のナウシカ」は間違いなく人類に対する警告そのものだと思う。
アインシュタイン曰く、「自分には第三次世界大戦がどのようにして起きるのかは説明できない。けど第四次世界大戦で使われる武器についてはお答えすることができる、
それは石だ。」

第2水源地
この開成町にはたくさんの馬頭観音が立ち並ぶところがあり、春にはきれいな桜が咲きます。 (1/72スケール)
2番目の部屋には、近隣の景色を再現したジオラマを中心に20ほどの作品を展示しました。
実はここが今回の個展でぜひ再現したかったコーナーでした。実際に取材をしてその場所の最も印象的なシーンを切り取ったつもりです。
たとえば上の作品は開成町の小さな桜の名所なのだけど、このような景色ができあがるまでには長い月日がかかっている。
神奈川県西部を流れる酒匂川は何度となく氾濫を繰り返して人々を苦しめてきた。あの二宮金次郎もその氾濫で一家離散の憂き目に遭っている。江戸期より何度となく
大規模な治水工事が繰り返され、ようやく人々は豊かな水源と耕地を得ることができた。
30ほどある馬頭観音は人々とともに治水工事に駆り出された馬たちの墓標、そして土手道に咲く桜は、人々が楽しむためだけのものでなく、本来は土手を補強するための
ものでした。
25cm×20cmの小さな作品ですが、ここには江戸時代から現代に至る歴史があります。

浮島稲荷神社
平塚にある小さなおいなりさんです。

ビーチコーミング
浜辺を歩いていたら、トトロののぬいぐるみが乗ったたらいが流れ着いていた。 (1/20スケール)
3つめのステージには写真で言うところのスナップショットに近い作品を10ほど並べました。
自分としては一瞬を切り取る意識と空間の広がりを大切にしています。上の作品では地味ながら砂と波が見所になっています。

大根川
カワセミが住む駅徒歩3分の川の景色を再現しました。(1/64スケール)
1/64スケールながら、限りなくリアルに仕上げた作品です。こういうひろがりのあるものは1/35や1/24では絶対に作ることはできない。1/64は今自分が一番力を入れている
スケールでもあります。
ということで、終了から4ヶ月が過ぎたところで、やっと「情景のなかの人形たち9+」のレポートが完了です。
2025.07
camera: Panasonic DMC-TZ60 / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 3.0
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