eye4工房番外編
escape
<本当の一瞬を切り取ったジオラマ>
近未来、日本が戦争に巻き込まれた。危機的な状況から脱出を試みるシーンを再現してみました。
目の前のコンクリート建造物が崩壊して危機一髪の状況、ここから彼女は壁を越えてエスケープする。


シーンとしては崩壊する建造物の瓦礫をよけながら、瓦礫を駆け上がる一瞬を再現するというもので、画像に写っている瓦礫の半分ぐらいは空中に浮いている状態です。
(裏側から、目立たないようにして0.3mm径のスレンレス線で浮かせています)
かなり実験的な作品ゆえに、途中までは失敗覚悟だったのですが、なんとか作品としてはまとまった。


正直、この作品について思ったことができたかと聞かれたら70%ぐらいと、現時点では答えると思う。決して100%満足はしていません。でもとりあえず立体作品
としてはこれで完成ということにしたいと思います。
<フィギュアの製作>
最近になって、格安の海外通販TEMUで、模型やジオラマ材料の品揃えが格段に良くなってきた。

そして目にとまったのがこちらのフィギュア、1/24スケールで1056円とリーズナブルだったのでお買い上げです。

送られてきてびっくり、なんと箱にも入れられず、プチプチにくるまれただけの状態で送られてきました。
ベースやランナーはもうぼろぼろの状態だったのですが、幸いパーツには大きな破損はなさそう。破損があれば返金を受けられるので、早速ランナーからパーツを
外しながら点検を行います。
すぐに制作するつもりはなかったけど、こういう状態なのでやむを得ないでしょう。
この手のフィギュアにはいくつかのパターンぐらいあって、一つは上のようなランナー付きの状態でプチプチにくるまれた状態で送られてくるもの、安価なものの多くは
このパターンです。ちゃんとしたところはランナーからきちんとパーツを外して衝撃吸収材に包み、ケースに入れて送ってくる。これなら破損はほとんどない。
1 まずは仮組みをしてみます。

幸い破損個所はなかったので、仮組だけしてみました。
まず気づいたのは身長75mm、1/24スケールとはいうけれど、全体にこぶりで1/30ぐらいのスケール感です。あとはご覧のように走る姿勢があまりよろしくない。後傾姿勢
で腰が落ちてしまっている、これで全力疾走はできません。
そこで修正する方法を考えた。
まずは台座は使わないで、全体を前傾姿勢に直す。(A) そうすると顔が下を向いてしまうので、状態ののみを起こす。(B)
全体を真鍮線に固定して、腰の部分にエポキシパテを盛って上体の角度を修正しました。
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2 フィギュアの肌の部分から塗装を開始します。例に
よって人間用の化粧品を活用します。 |
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組み立てた後、最初に行うのは肌の塗装です。Mr.カラーのNo.111を基本色として塗った後、人間用のチークを使い、模型用の細めの綿棒を使い色をつけてゆきます。
1回ではうっすらと色がのるだけなので、何度となく GX113 を吹き付けて色を重ねてゆきます。
そして最後に塗装に「芯を入れる」つもりで、極細筆にMr.カラーをとって目や眉毛、唇といったところに最小限の色のせをします。上の画像は作業を1巡したところです。
ご覧のように1巡しただけではあまりうまく行かない。
あとはこうやって画像にとって確認し、微修正をして整えてゆきます。
3 質感を出しながら衣服の着色を行います。

顔を修正する一方で、少しずつ衣類の方もMr.カラーで色付けをしてゆきます。画像からは分かりにくいと思いますが、素材の違いによってつや消し添加剤を使い分け、
質感の違いを出しています。
顔の方も少しずつ手を加えた結果、見られる程度には仕上がったと思う。
この完成画像から感じたことは、フィギュアのポーズが腕がやや伸びた状態で、全力で走るというよりは、何かの障害物を飛び越える直前という感じだということです。
4 ジオラマのイメージをスケッチします。

早速のスケッチです。目の前に壁があってそれを乗り越えてゆく。
左のスケッチはフィギュアの後方から見たイメージなのですが、いつもながら下手でスミマセン。右はベースボード作成にあたって作図した上から見た状況です。
ベースボードは台形にして、壁自体はあえて斜めに配置します。
その目的は2つあって、まずは普通に長方形にすると、構図自体が安定してしまうので、それを避けたということ。2つ目には遠近法の効果が出て奥行きが感じられる
というのもあります。
<ベースボードをつくる>
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5 角材と合板を使って、ベースボードを制作します。
使っている治具は100均やTEMUは入手しました。 |
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まずは角材を組んで台形をつくり、そこに3mm厚の合板を張り付けます。今回は適当な合板がなかったので、手持ちの10cm角の合板をつなぎ合わせて使用しました。
最後に必ず4角は余った角材で補強します。

青い壁の高さは15cm、スケール換算は3m60cmで、ダンクシュートができる人でも簡単には手が届かない高さです。
そしてフィギュアを仮配置してみました。この角度だとハイジャンプのとき、背面飛びで踏み切った直後という感じだね。
あとこの作品で説明する必要があることは、一般的には乗り越えるには困難な高さを、彼女はどうやってクリアーするのか、そしてそれをしなくてはいけない
緊急事態とはそもそも何なのか、ということだと思う。
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6 単調にならないように注意しながら、壁や地面の
基本塗装を行います。 |
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壁の高さは15cm、スケール換算は3m60cmになります。まずはこの壁の基本塗装からです。アクリル絵の具のライトグレーでまずは全面を塗り塗り、少しずつ色を濃くして
変化をつけてゆく。すべて筆は縦使いするのが塗り方の基本です。
地面の方も最初はライトグレーで全面を塗ることからスタート、ここからアクリル絵の具を少しずつ暗くのは同じですが、水を多く含ませて滴らせるように色を重ねてゆくのが
基本です。
要するに様々な汚れがどのように広がってゆくのかをイメージするのがポイントで、縦のものは上から下に、水平のものはまばらににじむようにしみ込んでゆく。
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7 場所やその状況が理解できるようなアイテムを
追加してゆきます。。 |
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次はシチュエーションを説明するアイテムの追加です。

普段からお散歩のときに様々なものを撮影しているのですが、それが役に立ちます。まずは画像をGIMP(フリーのグラフィックアプリ)で加工してプリントアウトします。
これに支柱や台座を追加して、見たものを再現する。

これでこのシーンが、現代日本のよく見る風景であることがわかります。
これを骨格として、あとは破壊されたシーンを構築します。壁に壊れた部分をつくり、彼女が全力でそこを目指している。ちょっと緊迫した感じを出したい。ここから
ここからいかに不自然にならずに瓦礫を並べるか、ここが今回の作品の一番難しいところです。
このジオラマのテーマはずばり「脱出」、現在の日本は世界の中では比較的に平和ではあるけれど、いつこういう事態に陥るか予想がつかなくなってきている。
そして逃げる場所があればよいのだけど、世界には逃げたくても逃げられない人が多くいる。
今の世界は理不尽がまかり通る悪い方向に向かっていることは間違いないでしょう。
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8A 瓦礫を組み合わせて着色し、インスタントセメントで
質感を出してゆきます。 |
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背景は破壊された都市のシーンを再現するものとして、準備したパーツを仮組して、さらに瓦礫を追加してゆく。
基本的な構想がまとまったところで、主要なパーツをつなぎ合わせます。今回は瓦礫の質感と着色を一発で済ませるために砂利の混じったインスタントセメントを
使うことにしました。1.3kgで300円もしないのはありがたい。
食いつきの問題があるので、発泡スチロールやプラのフレームにはパーマネントマットバーニッシュで下処理をしておきます。
プリンターで仕上げたものは水を含むと滲んでしまうので、事前にMrカラーの GX113つや消しクリアーを吹き付けてコーティングしておきます。
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8B 瓦礫を少しずる追加してゆく。インスタントセメンを
定着するにはGX113つや消しクリアーを使います。 |
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セメントって水を混ぜて練るものだけど、今回は試しに上からセメントをぱらぱら撒いた後、水を霧吹きして硬化させるという方法をとってみることにしました。
ここまではうまくゆきそうな感じだったけど、乾いたらコンクリートがあまりパーツに馴染んでおらず、ぽろぽろと落ちてくる。
ということでやり直しです。チャコールグレーに着色したモデリングペーストを水で薄め、これを筆でパーツに塗ってからインスタントセメントを撒く。そして乾燥した
ところで上から水を霧吹きする。(A)
この方法でしっかりと食いついた。粒の大きな砂利は直接ボンドで貼り付けます。
別なやり方として、のりスプレーをしてから、インスタントセメントを撒く。すると粉塵のような感じに仕上がります。こちらはあまり定着が強くないので、こちらはGX113
つや消しクリアーを吹き付けると良い。(B)
(A)と(B)、2つの方法でリアルな感じに仕上げることができると確信しました。
後は少しずつ瓦礫を追加してインスタントセメントで処理する。時間はかかりますが思ったような空間ができあがると思います。
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8C 瓦礫に鉄筋を混ぜたり、弾痕を加えたりして、変化
をつけます。 |
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瓦礫が不足しているので追加です。
インスタントセメントで処理した発泡スチロール、茶色く塗った造花の芯は鉄筋に見せかける、そしてプリントアウトしてつくった道路標識を置く。壁にはドリルで2mm径の穴を
開け、ルーターでその周囲を拡大する。
実際に銃弾はコンクリートにこのような形の痕跡を残す、鶴見線の「国道駅」には今もきっちりとその跡が残っていました。
これでまずは何かの紛争が起こって、その混乱の状況だということが分かると思う。
最初はここに実際の敵を置こうかと思ったけど、それではあまり緊迫感が出ない。「敵」は見えない方がずっと怖い。だから、ここから先は置かれた瓦礫の状態だけで、この
シーンを解説してゆくことになります。
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8D 瓦礫を空中に浮かせます。そのために極細の
ステンレス鋼線を加工します。 |
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左画像はプラ材に穴を開けて0.3mm径のステンレス線を取り付けているところです。
そしてこのステンレス線をパイプに固定し、プラ材のある側を発布スチロールでつくったコンクリートの壁に取り付けて、浮かせます。
もちろんステンレス線はプライマーで処理してから塗装しておきます。この場合、黒でステンレス線を塗装するとかえって目立つので、つや消しのチャコールグレーぐらいの
色合いが良い。

このような瓦礫を4つほど空間に浮かせて設置したところです。
構想としてはけっこう実験的な作品で、目の前で建造物が崩壊してゆく瞬間を再現しようとしています。イメージとしてはすでに頭の中にはあるのですが、まだまだ
圧倒的にパーツ数や密度そのものが不足している。
うまくゆくかどうかは、これからの瓦礫の配置の仕方にかかっているに違いないです。

新たに大きな瓦礫(A)を追加したけど、これは不自然だった。時々撮影しては、不自然さがないかチェックを入れます。

落下してくる瓦礫がやや単調な感じがしたので、ジオラマベースからはみ出すように瓦礫を追加しました。(B) さらには破片(C)なども散在していないと不自然なので、
瞬間接着剤であちこちに貼り付けてゆく。
失敗はある程度覚悟はしていたのですが、なんとか作品としてはまとまりそうな感じになってきました。

更に瓦礫を追加します。
2つの点で改良の余地があると思った。一つは空中にある瓦礫が「落下しつつあるという動き」が感じられないということ。そして画像としてみたとき、奥行きが足りないということです。
そしてどうしたかというと、ベースボードの底面25cm×20cmの枠から完全に外れて、その外側に更に大きな瓦礫を置くこと、破片などを追加すること。
ジオラマというのは、とかくその枠内に納めようとすることが多いのですが、ときには枠をはみ出すことも効果的だったりします。

基本的にこの作品を見るとき、視線は一番奥にあるこのフィギュアに向かうと思う。
すると手前にあるい瓦礫にはピントが合わなくなって、まるでそれが落下しつつあるように見えてくる。つまり錯覚を利用して動きをつくろうというわけです。
<完成画像>
この作品のイメージとしては侵略を受けた日本の沿岸の都市、知っている人なら小林源文の世界と言ったら分かっていただけるかもしれません。
昔は少々現実離れしたシチュエーションにも思えたけど、現実にはロシアがウクライナ侵攻以前の検討段階で、日本もその候補の一つにあげられていたという話もある
ぐらいだから、全くあり得ない話ではない。
この作品はジオラマとして完成させても70%程度の満足度にしかならない作品だと予想していました。あとは撮影と画像加工で30%を補う。


フィギュアの前方にある、落下中の瓦礫や看板を画像加工で、下方に「線形モーションぼかし」を入れてみる。手前にあるものほど効果を大きくしてやると、よりリアルな落下の
シーンになります。
ちなみに画像加工はGIMPというフリーのアプリを使っています。下手すると有料のものよりも大きな効果が得られるのですが、その分、操作が難しくて、最初のうちは入門書を
読みながらでないと扱えないかもしれない。
あとスマホ版のGIMPもあるのですが、多機能ゆえにスマホでは扱いきれないと思います。また1920×1080レベルでの小さなノートパソコンでも難しい。UHDか最低限WQHD
(2560×1440)の解像度がモニターには求められると思う。

こちらはフィギュアの胸のあたりに動きの中心を置いて、「放射形モーションぼかし」を入れて背景を流し、飛び上がろうとする動きを出してみました。

フィギュアだけを左斜め上方向に「線形モーションぼかし」を入れ、更にぼかしなしのフィギュアのレイヤーを不透明度50%で重ねて画像に芯を入れる。何言ってんだか
分かんないって人もいるかもしれませんが、これでフィギュアの動きが再現できます。

これは今日最初の画像に、別に撮影した大きな瓦礫を切り取って入れ、「線形モーションぼかし」を入れたものです。
ということでこの作品の場合には、作品を撮影し、その画像を加工したところで本当の完成ということになります。
だからこの作品を展示する際には、必ずその近くにプリントしたこの画像を置かなくちゃいけない。そうしないと作品をつくった意味がなくなっちゃいます。
以前は雑誌などでも、フォトコンテストなどを開催していたけど、最近はあんまり聞かないね。自分もある鉄道模型雑誌で最優秀賞をいただき、カメラ一台もらったこともあるの
ですが、ちょっと寂しい感じです。
別に賞品が欲しいというのでなく、作品発表の機会が得られるというのが、この上ない喜びであるわけで、それこそが創作活動の大きな目的の一つだと思います。
2025.08
camera: Panasonic DMC-GX8 M.ZUIKO DIGITAL 12-50mm / graphic tool: SILKYPIX
Developer Studio Pro.7 + GIMP 3.0
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