浜松ジオラマグランプリ 14
2025.08.21~08.24
基本的に1年に1回開催されるジオラマの大会です。テーマやスケール、使用するプラモなどに一切の制限はない。あのTVチャンピオンのような大会が
誰にでも参加できるというので、今回初参加してみました。

戦士の見る夢
現状、戦場や情報戦のなかでは様々なロボットやAIが活躍していて、さらに多くの無人の兵器が登場すると言われる中、アンドロイドが人間に代わって戦場に送られるということもあるかもしれない。
そういうイメージの中、壊れてしまった作品をそのまま情景に組み込むことにしました。
スケールは1/6、ベースボードの大きさは48cm×33cmです。

情景のキャプションとしては、
ある長く戦いの続く地域で、戦闘用アンドロイドが実戦投入された。
そして投入後3日、大雨のなかで激しい戦闘が起こる。
その戦いは昼夜問わずに1週間続き、再び静けさを取り戻したときには、この地から人々は姿を消していた。あたりは瓦礫だけの世界、戦闘は全てを奪っていった。
しばらくして植物だけは少しずつ息を吹き返す。
しかし戦い終わってなお、アンドロイドは真上を見上げたまま、二度と動くことはなかった。
人間同士の戦いで、こういったシーンがあれば、それを表現すること自体、誰もがためらうことに違いない。でも設定がアンドロイドだから、こういう破壊された身体の
表現が許されるのだと思う。
しかしやっぱり痛みや悲しみは人間と変わらない。
背景の壁に書かれた文字は、
GOD BLESS OUR HOME (我家に神のご加護があらんことを)
それなのに、なんで人間は戦い続けるのだろう?

起動停止後2週間たってもアンドロイドは埋葬されることはなかった。
だが思いがけないことに、しばらくして彼女は少しずつ花に囲まれ始めた。
そして今、蝶が舞い降りて、彼女の魂を見送ろうとしている。
<準備>
1次審査は無事通過、本選に向けての準備に取りかかります。
、この作品を制作したのは1年ほど前のこと。今見ても完成度は高いと思うけど、少しだけ手直しをすることにしました。

この間に感じの良い草を手に入れたので、ちょっとだけそれらを追加してみた。
これでまた植物密度が全体に上がり、アンドロイドが草に包まれている感じが増した。

そして作品を先日自作した箱に収めます。
準備は向こうの係の人にお願いするつもりなので、搬入のトラブルがないように、ちゃんとした二重の箱をつくりました。2図雄の

送信された展示方法の案内には「名刺サイズの配布物1点はOK」と書かれていたので、こちらも用意しました。
画像右にあるのが、自分の運営するサイトとブログのPRのための名刺で、QRコード付きです。
こういう機会は利用しない手はないです。
これですべての準備は完了、あとは無事に作品が会場に届くのを祈るのみです。
自分も最終日のお昼過ぎには会場に出向く予定です。
<トラブル>
大会初日の夜、 昨日寝る前に、誰か浜松ジオラマグランプリの記事をUPしているかなと思って検索を入れたら、もうすでにすべての作品を撮影して紹介している人が
いました。
そして自分の作品を見てみたら、なんといくつかのパーツが吹き飛んでヘッドの周辺に散らばっていました。
状況からすると梱包された状態で、少し高いところから縦になって床に落下した感じです。もう目が点になってしまった。
深夜ながら、事務局に明朝修復に向かう旨を連絡し、睡眠不足状態で今朝を迎えました。
車で3時間、ザザシティ浜松 西館の特設会場にたどり着いた。

平日なのに、すでに入場者多数でこれはすごいなと思った。きっと土日はもっと混雑するんだろうな。

持って行ったのは瞬間接着剤とゴム系接着剤、長めの爪楊枝2本、あとはキーホルダーについている小型ナイフで、大概これだけあれば応急措置はできる。
外れて飛んでいたパーツはヘッド、左右のブーツ、小銃、ペットボトルの5つのパーツで、15分ほどで修復は完了。
近くにいた山田卓司大先生からは「何があっても壊れないように梱包しないといけない。」との一言が、自分としては慎重に梱包したつもりですが、まだまだ
足りないようです。
でも「落とされても壊れない」梱包は難しい。
「象が踏んでも壊れない筆箱」が昔あったけど、落ちたら簡単に割れてしまったという経験が蘇った。(少々古すぎるか )
<浜松ジオラマグランプリ>
地域の活性化を目的にして設立された「NPOはままつ未来会議」が、その活動の 第一弾として「浜松ジオラマファクトリー」をスタートさせ、その活動のなかから
生まれたのが「浜松ジオラマグランプリ」というジオラマコンテストです。
コンテストに使用するキットやスケールなどで制限することなく、フリーな形態で行っているのは、おそらくは世界でも浜松ジオラマグランプリだけだそうで、それも
今年で14回目を迎えます。

そして今回からあらたに過去チャンピオンになったことのある方々による、上位クラスの「マスタークラス」がもうけられました。ところが一般クラスと比べると、
受けられる賞は本当に少なく、グランドマスターの1賞のみでなかなか厳しい。

張り出された大会結果はこちらです。自分は賞なし

百鬼夜行 (青山祐二)
そして今回のグランドマスターとなったのがこちらの作品です。その構成や技術といった部分でも完璧、入場者投票でも1位で、まさに完全優勝というところでしょうか。

写真館 ~Family History~ (大島了)
こちらは昨年のチャンピオンの今年の作品です。良い感じで昭和レトロな写真館を切り取っている。昭和40年あたりには、ごく普通に見ることのできた風景が再現
されています。きっと明治の初めから続く歴史ある写真館がモデルになっていると思う。
そしてこの作品は正面だけでなく、背面も手抜きなし。
1Fは現像室、2Fは撮影スタジオが再現されていて、何か次元が違う感じです。この作り込みは2、3ヶ月でできるもんじゃない。
最終日の午後、作者自ら作品をひっくり返して、裏側を見せてくれました。これは必見だと思って撮影させていただいた。
部分的だと思っていた裏側ですが、実はしっかりと写真館1軒が再現されていました、1Fには写真館のエントランス、暗室、そして2Fには2つのスタジオがある。
家具はもちろん、額入りの写真やタイプライター、賞状などが完璧に整えられていて隙がない。
なるほど、ここまで再現してサブタイトルにある Famiry History というわけなんだ。

シェアタイムⅡ アートな昼下がり (小原雅司)
オープントップのバスの通る近代ヨーロッパの道、少しおしゃれをした雑多な登場人物がまずは目を引きます。設定としては1900年代初頭、ヨーロッパには世界中から
様々な国の人々が訪れていた頃です。
見所は間違いなくフィギュアの仕上げで、服装はもちろん、手にしているもの、そして表情や髪型まできちんと描写しているのがすごい。この表現力は簡単に身につけられる
ものではない。

桜日和(山本和美)
桜の下での家族団らん、拝啓の木造Ⅱ階建ての和風住宅が良い感じで仕上がっている。ドールハウスの一つの完成形なんだろうと思います。
繰り返しになるけど、マスタークラスに行っちゃうと、賞はグランドマスターのみで、それがとれないと「無賞」でしかない。厳しいね。
自分の場合には正直あんまり行きたくない、もっとも行くと言っても、簡単には入れてはくれないのだけど。
そしておそらくこのクラスでトップになるには、1年間かけてじっくりと作品を作りに取り組まなければいけないのだと思う、大変だなあ。


一般クラスからもいくつか作品をご紹介します。
なつかしの街角 (ゆうさん)
今年のグランプリがこちらです。酒屋さん、床屋さん、模型屋さんの3軒が立ち並ぶレトロな街角を再現している。「なるいほど層だったよな」という細かな演出があちこちに
ちりばめられている力作です。
たとえば左端の模型屋さんは、その断面を見ることができる。
1Fの模型屋さん部分は手抜きなしでプラモのパッケージなどが並べられている。2Fも昭和そのもの、ナショナル(多分)の扇風機と、1個780円ぐらいだったカラーボックスが
泣かせる。

宿場町 (岡田次雄)
木曽路 奈良井宿の風景を再現したもので、共感を持てる作品になっています。奥行きを出すための遠近法の活用がポイントで、一般投票でも「百鬼夜行」に次ぐ2位の成績を
収めた。

あとは賞そのものというより、自分がいいなと思った作品をご紹介します。
光の庭 (ラトキエ)
モネ自らが手がけたという、フランスのジヴェルニー庭園の風景を再現したもの。
ちなみに同じ庭園を再現した「モネの庭」という施設が高知県の北川村にあって、自分はそれを見たことがあります。雰囲気は100%同じです。
橋の上にモネと思われる人物がいますが、おそらくは最後に加えられたもので、この存在が全体を絵としてよくまとめていると思う。
自分が今回一つ選べと言われたら、難しいけどこの作品かもしれない。

スラッグ渓谷の朝 (Senbei)
ジブリものをずっと作り続けているそうです。ともかく細かく正確に造られている。
配色や仕組まれたLEDも実によく計算されています。Nゲージサイズでちゃんとトロッコも動く。アニメと全く同じ空間というわけではないのだけど、限られたスペースの
なかにその世界を再現する計算が素晴らしい。

Christmas Tram (ノブえもん)
クリスマスの日、トラムの電停前の風景を再現しています。まずはその構成と演出力が目を引く。
あとはやっぱりこの人物描写です。特別にサンタの服を着た車掌、仕事を早上がりした旦那さん、ケーキを持った奥さん。12月24日午後4時40分頃、みんなが我が家に急ぐ
時間帯だということが伝わってきます。
ドラマを感じるという意味であれば、今回はこの作品が一番好きです。

グレンダイザー 対 W・マジンガー(HALQ)
ガンプラの行動を行く作品で力作です。完成度も高い。
ジオラマというと、一般には戦車や飛行機、必要に応じてフィギュアを背景に配置したもの、あるいはガンプラを中心にして一つのシーンを演出したものが、その代表と
考えられていると思う。
ところが、浜松ジオラマグランプリではジオラマの王道とも言われるミリタリーやガンプラものは実際にはあまり多くはない。わずか6作品のみでした(全50作品)

祠 (なえなえ)
自分の住むところの近くにある実際の風景ということでした。

マイアミのカフェ&バー (遠藤 大樹)
おそらくはドールハウスを作っている人なんだろうと思う。技術的に確かなものを感じます。
最も多かったのは、リアルな情景ものでした。(21/50作品 数え方は人によって違うとは思うけど)
そしてどちらかというとレトロ、あるいはノスタルジックな空間を再現していて、見るものを引き込もうとしていたように思う。

くまくま茶館 The First (くまださよこ)
色合いが良い、まるでそのままアニメーションを立体化させた感じです。

天竜浜名湖鉄道 浜名湖佐久米駅 (黒田寛)
天竜浜名湖鉄道を旅したことがあるけど、そういえばこんな駅があった。この駅だからこそ、このキャラが似合うんだろうね。
リアルなものがあれば、一方でこういうファンタジックだったり、コミカルな空間を再現したものがある。(11/50作品)

Dip Toy のギフトセット (はまちゃん工房)
職場でこういったものをつくっていますというメモがあったと思う。見た目が斬新です、本人はどう思っているかわからないけど。
こういう手芸的な感じのする作品もいくつかありました。

サヨばあちゃんの休憩所 (たみの さち)
大井川鐵道のジオラマですね。沿線にはいちめんにお茶畑がひろがる。「そう、こういった風景だよね。」みたいな共感が得られるような作品作りって大切です。

野良猫 (猫又心響)
ベースボードの大きさは直径15cmほどの小さな作品、猫の仕草とか、非常に細かなところまで配慮が行き届いていると思いました。見ている人にも受け入れやすい、
心地よい作品です。
あとは大会の特徴として、女性の参加者がかなり多い。(10名ぐらい?) 今時、男女比なんてどうでも良いかもしれませんが、プラモは男の子の遊びだった時代に比べると印象は
全然違う。
そしてともかく入場者が多い。週末は入場まで30分かかるほどの行列ができた。これってすごい。
そして列が長いから、一つ一つの作品をじっくりと観察していただける。
作品は千差万別で、選ぶシーンも素材も全然違う。一つ一つの作品から受ける印象も、作者によって全く違う。
ジオラマというと、戦車や飛行機、そしてその後のガンプラが主役というイメージがあるけれど、そういう題材を選ぶ人が少ないのもちょっとした衝撃的でした。
もうプラモの世界とジオラマの世界は重なる部分はあっても、別なジャンルといっても良いぐらい。
浜松ジオラマグランプリがどういう大会なのかと問われたら、「作者が自分のやりたいことをやる大会」だったと、自分は答えるかもしれない。
浜松ジオラマグランプリは使用するキットやスケールなどで制限することなく、フリーな形態で行っている。ということは、みんな自分の最もつくりたいシーンを
つくっているはず。
そこにはレトロあるいはノスタルジック、あるいはファンタジックな印象の、夢のある空間を再現したいという、このグランプリに参加するにあたっての、一つの流れ
のようなものが見えたような気がします。
多分この浜松ジオラマグランプリを見に来るお客さんたちも、それを望んでいるんだろうな。
<自分の成績について>
さてフォトコンテストなどは別ですが、実物審査を行うコンテストでは1次審査は写真のみ、それを通過すると実物を送って下さいという場合が大半だと思う。
1次審査を通過するには、基本的なルールを守った上で、主催者の設定する最低限の出場レベルを超えている作品であると判断される必要がある。
今回のジオラマグランプリでも、草原のなかに潜む戦車とか、ちゃんとした鉄道模型のレイアウトをつくったことがあるというレベルでも、ちゃんと準備さえすれば
予選通過はそれほど難しいことではないと思う。

予選を通過すると二次審査(本選)になる。ここは審査方法によって結果が大きく違ってくるところかもしれません。また主催者の意図が反省されるところだとも思う。
過去にいくつかのコンテストにチャレンジしてきたけど、今回について言えばコンテストの趣旨や雰囲気を十分に把握しておらず、自分は完全に外してしまったと
思っています。

本選が終了した後は、例によってご近所のお魚のおいしいのみ屋さんに行って、反省会です。正直なところ一次審査の通過は当然のこととして、自分としては
「何か賞がもらえるかもしれない」とも思っていました。基本的には完成度の高い作品であることは間違いなかったので。
しかし結果は違った。
今回のジオラマグランプリの要項の最初に「技術より表現」を重視しますとある。ようするに上手下手ではなく、何をイメージして表現するのかということです。

自分のつくりたいものと、他の人が見たいものが一致すれば良いのだけど、多くの場合には、すでにここが違ってくる。
こういうコンテストで上位に入ってくるためには「何が望まれているか」を知る必要がある。言うならば物語のテーマ選びと同じだろうと思う。
今回のジオラマグランプリでは、夢のある空間を再現するという一つの大きな流れのようなものがあったような気がします。キーワードとしてはレトロやノスタルジック、
ファンタジックといったところかな。

戦士の見る夢
ある長く戦いの続く地域で、戦闘用アンドロイドが実戦投入された。
戦いは昼夜問わずに1週間続き、再び静けさを取り戻したときには、この地から人々は姿を消していた。あたりは瓦礫だけの世界、戦闘は全てを奪っていった。
起動停止後2週間、思いがけないことに彼女は少しずつ花に囲まれ始めた。
そして今、蝶が舞い降りて、彼女の魂を見送ろうとしている。
この作品を制作する少し前に親族内で不幸があったのですが、そのこともこの作品をつくるきっかけになっていたと思う。
死者を弔うとき、お化粧したり花を添えたりして、最も美しい姿で送り出す習慣が民族を問わずあるように思う。それが送り出す者が最後にしてあげられることだから。
それが制作のコンセプトの一つです。
夢のある世界を見たいという人が多いなかで、正直言ってこの作品は悲しいストーリーを持ちすぎていたかもしれない。もしかしたら目を背けた人も人もいるかもしれない。
結果の出た直後に思ったのは、ジブリ関連の作品がいくつもあるので、それらのなかから選んで持って行った方が良かったかも。テーマ選びこそが最大のポイントだった。
さて戦士の見る夢という作品は、ジオラマグランプリ向けではないと書いたのだけど、この一ヶ月で別な考えもあるなと思うようになりました。
入賞はしなかったけど、少なくともこの作品を1位または2位に選んで下さった方が20名ほどいたことは事実で、「悲しみが伝わってきた」「心打たれた」「リアルすぎる」などの
お褒めの言葉(多分)が添えられていました。
実はこの作品、死者のモデルが存在しています。
シェークスピアの戯曲に「ハムレット」という誰もが知る作品があります。デンマークの王子ハムレットが、父王を毒殺して王位につき母を妃とした叔父に復讐するというストーリー
です。ハムレットの恋人はオフィーリア、復しゅうの過程で彼女はハムレットに冷たくされ、また実の父も誤って毒殺されてしまうという悲しい伏線がある。

彼女は花を手にして川で命を落とす。
自分は花を銃に変え、魂が天に登る様を蝶で表した。
あまりに理不尽な死に、当時の画家たちは競って「オフィーリアの死」を描いたという。自分が参考にしたのはミレーのオフィーリアです。
今回いただいたコメントのなかに「エモーショナルな一品、シェークスピアのオフィーリアの一幕」という言葉がありました。
実はハムレットとの関連を書くのは今回が初めてで、連れにも言ったことがなかっ。そしてこれまでこの「小さな秘密」に気づいた人は誰もいなかった。
作品を理解したうえで、シェークスピアとミレーが思い浮かばないとこのコメントは出ないはず。どなたかは知りませんがトップクラスの洞察力をお持ちの型のよう。
おかげでちょっとだけ驚いて、そしてうれしかった。
正直、この戦士の見る夢という作品は悲しいだけでなく、すべてを解き明かすのも難しい作品でした。
でも基本は「やりたいことをやる」でよいはずなので、一つぐらいこういう作品がジオラマグランプリにあっても良いかもしれない。グランプリの直後は作品選びの失敗と
思っていたけど、こういう流れに逆らうような作品選びも自分らしいと、今は密かに思ったりもしています。
2025.09
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