絞りについての考察
12.01.12
こちらは「センサーサイズについての考察」の続編です。まずは「センサーサイズについての考察」をお読み下さると分
かりやすいです。
絞り
一般的なカメラの場合、「絞り」という機能がついています。これは光の量が多くなりすぎたときに、その量を絞り込んで
少なくする働きです。(下の図)
一方でカメラにはシャッタースピードを変化させる機能もついています。暗いときにはシャッターを長く開け続け、明るいとき
には短くするというものです。多くのカメラでは、絞り機能とシャッタースピードの調整機能が連動していて、自動的に最適値
を割り出してくれています。
オートのモードで撮影しようとしたとき、たとえば絞り(F)=5.6 シャッタースピード(T)=1/200秒が、そのカメラの割り出した
最適値だとしましょう。ここでモードを「絞り優先」または「シャッタースピード優先」にしてあげると、様々なF、Tの組み合わせ
でも撮影可能になります。
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1 |
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3 |
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5 |
6 |
7 |
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F |
2.0 |
2.8 |
4.0 |
5.6 |
7.8 |
11 |
15 |
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T |
1/1600 |
1/800 |
1/400 |
1/200 |
1/100 |
1/50 |
1/25 |
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1の組み合わせは、シャッタースピードが速いので手振れが少なく、早い被写体をきっちりと止めて撮影するのに向いています。
逆に7の組み合わせは、手振れしやすいですが、川の流れや、風になびく草などの動きを画面に取り込みたいときに向いています。
では絞り(F)そのものについては、どのような意味があるのでしょう。PowerShot S90(コンパクトカメラ)の絞り優先モードで説明します。
下の画像は、カメラを絞り優先モードにして、F=3.5で撮影したのが左、少し絞ったF=8.0で撮影したのが右です。
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F=3.5 |
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F=8.0 |
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ごらんのとおり、絞りはその値が小さいほどピントの合う範囲が狭くなり、背景はぼけます。逆に大きくすると全体にピントが合います。
どのような写真を撮りたいかにもよりますが、いわゆるポートレート写真では、邪魔になる背景をぼかして人物を浮き立たせる左側のような
写真が撮られることが多いです。
逆にピントを広い範囲に合わせたければ絞りの数値を上げます。(絞る)
皆さんピンホールカメラをご存じでしょうか? 箱に小さな穴を開けただけの構造でレンズは不要です。しかもこのカメラはピント
合わせの必要がありません。理論上は目の前から無限遠方までピントが合うからです。(下の図)
カメラの絞りを絞ってゆくということは、ピンホールカメラの状態に近づいてゆくということで、ピントは全体に合いやすくなってゆき
ます。
焦点距離とぼけ
今度は2つのカメラでぼけ方を比較します。条件はいずれも絞りF=3.5です。
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PowerShot S90
ズームレンズ:f=6.0(W)-22.0mm(T) [28(W)-105mm(T)]
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LUMIX G3
標準ズーム:f= 14(W)-42.0mm(T) [28(W)-84mm(T)]
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いかがでしょう、絞りの値(F)が同じなのにG3の方が大きくぼけています。
これはレンズの焦点距離の問題です。両方ともズームをワイド側にしてありますが、実質的な焦点距離はs90がf=6mm、
G3がf=14mmと2倍以上の差があります。(35mm換算値はいずれも28mm) 一般に焦点距離は長いほど背景がぼけ、短い
ほど全体にピントが合ってくることが知られています。
一般にコンパクトカメラよりデジタル一眼の方が大きくぼけることが知られています。それはコンパクトカメラの場合、小さな
ボディにセンサーを収めるためには、短い距離で像を結ぶ必要があり、そのため焦点距離の身近なレンズを用いる必要があ
るからです。s90はセンサーが大きく、レンズも最小でF=2.0と明るいのですが、デジタル一眼にはかないません。
もっとイメージセンサーが小型のYashica EZ Digital F537IRだとこんなふうに全体にピントが合います。
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Yashica EZ Digital F537IR
1/3.2型 CMOSイメージセンサー 503万画素
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ちなみに、このカメラにはピントを合わせる機能がありません。距離は「風景」と「接写」の2種類だけです。でもピントが合いやすいから
これで十分なんです。
小型のカメラ → センサーが小さい → レンズの焦点距離が短い → ピントが合いやすい → 誰でも綺麗に撮れる
というわけで、こういったカメラや携帯のカメラは入門者には最適です。しかも精密なピント合わせの機能も必要なく、安価に製造できる
メリットもあります。
けれど一方でデジタル一眼に比べれば撮影の自由度が狭く、得られる画像も階調のなめらかさや全体の解像感、ノイズといったさま
ざまな面で劣っているということは理解しておいてほしいです。またコンパクトカメラを選ぶ際には、見た目やコンパクトさでなく、センサー
サイズの大きさ、レンズの明るさの2つはぜひ重視していただきたいです。
実はマイクロフォーサーズ規格もセンサーサイズが小さく、背景のぼけが出にくいとされています。今回も撮影してみて、もうちょっと寄
れて背景がぼけていたらいいな、と思いました。できるなら明るいマクロレンズが欲しいのですが・・・。
ケース別の整理
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背景をぼかしたい |
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全体にピントを合わせたい |
絞り(F) |
小さくする |
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大きくする |
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シャッタースピードが上がり手振れしにくくなる。
速い動きのものを止めて撮影するのに向く |
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シャッタースピードが下がり手振れしやすくなる。
被写体の動きを取り込むことができる。 |
焦点距離(f) |
長くする |
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短くする |
被写体とカメラの距離 |
近づく |
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遠ざかる |
被写体と背景の距離 |
離す |
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近づける |
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マクロレンズの追加購入(12.01.17補足)
通常の撮影ではG3と標準ズームで十分ですが、背景の美しいポート
レートを撮影するために、明るいマクロレンズが欲しくなりました。ですが
純正のレンズは標準価格が10万円近く・・・。ということで OLYMPUSの
ZD ED50mm Macro とアダプターを購入しました。
マイクロフォーサーズは様々なレンズをアダプターを介して装着できる
のが大きなメリットです。
ちなみに ZD ED50mm Macro の設計自体はやや古いですが、F=2.0
と明るく、「神レンズ」とも呼ばれるほど描写力の優れたレンズです。
(E620の時代から欲しかったレンズで、ちょっと幸せ!)
このあとテスト画像を掲載しますが、最後の3枚がこのレンズによる画像
です。
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Panasonic LUMIX G3 + G VARIO14-42
Panasonic LUMIX G3 + OLYMPUS ZD ED50mm macro
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