オリジナルドール yuki の製作 3
組み立て




 思ったようなボディラインができあがったのでいよいよ組み立てです。
ここもちゃんとした計算が必要な部分です。急がず慎重にすすめましょう。





●2015.01.03 天気:晴れ

 
 この人形をつくっている間に年があけてしまいました。年末年始
は帰省したり、なんやかんやで忙しく作業は中断です。
 でもこんな休養にも実は意味があって、しばらくぶりに人形を見
ると、それまで気づかなかった欠点などが冷静に見えてきたり、
行き詰まった作業の打開策をふと発見できたりすることもありま
す。
 ということで今年もがんばります。
 


ボディとヘッドのバランス

 
 さてイベントなどでは、自分の制作した1/3サイズの人形だと、
「小顔ですね・・・」というコメントをいただくことが多いです。でも実
際には8等身程度の自然なバランスで、別に小さくつくっているわ
けではありません。でも確かにDDやSDよりは小顔です。
 一方で1/6オリジナルドールだと「リアルですね・・・」というコメント
をいただきますが、実は割合にして人の3倍ぐらいの大きさのアイ
を取り付けてあります。他のドールよりリアルなのは「入れ目」に
してあることだけです。

 人形作りで難しいなと思うのは、ただリアルであれば良い、という
ことではないところです。
 実際、生身の人間を型どりして等身大に複製したら100%リアル
ではありますが、それがベストのものとは、とてもいえないように思
います。
 問題はどのようにヒトのかたちを縮小し、アレンジするのかだと思
います。SD、momoko、バービー、ジュモー・・・、評価を得たドール
はそれぞれに優れたヒトガタに対する解釈を加え、ある意味のスタ
ンダード、つまり様式として確立しているのだと思います。
 
   
   




5 マグネット仕様

 自分のつくる人形にはマグネットや鉄のビスを仕組んであり、人形を
簡単に立たせたり、マグネットピアスがつけられたりできるような工夫を
しています。



    まずは首裏のネオジムマグネットの組み込みから、こち
   らはスタンドなしに人形を立たせるためのものです。

1 最初ドリルで直径2mmの穴をあけ、徐々に歯を大
 きくしてゆき、最後は直径5mmまで拡大します。
2 穴を棒ヤスリで磨き、その後エポキシ接着剤で
 ネオジムマグネットを固定します。



    次は頭頂部分の固定です。こちらにもネオジムマグネットを
   使います。

3 まずはフェイス部分に直径5mmのネオジムマグ
 ネットを固定します。
4 頭頂部分に穴を開けますが、ぴったりというのは
 難しいのでやや大きめに穴を開けます。
5 できたすき間はマグネット固定後、更にエポキシ
 接着剤を塗り込めることで埋めます。



     次はビスです。マグネットピアスほか様々なものが固定
    できるような工夫です。下の画像の赤い印のところに埋め
    込みます。

  
 

6 通常は2.5mm径のビスを、バストトップには2.5mm
 のスチールボールを用意します。
7 3mm径の穴を開けます。更に5mmのドリルでビス
 の頭が埋まるように浅く広い穴を開けます。
8 エポキシ接着剤を塗ったビスをねじ込みます。その
 後ラドールプレミックスで穴を消します。

   9 バストトップにも同様の処理をしました。すべて乾燥したところで
    布ペーパーで磨きを入れます。
   


6 組み立て
 ますはテンションゴムを通すための穴を開けなければいけません。
ボディパーツを組み合わせ、ゴムの道筋を計算します。
 下の図は青がゴム、黄色は引っ張り上げる糸を表しています。


1 ゴムが通る必要最小限の穴を鉛筆で描き、ドリル
 で穴を数カ所開けます。
2 カッターナイフ等で少しずつ穴を大きくしてゆきま
 す。
3 最後に棒ヤスリで穴の形を整えてゆきます。欠け
 防止のため、面をとった方がよいです。

4 膝の関節です。90°曲げることを想定して、鉛筆
 で穴を開ける部分を描きました。
5 直径3mmのドリルで両端の2カ所に穴を開けます。
6 この穴の間に金ノコで切れ目を入れ、カッターで
 それを拡大し、形を整えます。

7 太股の付け根部分です。ゴムの通り道に5mmの
 穴を開けます。
8 太股を建てた状態で上からとがった針金を射し、
 印をつけます。
9 今度は90°太股を曲げたにして、上から針金を
 射して印をつけます。

10 2カ所の印をもとにして、穴を開ける部分を鉛筆で
 描いてゆきます。
11 膝と同様、まずはドリルで穴を開け、金ノコとカッ
 ターナイフで成型します。

 首の関節は最も大きな力の加わるところです。粘土のままだと
欠けたりすることが多いので、エポキシパテで補強します。

12 首の関節の上部を平らに削り、やすりをかけて
 おきます。
13 エポキシパテを接着し、完全に固くなったところで
 もとの形状に削りなおします。

14 こちらはヘッド部分です。テンションゴムをかける
 部分を太めのアルミ線(2.5mm)でつくります。
15 フェイス内側下部に粘土を盛り、そこにこのアル
 ミ線を固定します。

16 手首足首の関節に穴をあけます。徐々に穴を大き
 くしてゆき、最後は5mmまで拡大します。
17 肘のレジンパーツです。こちらは3mmの穴を開け
 ます。

18 金ノコで手と足のパーツに切れ込みを入れます。 19 ドリルで直径2.5mmの穴を開けます。 20 この穴に合わせて2mmのアルミ線を切り出します。

21 ヒモを溝に通したあとで、このアルミ線を穴に通し
 ます。
22 アルミ線は瞬間接着剤を流して固定し、残った穴
 はパテで埋めます。
23 アルミ線を下のような形に加工します。Sは首関節
 で2.5mm径、Cは手足の関節用です2mm径です。

    24 この金具を先ほどの手足のパーツに取り付ければ準備完了です。
   



 テンションゴムをとりつけ組み立てます。ゴムは上部用が2mmの太さ、下部用は
3mmの太さのものを用意します。

   25 ボディに合わせてゴムを切ります。長さはゴムを引く部分の長さ
    のおおむね75%ぐらいにしています。
   

26 2つ折りにした針金にゴムをかけ、手から胴体へと
 通してゆきます。
27 通し終えたら手のパーツを取り付け、実際に
 動かしてみます。

28 不具合があれば調整します。今回は肘パーツの
 穴が小さかったのでヤスリで大きくしました。

   29 次は脚から胴体の部分をゴムでつないでゆきます。まずは
    下半身部分だけをつなぎました。
   

30 腰の部分から太めの糸でゴムを引っ張り出し、
 上半身を通します。
31 上半身から引っ張り出した糸は用意しておいた
 S字金具に引っかけます。
32 S字金具を更に糸で引っ張って、ヘッドの金具に
 引っかけます。

 このようなテンションゴムによる組み立て方法は、人によって
こまかな違いがあるようですが基本は同じです。うまくゆけば
ドールはきちんと立ちます。

   33 このあと関節が想定された範囲で可動すること
    を確認します。
   

34 不具合があったら、穴の大きさを調整します。

 
 組み立てに関しては、ゴムを通す穴を最初から大きくしておく
方法もあるようですが、関節の自由度も大きくなる分、あらぬ方
向に四肢が曲がってしまい、ポージングがやりにくくなったりも
します。まあ、この辺はお好みかと思います。

 とりあえずここまでの作業でやっと人形らしくなってきました。
次は細部の仕上げに入ってゆきます。
 
   
   



7 細部の仕上げ
 人形の全体像は見えてきましたが、まだまだこまかな部分の造形は
すんでいません。ここから先は細かな作業になってゆきます。
 粘土には柔らかく削りやすい利点がある一方で、その分もろく、乾燥
がすすむまで次の作業に進めないといった不便な点もあります。
 仕上げ段階に入る前に、水を固く絞った布で全体を拭き、毛羽立ちを
押さえるというのが一般的な方法ですが、自分の場合にはイージース
リップ(現行の商品名:モデリングキャスト)を塗り、表面を固くしてから、
細かな造形に入るようにしています。

1 イージースリップを容器にとり、水で2倍ぐらいに
 薄めます。
2 これをスポンジに染みこませ、軽くたたくようにして
 各パーツにのせてゆきます。
3 乾燥したら240番の布ペーパーで円を描くように
 均一に磨きます。

 この作業によって、少しだけ表面が硬化し、デザインナイフなどで
の切削がやりやすくなります。また毛羽立ちもなくなります。

4 細かな造形に入ります。バストトップは板状の
 紙ヤスリで磨きながら、形状を整えてゆきます。

5 アイホールをつくります。デザインナイフで少しず
 つ削り、小さめの穴を開けます。
6 裏側から彫刻刀で凹部分を削り出し、その後予定
 されたサイズまでアイホールを拡大します。
7 12mmのアイサイザーでアイホールの形を整えま
 す。瞼の厚さは1mmまで削りたいところです。

8 ひととおりの作業の終わったところです。ここで
 もう一度イージースリップを塗ります。
9 硬化したらアイラインや二重まぶたなどを整形し
 て完成です。

 
 この段階でグラスアイを仮止めし、鉛筆で眉毛を描き、ウイッグを
被せます・・・。うん、なかなか良い感じです。(自己満足!)
 最終的に塗装とメイクで人形のキャラクターは確定しますが、今
この段階までにウイッグやアイのことは考えておいたほうが良いと
思います。(それに合わせた肌の色を考えるため)
 今回については、ブロンドヘアーに薄紫のアイと決め、それに合
わせ肌は美白系にまとめようと思います。

「ここまでくるとあとは塗るだけ、完成まであとわずか!」といいたい
ところですが、まだまだ先は長いです。先を急ぎたい気持ちをぐっと
押さえて作業をすすめます。
 
   
   

 次回は表面仕上げと塗装、メイクなど、いよいよ最後の過程に入ります。
 どれだけの方の参考になるかは分かりませんが、次回の過程は創作
ドールだけでなく、レジンキャストドールや市販ドールのカスタマイズにも
参考になる内容になると思います。



今回使用したもの:彫刻刀、カッター、布ペーパー240番、ドリル、アイサイザー12mm
今回の作業のために購入したもの:
    イージースリップ(950円)、ヒモ(500円)、アルミ線(400円×2)、
    テンションゴム(大220円 小220円)、ビス(120円)、パテ(450円)
    ネオジムマグネット(600円)、スチールボール(100円)
  累計  5,110円
今回の作業時間=7.5時間   累計  21時間



                
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