ドール&フィギュアの撮影 ライトやストロボの使い方 2019.11.12 前回まではドール&フィギュアの撮影に向く機材の話でしたが、ここからは少しずつ実際の撮影についてもお話ししたいと思います。最初はストロボの話です。 ほとんどすべてのカメラに当たり前のようにストロボはついているけど、「暗いところを明るく写すためにはストロボを使う」みたい発想は自分は持っていません。 1 ストロボとLEDの特性 まずはカメラの内蔵ストロボをごく普通に使うとこうなるよという例です。 これは Canon の G7X というコンパクトなカメラで撮影したものです。やや暗めの室内で付属のストロボで撮影しました。問題は多数あります。 画像の中央は明るさは良いのですが、四隅は暗く写ってしまっている。これは接近して撮影しているので、ストロボから遠いところ(角度のあるところ) では光が足りなくなっているということです。これは特にズームをワイド側に操作すると影響が大きくなります。 また膝のあたりは逆に近すぎて光ってしまっている(白トビ) 更には人形の背後に不自然な強い影が出ている。これは構えたカメラのレンズからやや左側にストロボがついているためで、これも近づいて撮影すると 目立ってしまう。 これを少しでも良くしようとした結果がこれ。影が目立つ内側でなく外側に出るように、カメラを180°ひっくりかえして構えなおし、なおかつティッシュペーパーを 1枚にはがしてストロボにかぶせてみた(ディフューザーのかわり) 白トビは軽減され明暗の差も若干改善された。でも強い影は幾分薄れたけど、まだまだ残っている。これはストロボが点光源であり、かつレンズから離れている ために生じる現象だからです。はっきり言って内蔵ストロボは接近して撮影するのに向いている道具とは言えません。 それでもストロボというのであれば、大型のストロボにちゃんとしたディフューザーをつけるか、バウンスといっていったん天井や壁に光を反射させて全体を明るく するストロボを用意する、または本体のストロボに連動して光る外部ストロボを使う・・・といった方法が考えられるけど、それじゃぜんぜんお気軽でない。 自分の場合、暗いからと言ってストロボを使うことはほとんどないです。そもそもメインで使っている Panasonic の GX8 にはストロボがついていないけど、それで 困ったことはないです。 使用しているのは乾電池式の撮影用LEDです。おそらく Amazon あたりで探せば600円ぐらいからあるんじゃないかな。スマホでも使えるリング状のものもありますが、 これもまた便利です。 あらためてこのLEDで撮影しました。点光源でなく面で光を照射しているので、強い影ができにくく白トビや四隅の暗さも気になりません。そして何より嬉しいのは ストロボと違って見た目の通りに写ること、ストロボだと実際に光らせて画像を確認するまでは結果が分からない。 でもこのライティングはあまりよくないです。正面からの光なのでコントラストがなく、お人形の顔が平坦に見えてしまっている。 そこでお人形を少し斜めに立たせてポーズをとり、LEDの位置も変えてみた。室内照明とLEDでここまで写ります。最初の画像とは全然違うでしょ? あと、ある程度明るい条件でも自分はLEDを使います。その最大の理由は瞳がキャッチライトして輝くからです。これでいちだんとお人形が可愛く見えます。 ちゃんとしたアイの入ったお人形をお持ちなら、ぜひ試してみて下さい 。 2 複数の照明を使う 次は被写体と照明の距離と方向のお話です。 こちらは室内灯と30cmぐらいの距離に置いたLEDライト一個で撮影したものですが、さすがにLEDとはいえ、この近さだと影が気になるね。 こちらは撮影スペースから2mぐらい離れている(天井についている)室内灯だけで撮影したものです。今度は全体のバランスは良くなったけど、顔がやや暗くなって、 特に瞳に光が入らなくなってしまいました。顔だけ見れば最初の写真の方が良いです。 つまりは根本的に1つの照明だけでをは何でもきれいに写すのは難しく、まずは暗いところができないように全体を明るくした上で、更に前から顔や瞳を意識したライトを あてるのがポイントだということです。 少々お手軽ではなくなってしまいますが、市販品では撮影ボックスという便利なものがあって、1/6のドールぐらいの大きさまでなら、とても簡単にバランスのとれた光を 得ることもできます。 ただそれだと1/3のお人形とか、大きめのジオラマだと入りきらないので自分の場合には4.5帖の一角にスタジオのような場所をつくってしまいました。 天井下に角材を通し、そこにトップ2灯、両サイド、そして正面にLED照明を配置しています。背景は白い紙張りのスチレンボード、トップ2灯の下にあるのはプラダンです。 これに加えて先ほどの乾電池式のLEDを配置して、おもに光の足りなくなりやすい足元などを照らします。 プラダンは建材の一つで適度な透過性があります。光をやわらげたり、拡散させたりする安価なディフューザーとして使用しています。 プラダンは必要に応じて両サイドの照明の前にもつるしたりしています。 また逆に強い光を演出したいときには、正面のLEDを昼白色の蛍光スポットランプに変えたりもしています。 いろいろやっていたら、最後はこうなっちゃいました。 (参考になる記事はこちら → 撮影ブースの制作) このミニスタジオで撮影しました。 最初からここまでするのは大変だけど、とりあえず室内照明にプラスして移動式のLEDを3つぐらい配置したらどうかな? きっと良い結果が出ると思います。 それから照明には昼光色や昼白色などの種類があるのですが、これはいわゆる色温度を基準にして区別されています。電球色の蛍光ランプが約2800K、 昼白色は約5000K、昼光色は約6500Kという値で、この数値が大きいほど青みのかかった色合いになります。太陽光線が5000Kから6000Kなので、昼白色または 昼光色を選び、あとはお好みでRAW現像の時やレタッチのときに調整を行うのが良いでしょう。 「どういうカメラをお使いですか?」 そう尋ねられることも時々あるのですが、そんなときにはもちろん隠さずにお話しします。メインは Panasonic の GX8、サブは Canon の G7X というコンパクトカメラ、どちらも一昔前の中級機ですが、まだまだ使うつもりです。 (困っていないし、そんなにお金もない) でも、どういう照明を使っているのかは、まだ一回も聞かれていないです。ですが事実として40万円以上のカメラを買うより、まずは1万円かけて照明器具を整えた 方が効果があると思うと自分は思っています。 3 補助光 屋外での撮影では様々な目的でライトやストロボがほしくなる場面があります。今回も基本的に撮影用LEDを用いて説明をしたいと思います。 まずその1は暗いシチュエーションで絶対的に光が足りないとき。(まあ当たり前ではありますが) 最近のカメラは暗さにけっこう強いのですが、感度をオートにしていると、暗くなればなるほど画面がどんどん荒れてくる。(ざらざらとした感じになってくる) 上の写真では夕暮れ時の暗い条件なので照明は不可欠です。こういうときにの注意事項としては、肌が白トビしないようにLEDやストロボはフルパワーで 使わないということかな。また手持ちで撮影できるぎりぎりの明るさにすれば背景は暗いままで、お人形だけを浮き立たせるように写すことができます。 その2は強い影が出てしまうような状況です。実はお昼ごろって人形撮影には向かない時間帯です。太陽がほぼ真上に出てしまうので、お人形あごや鼻のあたりに 強い影ができてしまう。 しかも髪や睫毛、上瞼が太陽光線を遮ってしまうので、瞳が暗く沈んでしまいます。ちゃんとしたアイの入っているお人形だと、その多くはリアルなスケールに比べて ずっと大きなアイを持っており、光彩もずっと奥の方にあるので、この影響は大きいです。(上の図のような状況) こういったときにもLEDやストロボは有効です。 これはLEDを左側やや下からあてて影を弱めています。また瞳の奥にも光が入っていることがお分かりかと思います。 これと同じ効果はレフ版でも得られます。レフ版というと何か専門的ですが、厚紙1枚でも代用できます。 カメラに付属するストロボを使うときには、あえてカメラを180°ひっくり返して撮影するのもありです。ストロボが下からあたるので影を弱めるにはこのほうが効果的です。 3つ目は逆光のときです。明るい背景の中で撮影すると、こんなふうに背景の明るさが回折現象を起こして全体にもやっとした感じになってしまいます。 こんなときも前方からの光を補うことで、この回折現象を弱めることができます。 でもね、この回折現象ってうまく使うと、こんなソフトフォーカスな感じの素敵な画になったりする。こういうのってなかなか難しいのだけれど、 たまたまできちゃったりするとちょっと嬉しい。 ドール&フィギュアの写真は、基本的には人間を写す普通のポートレート同じであると思います。ただ通常より接近して撮影することが多いので、 その分、照明にはちょっとした工夫が必要になります。 2018.11 camera: Canon PowerShot G7X、 Panasonic GX8 ほか/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10 サイトのトップページにとびます |