オリジナルドール aimi の製作 2
ボディの造形



 今回、型抜きしたパーツからドール本体を完成させてゆくという
方法を紹介しているのですが、これはある程度の数のドールを制
作した人間にとってはごく普通のことと思います。
 型抜きしたパーツを用いることで、その制作過程の1/3が省略で
き、そこから新たな造形をスタートできるのなら、ぜひとも活用した
い技術です。
・・・もちろんそのためには何が何でも原型ドールを最低1体完成
させる必要はありますが。


 さて今回最も強調したいことに「観察」というテーマがあります。
もちろん粘土に触れることでドール制作はすすめられるわけです
が、それと同等に大切なのが制作物を観察し、構想を練る時間
だと思います。
 勢いにまかせて一気に作り上げるとろくなことはないので、とき
に立ち止まって冷静に自分の作業を見直します。
 ちなみにそんなときに助けになるのが写真を撮るという行為で
す。自分の目だけでなく、カメラのレンズを経由することで、分か
らなかった欠点やアイディアが見えてくることがあります。
 あとは行き詰まったときの息抜きもあるといいね。最近Nゲージ
始めました。またこちらはドールの粘土の乾燥を待っている間の
趣味としても良いかも・・・。でもはまりすぎてドール制作のスピー
ドが落ちてしまわないように注意する必要はありますが。
 



型抜きしたパーツからドールを完成させる
 
 関節部分を調整し、組み立てたのが右の状態です。
 これで表面のキズや凹凸を修正すれば、原型のドールと同等
のボディラインが得られます。でもそれでは過去につくったドール
の複製に過ぎません。
 自分の場合にはここから各パーツに粘土を盛ったり削ったりし
て、原型とは異なったボディラインのドールをつくることにしてい
ます。
 今回は完成度の高くなった原型を生かして、小規模な改修にと
どめますが、場合によっては、たとえば脚のパーツを延長したり、
切りつめたりして、全く異なったバランスのドールを制作すること
もあります。

 ちなみにカスタマイズ可能な球体関節人形のキット(パジコ社)
も発売されていますが、ここから先はこういった人形制作の参考
にもなると思います。

 



4 造形

 まずはまっすぐに立たせてみます。きちんと関節が仕上がっていれば、
バランス良く立ってくれるはずです。そして次に関節を曲げてみて違和感
がないことを確かめます。
 今回はまっすぐに立ってはくれたものの、若干調整が必要な部分があ
りました。

1 肘関節で穴の位置がちょっと後ろ過ぎたので、
 若干の調整(穴の移動)をしました。
2 肘パーツの穴が少し小さくて、ゴムが通りにくかっ
 たので棒ヤスリで拡大します。
3 股関節の穴の位置も修正します。
 (このままだと直立しない)


 関節の調整が終わったら、まずは全体をながめ、ボディラインをどうする
か構想を練ります。
 今回は完成度の高くなった原型のポテンシャルを確認するため、全体の
メリハリをつけることを目的に調整、造形をすすめます。
 なお基本的に関節部分をこれ以上いじることはしません。もしいじると、す
べてのバランスが崩れる可能性があるからです。
 自分の場合には軽量化のため、粘土は極力薄くして仕上げることにして
います。従って削りによる修正には限界があり、おもに粘土の盛りで対応す
ることになります。
 また盛りによる修正になることを前提に、型どりしたパーツはやや細めに
なるよう原型を調整しています。
 ということで、今回の調整は、粘土を盛ることによる筋肉や骨格の強調が
中心となります。



   4 鉛筆で粘土を盛る部分(黒)と削る部分(オレンジ)でチェックを入れ
    ます。

・背中が平坦すぎる! 
(ゴムのテンションが弱いので調整というメモあり)
肘裏の関節がスムースにつながっていないな。

・もう少し太股にボリュームが欲しいな。
ふくらはぎもボリューム不足。

・肘のラインがなめらかにつながっていないので、
 削りを入れます。

・なで肩すぎるので修正しましょう。


4 カッターナイフやデザインナイフ、彫刻刀で削りを
 入れます。
5 不足部分に粘土を盛ります。使用する粘土は水を
 ほんの少し加えて柔らかくしておきます。
6 乾燥を待ちます。量の多いときには厚盛りせず、
 2回に分けた方がむしろ乾燥は早いです

7 乾燥を待って240番の布ペーパーをかけ、表面を
 ならします。
8 バストトップは摩耗しやすいので、スチールボール
 に置き換えました。



 
 まずは直立、腕は下という最も基本的なポーズで調整しまし
た。
 しかしながらDOLLは動かすものですから、直立状態が良け
ればそれでいいというものでもありません。
 次に関節を動かしてみて、全体を整えてゆきます。
 関節をまっすぐにしても曲げても美しいラインを保つのは難し
いですが、ここががんばりどころだと思っています。



 ちなみに440gという軽量なドールですから、片手で持ち上げ
て観察したり、ばらすことなく粘土の盛りと削りができるのは大
きなメリットだと思っています。

 
     
    
  
    


   9 今度は積極的にDOLLを動かしてみて、2回目の修正に入ります。
    曲げたときでも違和感のないラインを意識します。

・お腹をもうちょっとふっくらと。
・手首に向かって細くなるように。

・太股はもっとボリュームがあっていいな。
・膝下の表現にメリハリをつけよう。

・膝関節をできるだけ細く。

10 不足部分に粘土を盛ります。1回目の作業と変
 わりはありません。
11 乾燥を待って240番の布ペーパーで造形部分に
 磨きを入れます。
*)瞬間接着パテが表面に出ている部分は硬いので
 棒ヤスリなどを併用します。

 
 このあと座らせてみたり、もっと極端なポーズをとらせて修正
を行いました。
 今回はこの作業を三巡させたところで、自分の思ったようなラ
インに仕上がりました。
 でもまだビス埋めの穴は開いたまま、大きなキズも残ったま
まです。

 次にDOLLの下地をきれいに整えてゆく作業に入ります。
 ちなみになぜここまで穴をそのまま残しておいたかというと、
ときどき削りや磨きの作業を入れるのですが、その作業で穴を
開けてしまうことがないように、残りの厚さを確認するためです。
 
     
  



5 下地の仕上げ

 まずはビス埋めです。マグネットピアスほか様々なものが固定できる
ような工夫です。下の画像の赤い印のところに埋め込みます。


12 木ねじを埋め込みました。固定には瞬間接着
 パテを使います。
13 木ねじが動かなくなったら、更に瞬間接着パテで
 窪みを埋めます。
14 固まったところでヤスリがけをおこない、平滑に
 します。

 首にはネオジムマグネットを埋めます。金属の柱などに固定できる
ようにするためのアイディアです。

15 最初ドリルで直径2mmの穴をあけ、徐々に歯を大
 きくしてゆき、最後は直径5mmまで拡大します。
16 穴を棒ヤスリで磨き、その後エポキシ接着剤で
 ネオジムマグネットを固定します。



  ここから凹凸やキズを消し、ボディ表面を平滑にならしてゆく
作業に入ります。


17 各パーツごとに凹凸や気になるキズを探して粘土
 を埋めてゆきます。
18 乾燥したところで240番の布ペーパーで磨きを
 かけます。

 ここがポイントになると思うのですが、自分の考えている
粘土の盛り方と削り方のイメージです。

 理想的なラインはグレーで示してありますが、粘土を盛
った段階ではまだ不均一な状態にあります。


 削りだけで解決しようと思うと、削りすぎの状態になって
しまいます。


 そこでおおむね7割ぐらい削る感覚で磨いてゆくと、下
のような状況になります。このとき深い溝は残ったままで
す。


 今度は深いキズにやや多めに粘土をすり込んで埋め
ます。


 次にもう一度ヤスリをかけて仕上げます。


 乾燥後、まだ凹凸が残っているようであれば、この作業
を繰り返します。
 基本的に自分の場合にはキズの埋め直しだけでなく、
塗装面の仕上げについても「7分削りで」対応しています。
少なくとも自分の場合にはベストな修正方法です。



 
 全体を眺めながら、この過程を3回ほど繰り返します。これで
目立つキズや凹凸はほぼ消えました。
 ただ実際にはまだ完全に滑らかな面ができているわけではな
いので、次の段階として塗装に向くきれいな下地をつくる作業に
入ります。
 そのためいったんここですべてのパーツをばらばらの状態に
します。
 

     
  



 下の6つのパーツはレジンでできています。力が加わって破損しや
すいパーツなので粘土から置き換えました。


 まずはレジンパーツの表面処理です。レジンは親水性がないので、
前処理が必要になります。

19 まずはパーティングラインをカッターの刃などで
 消してゆきます。
20 全体を400番ぐらいの耐水ペーパーで磨きます。
  (水とぎ)
21 中性洗剤の入った水にパーツをつけ込み、離型
 剤を洗い流します。

22 完全に乾燥させたら、ホワイトサーフェーサーを
 全体にスプレーします。
23 サーフェーサーを吹くと、キズや凹凸が見やすく
 なります。パテなどで修正しましょう。
24 再びホワイトサーフェーサーをスプレーします。
 キズがなくなったら完了です。

 ホワイトサーフェーサーは黄変対策のためと、次のジェッソの塗膜が剥がれ
にくくする働きがあります。ただ後で出てくるウレタンクリアーとの相性が悪く、
キズの確認が終わったら、すべて磨いて落としてしまっても良いかなとも思い
ます。
 ここは今後の検討課題です。




 次は粘土でできたボディの方です。細かなキズや表面の毛羽立ちなどが
まだ残っています。





 表面の仕上げに入る前に、細かな部分の修正を行います。粘土は
微細な造形に向かないので、瞬間接着パテを用います。

25 角や関節部分については、破損しやすい部分な
 ので、修正には瞬間接着パテを使います。
26 やや多めにキズ部分にパテを盛ってゆきます。
 パウダーは多めにした方が後で削りやすいです。
27 パテが固まったところで、デザインナイフと400番
 のペーパーで修正します。

28 耳など、細かい造形を行っている部分も瞬間接着
 パテで修正します。
29 作業を繰り返すうちにモールドの甘くなっている
 部分が出てきます。デザインナイフで修正します。

 240番の布ヤスリで磨かれた表面は粘土の毛羽立ちがあって、細かな
キズなどを見にくくしています。普通は固く絞った布でその毛羽立ちを押
さえるのですが、自分の場合にはここで一工夫。イージースリップ(旧名、
現在の商品名はモデリングキャスト)を水で薄めたもので表面を整えます。
イージースリップを塗布することで、粘土表面を硬く強化することができま
す。

30 イージースリップを大きめの容器にとり、水で2倍
 ぐらいに薄めます。
31 スポンジにこの水溶液に染みこませ、パーツ表面
 を拭いてゆきます。


 乾燥させ、斜めから光をあててやると、がっかりとするほどたくさんのキズ
があらわれます。全部毛羽立ちの下に隠れていたものです。
 今度はこの微細なキズや凹凸を消します。
 

32 キズに柔らかくした粘土を塗りつけます。少量の
 粘土を塗るにはカッターナイフがやりやすいです。
33 乾燥したら力を入れず、円を描くように400番のペ
 ーパーで磨いてゆきます。

34 あたりまえのことですが、この段階になってボディラインに
 修正を加えることもよくあります。

 粘土を盛って、乾かして、ペーパーで磨く、最後はイージースリップ
の塗布。この単純な作業を幾度となく繰り返すことで、DOLLの肌はど
んどんきれいになってゆきます。
 根気の必要な作業ですが、完成度の高さに直結する作業なのでが
んばります。
 ちなみにヤスリの番手は400番に落としました。番手を落とすことで
毛羽立ちは小さくなります。

 頃合いを見てアイホールを開けます。イージースリップのおかげで
粘土が固まり、一連の作業はやりやすくなっているはずです。

35 アイホールを開けます。まずは大まかにホールの
 中心をくり抜きます。
36 中心のホールを拡大するようにアイラインまで削
 ってゆきます。

37 周辺部分には厚みがありますので、まずは丸の
 彫刻刀で裏側をおおまかに削ります。
38 アイサイザーでアイホールを磨きます。瞼の厚さ
 は最終的に1mmぐらいにします。

 この段階でドールアイの候補をいくつかに絞り、
実際にはめ込んでみて具合を見るのも良いでし
ょう。



 このままだと粘土パーツとレジンパーツの質感が異なっており、
また瞬間接着パテの露出している部分もあって、このままでは塗
装にふさわしい下地になっていません。
 そこで白色の統一した下地をつくるためにジェッソを塗ってゆき
ます。

39 ジェッソをやや大きめの器にとって、水で少し薄
 めます。
40 スポンジにこの水溶液に染みこませ、パーツ表面
 に塗りつけます。

41 もちろんこの段階でも気になる部分があったら修
 正します。
42 埃やゴミの付着があったら、こまめに取り除いて
 ゆきます。

43 乾燥を待って再びジェッソを塗布します。最終的
 にジェッソは3回塗布しました。
44 口元などジェッソのたまりやすい部分は、デザイ
 ンナイフなどで軽く修正します。
45 最後に400番のペーパーで磨きを入れれば、下地
 塗装の完了です。

 
 今回の作業のポイントは、一言で言うならば決められた手順を繰り
返すということでしょうか。作業は必ず、観察、盛る、乾燥させる、削
る、磨くの順番を守って行います。
 たとえば盛る作業の後、たとえおかしい部分があっても、そのパー
ツには手を触れないで乾燥を待つ。削りすぎた部分があってもすぐ
に盛らず、全体を見直したうえで次のサイクルで修正を行います。
 急がば回れといいますが、作業手順を守ることが、結局はいちば
ん早いです。
 一連の作業は、やればやるほど作品自体の完成度を高めること
ができるので、時間をかけてじっくりと取り組みます。
 



 次は表面塗装とメイクなど最終仕上げになる予定です。
 ただちょっと手間をかかっているので、完成画像のUPは3週間ぐらい先に
なってしまうかもしれません。

今回使用したもの:彫刻刀、カッター、棒ヤスリ、布ヤスリ240番、耐水ペーパー400番
今回の作業のために購入したもの:布ヤスリ(¥100)、耐水ペーパー400番(¥100)、
                      ホワイトサーフェーサー(¥700)、
                      イージースリップ(手持ち)、ジェッソ(手持ち)
累計  6,300円
今回の作業時間=17時間 累計 30.5時間



                
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