eye4工房番外編

腐海の尽きるところ

リメイク編




 1年前の個展に向けて制作した「腐海の尽きるところ」という1/20スケールのジオラマのリメイクを開始しました。
 もちろんアニメ史上に残る名作「風の谷のナウシカ」をテーマにしたジオラマです。
 旧世界は様々な毒によって大地が侵されていた。腐海の樹々はその毒を取り込み、そして自らはきれいな結晶となって、やがては大地の新たな土となる。
腐海の最深部ではその浄化がすすみ、再び生命のあふれる世界が再現されつつあるという。
 単行本では腐海によって清浄なる地が再現されつつあるという記述がありました。(第6巻)  こちらはこれを参考に、平和が訪れたであろう最終第7巻の
少し先の時代をイメージして制作したものです。



 白く浄化された大地と腐海の植物、そして新世界の植物が同居する空間なのですが、今になって見直すと白にこだわりすぎて空間に厚みがないような感じがしてきた。
もともとは腐海だったという空間であるならば、もっとどろどろした感じの、密度の高い空間である方が相応しいかもしれない、そう思ったのがリメイクのきっかけです。


   1 この画像をPCに取り込んで、試しに明度の高い部分を三原色に分けてトーンコントロールをいじってみた。(使ったのはGIMP)  

    

    

    要するにシミュレーションを行っているわけです。こういったことが簡単にできるのはとても便利、間違ったイメージにならないで済みます。

   

    そして選んだ画像がこちら。重厚感が出て、腐海の少し重苦しい感じが出てきたように思う。



2 リキテックスを調合して彩度を落としたグリーン、
 ブルー、パープルの3色の塗料をつくりました。
3 CGの画像を参考にしながら、少しずつ全体に色を
 おいてゆきます。
 


 とりあえずひととおり白い岩を着色し終えた。

 

 ちょっと彩度が高過ぎる感じですが、最終的にはグレーを上から吹き付けて落ち着かせるつもりです。

 次に気になったのは腐海の植物たち。ジオラマの奥の方にあるのは、すでに瘴気を出すことのない小型化した腐海の植物なのですが、
こちらの色合いが明るすぎて浮き上がってしまっている。


   4 再びGIMPを使ってシミュレーションします。

    

    

   そして最終的に選んだのがこちらです。

   

   基本的にはグレーグリーン、ところどころグレーブルーでアクセントといった感じです。


   5 腐海の植物を着色します。

    

 どんどん白っぽい部分がなくなってゆきますが、倒れた腐海の木々と水の流れた跡を表現した白い縞の部分は浄化された証としてそのまま残すことにします。
やはり原作に描かれている部分は少しではあっても残しておいた方が良い。このあたりがぎりぎりの選択かと思う。

 そもそも腐海の色ってどんな色なのか? アニメーションや現在も出版されている全7巻の風の谷のナウシカによれば、そこには巨大化したシダ植物や菌類が
描かれていて、基本はくすんだような緑色、そこにキノコやカビによくあるような色合いが加わっているという感じです。
 自分としては浄化された腐海の外れを表現しているので、瘴気を吐き出すような巨大な腐海の植物は置かない、でも最近まで腐海だったという特別な空間だった
感じを残すには、自然界にはあまりないような色合いで再現するのが良いだろうと考え、青や藍色を使ったわけです。

 このあと地表の草を再現するのですが基本的にはパウダー類やターフ、そしてミニネイチャーシリーズなどの植物を組み合わせてゆくことになります。


6 グレーを地面に吹き付けて、全体の彩度と明度を
 落とします。
7 むき出しになった地面を隠すために、パウダーや
 ターフを調合します。
8 これを適宜まいて苔を表現します。接着する部分
 には事前に水で薄めた木工ボンドを塗っておきます。

9 鉄道模型用のストラクチュアのストックから、適当な
 草を選んで接着します。
10 こちらは100均で売っている苔シートです。安価
 なのがうれしい。


 ひととおり配置し終えた。



 うーんでもまだ足りないな。
 ここでその原因の一つは圧倒的に植物の密度が足りないことではないかと考えました。腐海の最深部からその先の世界を再現しているのですが、
清浄なる地が復活しつつあるのであれば、そこにはに生命あふれる空間がひろがっているはずです。 




 そこで登場したのは和巧のペーパークラフト。ストックしてあるものからいくつか選んで組み立てることにしました。


11 これらのキット政策の第一歩は着色すること。今回
 はリキテックスを使っています。
12 手の上で筆の反対側の丸い部分でこすって形を
 整える。
13 付属している心材を通して組み立てます。細かい
 作業なので時間がかかる。

   14 これを感性に任せて配置します。

    

 まだ足りない感じです。
 このペーパークラフトってリアルなのは良いのですが、けっこうお高い。だから無制限に使うというのは厳しいです。
そこで100均を巡ってみることにしました。


15 腐海の木々に見えるようなものを100均で探して
 着色し、いちばん奥まった部分に配置してみました。
16 KATOのリアリスティックウオーターで全体に濡れた
 感じを与えます。

 全体を濡れた感じに仕上げたのは、雨上がりの早朝をイメージしているため。リアリスティックウオーターを筆にとって葉っぱに塗り、
小さなくぼみにはスポイトで流し込みます。

17 市販のライケンを青緑色に着色しているところ。
 絵の具が浸み込んだら十分に乾燥させます。
18 これを少しずつ植物の影や岩肌に配置してゆき
 ます。

 鉄道模型でよく使われるライケンを青緑に着色し直して、あちこちに茂みをつくってゆく。それは密度がまだまだ足りない感じがしたのと、
生け花の世界では草木の根元が見えてしまうのはあまりよくないということを、どこかで聞いてそれを思い出したからです。
 ライケンはミズゴケの一種で、鉄道模型の世界では雑木の表現によく使われるポピュラーな存在です。ただ実際に1/150スケールでこれを
使ってしまうと、とてもリアルな空間とは言えなくなるので自分はこれまで使ったことがなかった。
 でも今回は腐海の世界の植物のイメージにぴったり、こういった植物があるかもしれないと思わせるような説得力がある。



 ライケンを少しずつ植えて丸1日、もうこれ以上は植える場所がない・・・ということで完成ですか?

 

 今回この植物の密度を高める作業を行っていて、これってお花を活けているようなものなんだろうなと思い始めた。生花であるかないかの違いは
あるけれど、きっと華道の心得があったら、もっと美しく仕上げられるに違いないだろうなあ・・・。
 見た目にはもう植物の密度も十分です。

 このあと細部に手を入れ、ちゃんとしたライティングで撮影してみました。
 劇場アニメ版ではオームの怒りをナウシカが鎮めるシーンでお話が終わっていましたが、その原作となるアニメージュ文庫(全7巻)ではさらにその後の
世界も描かれていました。

 旧世界は様々な毒によって大地が侵されていた。腐海の樹々はその毒を取り込み、そして自らはきれいな結晶となって、やがては大地の新たな土となる。
 腐海の最深部ではその浄化がすすみ、再び生命のあふれる世界が再現されつつあるという。(第6巻)


 この作品はそれを参考に、平和が訪れたであろう最終第7巻の少し先の時代をイメージして制作しました。



 
少しずつ空が明らむ夜明け前、ナウシカは腐海の最深部を目指してすすみ始めた。
 そしてほどなくその腐海の尽きるところにたどり着いた。



  夜が明け、朝露に濡れる大地は輝き始めた。



 ジオラマサイズは45cm×45cm、メインのナウシカはバンダイから発売されている1/20スケール、背景は和巧のペーパークラフト、
100均で販売されている造花等を利用して作りあげています。



 この作品は昨年制作した作品のリメイク版ですが、主な変更点は植物の密度を高めたところです。
 毒が消えたことで旧世界の植物も復活を遂げ、一方で腐海の植物は小型化しもはや瘴気を吐き出すようなこともない。浄化された腐海の外れでは
新旧の植物が混在しながら、生命あふれる空間ができつつあるという解釈です。
 それから大地を藍色や青といった色合いに染めてみたところも変更点です。腐海の木々が毒をその体に取り込んで無害化し、その過程で藍色や青と
いった色素はいったん大地に染み込み、そして水によって洗い流されるいうイメージです。
 違うなと言われればそれまで。そういうこともあるかなと言われればそれで良い。自分としては最低限、この空間内でつじつまが合っていればよいかなと
思っています。



 しかし「風の谷のナウシカ」って、自然界の摂理という意味ではものすごくつじつまの合っている世界だよね。
 ちなみに単行本全7巻が出そろったのは25年前、いまだに売れ続けている名作です。ついでに言うとそのちょっと前に出版された「シュナの旅」っていうのも
小作品だけど名作です。読んだことのない人はぜひどうぞ。(風の谷のナウシカの原案になったとも言われる)

リメイク前はこちらです→新規ページ



2020.07
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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