オリジナルドール aimi の製作
軽量化します!





軽いことのメリット  
 自分のつくった人形を持ってもらうと、その軽さに誰もが驚きます。
イメージとしてはビスクやレジンでできた人形の重さがあるんでしょ
うね。
 最初の頃は造形のしやすさを重視してラドールなんかを使ってい
たのですが、軽量な素材を使うことで転倒したときの破損の危険性
が減ることや、ゴムのテンションを小さくすることができて楽に扱え
たりと、いろいろなメリットがあることが分かってきました。また粘土
自体を薄くすることで乾燥時間も短くすることができます。
 ということで今回は軽量化や、そのほか制作過程の変更を含めて
ご紹介しようと思います。
 
 

 自分の場合、現在では次のような工程を経て完成に至っています。
1 原型となるドールの制作
2 原型ドールの型どり
3 型から基本パーツを形成する
4 造形と表面仕上げ
5 塗装とメイク

 今回はすでにできあがっている型を使って完成させますので、解説は
「3 型から基本パーツを形成する」という過程からになります。なお原型
製作から型どりまでの過程は次のページにございますので、事前にお読
みいただけると全体が把握できると思います。
原型となるドールの製作 page104  page105  page107  page087
型どり            page166


1 パーツの成型

 自分の場合にはシリコーンで型をつくっており、工程を簡略化しています。
 シリコンを型の素材として使用しているのはレジンを使うことも意識してい
るからで、どちらかというと少数派のように思います。粘土中心で制作する
のであれば、もっと扱いやすい素材もありますので、そちらを選んで良いか
と思います。
 今回使用するのはラドールプレミックスとプルミエです。


 ラドールは創作人形の世界では一番多く用いられている粘土かと思います。
きめ細やかで緻密、乾燥による変形も少ないです。
 プルミエはとても軽量な粘土で美白、水分量が多く柔らかいという性質を持っ
ています。また乾燥後は高い強度を持ちます。ただ乾燥とともに粘土が大きく
収縮し変形してしまうという欠点もあります。
 ラドールにプルミエを混ぜて使うと、柔らかさが増して扱いやすくなることから、
これを製品化したのがラドールプレミックスというわけです。
 自分の場合には今回、更にプレミックスとプルミエを1:1で混ぜ、厚さを最大で
3mmに押さえてみようと考えています。プルミエが多く配合されることから、乾燥
による変形をどう押さえるかがポイントになります。

1 シリコンの型です。ここに示したのはその一部です。
 使用前に簡単に水洗いして乾燥させます。
2 まずは2種類の粘土を混ぜて練り込みます。その
 後におおむね3mmぐらいの厚さに延ばします。
3 カッターなどで大まかに切り、型にあわせて成型
 してゆきます。

 上下のパーツを接着するためには水で柔らかく練った粘土を接着剤
がわりに使うのが一般的かと思います。ただこの場合には接着力が弱
く乾燥までに時間がかかるので、変形の原因になることもしばしばです。
 そこで今回は他の方法を試してみました。


   4 半乾燥状態になるのを待ちます。全体はまだ柔らかいのですが、
    表面部分は硬くなっているというのが目安です。
  

   5 この状態で瞬間接着パテで張り合わせます。おおむね2分ぐらいで
    固まる程度に調合するのが目安です。

  

 このまま室内で1週間ほど乾燥させました。
 瞬間接着パテが硬化して「骨」の役割を果たし、変形は少ないです。また
粘土を薄くしたので乾燥も早かったです。
 自分の場合には全18パーツのうち、破損しやすい手足と肘はレジンパーツ
に置き換えており、その他のパーツはすべてこの方法で完成させています。


 計画はうまくいったのですが、それでも型から外したパーツにはヒビやカケ、
ゆがみなどが若干みられるので、まずはこういった部分を補修してゆきます。
 
6 粘土がはみ出した部分(バリ)をカッターで削り落
 としてゆきます。
7 接着不十分と思われる場所には瞬間接着パテを
 塗り込んで整形します。

 とりあえず基本パーツが得られました。でも作業はまだほんの入口、ここから
理想の造形を追求してゆくことになります。
  

今回使用したもの:シリコンの型、ラドールプレミックス(×2)、プルミエ(×2)、瞬間接着パテ、
            塩ビパイプ、レジンなど
今回の作業のために購入したもの:ラドールプレミックス(500円×2)、プルミエ(500円×2、
            瞬間接着パテ(1500円)、レジン
 
累計  3.600円
今回の作業時間=4.0時間 累計  4.0時間



2 レジンパーツの修正
 手、足、肘の3パーツは破損しやすいこともあってレジンに置き換えています。
但しレジンについては黄変の問題があるので、完成後の作品に影響がないよう、
下地が出ないような工夫が必要です。
 
1 まずはカッターでバリを落としてゆきます。 2 こちらは肘のパーツですが、段差が生じており、
 この修正を行います。

A 切削手順です。シリコンの型のずれがパーティング
 ラインの原因となります。
B 切削することで、最初にこれを消します。断面が平ら
 になってしまいます。
C なだらかなカーブを描くように、その周囲も切削しま
 す。

3 ゴムを通す穴を加工します。まずは2mmのドリル
 で穴を開けます。
4 次第に穴を大きくしていって、最後は丸の棒ヤス
 リで内部を磨きます。

5 足と手のパーツにはゴムをつなぐ溝の加工を
 します。まずは金ノコで切れ込みを入れます。
6 平らな棒ヤスリで磨き、カッターで面をとる作業
 を行います。

7 手首と足首部分にドリルで穴をあけます。今回は
 アルミ線に合わせて内径2.5mmとします。
8 軸となるアルミ線はパーツの厚さよりやや短め
 に切り出します
9 アルミ線の軸に瞬間接着パテを塗り込んで刺し込
 みます。

10 短めに調整してあるので、残された姉に瞬間接着
 パテを塗り込みます。
11 パテが固まったとことで金ヤスリで磨き、綺麗に
 成型します。
12 金ノコでつくった断面にホワイトサーフェーサーを
 筆で塗り込みます。黄変対策です。

 こちらは透明なウレタン塗料です。扱いは少々面倒ですが、塗膜は自動車の塗装に
用いられるほど強いので、自分の場合には多用しています。


13 画像はすき間にウレタン塗料を吹きつけていると
 ころです。
14 塗膜が乾いたら、長さ10cmほどのナイロンのヒモ
を4本切り出します。
15 これをさきほどのアルミ線の下にくぐらせ、ループ
 をつくります。

   16 Cの形状に成型したアルミ線を取り付けます。これがゴムをひっかける
     フックになります。
   


今回使用したもの:やすり、カッター、ドリル、金ノコ、糸、アルミ線(2.0mm、2.5mm)、瞬間接着パテ
            ウレタン塗料、ホワイトサーフェーサーなど
今回の作業のために購入したもの:ホワイトサーフェーサー(900円)
累計  4500円
今回の作業時間=3.5時間 累計  7.5時間



3 関節の調整
 ここも地味ですが、とっても大切な工程です。結果としてDOLLの完成度を左右
しますので、じっくりと取り組むことが大切です。

  1 図は腰の関節になりますが、2つのパーツをぐりぐりとこすれ合うようにする
   と凸部分は摩擦で光沢が出てきます。
   

2 この部分を240番の布やすりや丸の彫刻刀で削っ
 てゆきます。
3 窪んでいるところいは、柔らかく練った粘土を塗り
 つけます。
4 半乾きぐらいのところで、もういちどこすりあわせて
 具合をみます。

5 もう一方のパーツも同様に処理をします。こちらも
 出っ張っている部分を切削します。
6 窪みを粘土で盛りつけます。この工程を2から3回
 繰り返すと、きれいな関節面になります。

7 膝や肘は、最初に境界面を240番の布やすりで
 みがき、平面を出します。
8 先ほどと同様にぐりぐりとパーツを摩擦して凸部
 を明確にします。
10 先ほどと同様に磨きと盛りを繰り返して、ぴった
 りになるよう調整します。
           
       

11 他の関節も同様に作業をすすめてゆきます。この
 とき可動範囲の確認もします。

 自分の場合頭部は上下2分割で完成させており、2つのパーツはネオジム
マグネットで結びつけています。また鉄のビスを埋め込むことでマグネットピ
アスなどがつけられるように工夫しています。
 
12 直径5mmの穴をリューターでフェイスパーツの
 上下に開けて ゆきます。
13 瞬間接着パテで下のフェイスパーツにネオジム
 マグネットをとりつけました。
  14 穴の調整をしてから上部パーツの方にもネオジ
 ムマグネットを取り付けます。
   

15 ネオジムマグネットの磁力で上下のパーツを組
 み合わせてみました。接続部分に段差があります。
16 スムースにつながるよう、柔らかな粘土を塗りつ
 けます。
17 乾燥したらカッターで切削、最後は240番布ヤス
 リで成型してゆきます。

18 今度は頭部と胴を結ぶフックをとりつけられるよう
 にします。まずはドリルで穴を2つあけました。
19 この穴に合わせて2.5mmのアルミ線を図のような
 形に成型します。
20 瞬間接着パテを穴に塗り込んでアルミ線を取り
 付け、更に上からパテを盛ります。

21 ついでにこの金具に合わせて、アルミ線でS字状
 のフックをつくりました。
22 マグネットピアスがつけられるよう、鉄の木ねじ
 を埋め込む穴もあけておきます。
 

 穴については、耳たぶのほか全部で8ヶ所開けておきます。
但し実際に木ねじを埋め込むのは更に後の段階になります。



23 このほか首の裏にもネオジムマグネットを埋め
 込む穴を開けておきます。

 



4 組み立て
 ますはテンションゴムを通すための穴を開けなければいけません。
 まずは手首と足首からです。
24 ゴムを通す穴を開けています。最初は1.5mm
 ぐらいから始めます。
25 徐々に穴を大きくしてゆきます。フックのとおると
 ころは最終的に5mmぐらいの大きさになります。

 次は胴体部分です。

26 ゴムが通る必要最小限の穴を鉛筆で描き、ドリル
 で穴を数カ所開けます。
27 カッターナイフ等で少しずつ穴を大きくしてゆきま
 す。
28 最後に棒ヤスリで穴の形を整えてゆきます。欠け
 防止のため、面をとった方がよいです。

 次に肘と膝,、股関節。

29 膝の関節です。90°曲げることを想定して、鉛筆
 で穴を開ける部分を描きました。
30 直径3mmのドリルで両端の2カ所に穴を開けます。
31 この穴の間に金ノコで切れ目を入れ、カッターで
 それを拡大し、形を整えます。

32 太股の付け根部分です。ゴムの通り道に5mmの
 穴を開けます。
33 太股を建てた状態で上からとがった針金を射し、
 印をつけます。
34 今度は90°太股を曲げたにして、上から針金を
 射して印をつけます。

35 2カ所の印をもとにして、穴を開ける部分を鉛筆で
 描いてゆきます。
36 膝と同様、まずはドリルで穴を開け、金ノコとカッ
 ターナイフで成型します。

37 首の部分についてはいちばん力のかかる場所なので補強します。
 穴の周囲を部分的に2mmほどリューターで掘り下げました。
38 この部分に瞬間接着パテを流し込んで固め、もとの
 形状に整えます。

 ボディパーツを組み合わせ、ゴムの道筋を計算します。
 下の図は青がゴム、黄色は引っ張り上げる糸を表しています。

 テンションゴムをとりつけ組み立てます。ゴムは上部用が2mmの太さ、下部用は
3mmの太さのものを用意します。

   39 ボディに合わせてゴムを切ります。長さはゴムを引く部分の長さ
    のおおむね75%ぐらいにしています。
   

40 2つ折りにした針金にゴムをかけ、手から胴体へと
 通してゆきます。
41 通し終えたら手のパーツを取り付け、実際に
 動かしてみます。

42 不具合があれば調整します。今回は肘パーツの
 穴が小さかったのでヤスリで大きくしました。

   43 次は脚から胴体の部分をゴムでつないでゆきます。まずは
    下半身部分だけをつなぎました。
   

44 腰の部分から太めの糸でゴムを引っ張り出し、
 上半身を通します。
45 上半身から引っ張り出した糸は用意しておいた
 S字金具に引っかけます。
46 S字金具を更に糸で引っ張って、ヘッドの金具に
 引っかけます。

 これでひとまず人形の形になりました。

 
 
 

  
  

 原型を使うと比較的簡単にこの段階までたどりつきます。
 でも本当の意味での造形はここからです。まだ全行程の1/3、ここから先はいよいよ自分の
つくりたい人形に近づけてゆく造形作業の段階に入ってゆきます。ちなみにこの段階でDOLL
の重さは440gでした。




今回使用したもの:彫刻刀、カッター、布ペーパー240番、ネオジムマグネット、ゴム
今回の作業のために購入したもの:布ペーパー(100円)、ネオジムマグネット(300円)、ゴム(500円)
累計  5400円
今回の作業時間=6.0時間 累計 13,.5時間



                     
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