新作ドール akane の制作記録

10年かけてやってきたことのまとめです




 前作品 mirai はこれまでの作品の中でも最も完成度が高く、自分でも結構満足しているお人形です。(しばらくして不満が出てくるのは
いつものことですが)  自己流ではありますが、それなりに制作方法も確立したのではないかと思います。(しばらくしてもっと良い方法
が見つかることもよくありますが)
 そこで新作ドールを制作しつつ、その制作方法も記録して残しておこうと思い立ちました。ちなみに akane は仮の名前で変更すること
もあるかもしれません。

 自分の場合、現在では次のような工程を経て完成に至っています。
1 原型となるドールの制作
2 原型ドールの型どり
3 型から基本パーツを形成する
4 造形と表面仕上げ
5 塗装とメイク

 今回はすでにできあがっている型を使って完成させますので、解説は「3 型から基本パーツを形成する」という過程からになります。なお
原型製作から型どりまでの過程は次のページにございますので、事前にお読みいただけると全体が把握できると思います。
1 原型となるドールの製作 page104 page105  page107  page087
2 型どり             page166



3 型から基本となるパーツを抜き出す
 まずは型に粘土を詰めて基本パーツをつくります。自分の場合にはシリコーンで型をつくっており、工程を簡略化しています。
 シリコンを型の素材として使用しているのはレジンを使うことも意識しているからで、どちらかというと少数派のように思います。粘土中心で
制作するのであれば、もっと扱いやすい素材もありますので、そちらを選んで良いかと思います。
 ラドールは創作人形の世界では一番多く用いられている粘土かと思います。きめ細やかで緻密、乾燥による変形も少ないです。
 プルミエはとても軽量な粘土で美白、水分量が多く柔らかいという性質を持っています。また乾燥後は高い強度を持ちます。ただ乾燥ととも
に粘土が大きく収縮し変形してしまうという欠点もあります。
 ラドールにプルミエを混ぜて使うと、柔らかさが増して扱いやすくなることから、これを製品化したのがラドールプレミックスでこちらは両者の
中間的な性質を持っています。
 自分の場合には更にプレミックスとプルミエを1:1で混ぜたものを使っています。とても軽量で扱いやすいのですが、プルミエが多く配合され
ることから、乾燥による変形をどう押さえるかがポイントになります。前作からこの粘土を用いて、厚さ3mmで成形し、乾燥させながら組み立て
てゆくという方法で変形や収縮の問題を解決しました。



1 シリコンの型です。ここに示したのはその一部です。
 使用前に簡単に水洗いして乾燥させます。
2 2種類の粘土を混ぜて練り込みます。その後に
 おおむね3mmぐらいの厚さに延ばします
  3 カッターなどで大まかに形を成形しながら、型に
 合わせて詰めてゆきます。

    4 このまま半乾燥状態になるのを待ちます。全体はまだ柔らかいのですが、
    表面部分は硬くなっているというのが目安です。
    



 上下のパーツを接着するためには水で柔らかく練った粘土を接着剤がわりに使うのが一般的かと思います。ただこの場合には接着力が弱
く乾燥までに時間がかかるので、ひび割れや変形の原因になることもしばしばです。





    5 瞬間接着パテで上下のパーツを張り合わせます。おおむね
    2分ぐらいで固まる程度に調合するのが目安です。
      

    6 表面が乾いてきたらひっくり返して、反対側を乾燥させます。これを
     数回繰り返し、あとは1週間ぐらい放置して完全乾燥させます。
    

 このへんのコントロールは経験と勘かな。長いことやってると身に着きます。瞬間接着パテが硬化して「骨」の役割を果たし変形は
少ないです。また粘土を薄くしているので乾燥も早いです。

    7 別途、シリコンの型にレジンを流し込んでキャストパーツを抜き出します。
     (このあたりは別のページを参照)
    


 自分の場合には全18パーツのうち、特に破損しやすい手足と肘はレジンパーツに置き換えてしまいました。手足の指先は転倒などの
トラブルで簡単に破損してしまいます。以前は針金をなかに通すなどの工夫をしていましたが、それでも破損は防ぎ切れませんでした。
キャストパーツに置き換えることで、実用性は格段に進歩しました。粘土にこだわることより、
壊れない人形作りをすることのほうがずっと
大切だと思います。



 これがお人形を構成する18パーツです。一つの原さえあればそれほど時間を要さなくてもここまでたどりつけます。一つ一つゼロから
作り出すのも良いでしょうが、いろんなものを作ってみたければ、完成させたお人形を原型として型をつくるのはとても有効な方法です。



今回使用したもの:シリコンの型、ラドールプレミックス(×2)、プルミエ(×2)、瞬間接着パテ、
            塩ビパイプ、レジンなど
今回の作業のために購入したもの:ラドールプレミックス(500円×2)、プルミエ(500円×2、
            瞬間接着パテ(1500円)、レジンなど
累計  3,600円
今回の作業時間=6.0時間 累計  6.0時間





4 造形と表面仕上げ

 基本的なパーツがそろったところではありますが、これをきれいに組み立てただけで完成とはなりません。ここからが本当の創作部分に
なります。原型はあるものの、それとはまた違う作品に仕上げてゆきます。おそらく原型のラインが残るのはレジンのパーツだけです。
まあプラモデルを組み立てるみたいなものかな? 素で組みあげる何倍もの時間をかけて完成させます。
 まずは基本パーツの修正を行います。ここで用意したのが2種類の粘土です。



 右側は先ほど紹介したラドールプレミックスとプルミエを混ぜてつくった粘土に、少量の水を加えて練ったものです。こちらは通常の造形に
用います。
 左側は更にモデリングペーストを20%ほど加えたものです。パテほどの粘着力はないものの、乾燥してしまった粘土にもよくなじみ、乾燥
すれば適度な硬度を持って削りやすいという利点があります。またモデリングペーストと粘土の割合を変化させることで、その硬さやヤスリの
かけやすさを調整することもできます。(以降、混合粘土と呼ぶことにします)
 こういった材料や素材の組み合わせって、作業効率を大きく変化させるので、常日頃からもっと良いものはないかと考えています。この組み
合わせを見つけたのは最近なのですが、混合粘土は何にでも良くなじみ、修正やリメイクなどのスピードは劇的にアップしました。



8 まずはパーティングラインをカッターナイフなどで
 削ってゆきます。
9 隙間があれば瞬間接着パテを流し、窪みは混合
 粘土をで補ってゆきます。
 



 次はレジンのパーツです。粘土とは異なり水性の絵具にはなじみません。ですから、平滑に仕上げるのはもちろんのこと、粘土のパーツと
同様に扱えるよう下地をつくってゆきます。

10 湯口につながるところはニッパーで、通常のバリ
 はカッターナイフで削って形を整えます。
11 気泡があれば瞬間接着パテを流し込んで埋め
 ます。
  12 あとは400番ぐらいの耐水ペーパーで磨いて
 仕上げます。

13 下は肘のパーツです。3mm径のドリルでゴムの
 通る穴を開けます。
 



 表面はモデリングペーストをベースにした下地塗料を塗って仕上げます。モデリングペーストにリキテックスのアンブリーチドチタニウムを
10%、ライトボートレートピンクを3%ぐらい混合したものをベースにしています。



 以前はジェッソも混ぜていましたが、粘りと強度は増すものの、やすりが入りにくくなるのでやめました。



    14 下地塗料を塗って乾かします。
    



15 ラインの修正は強度のある混合粘土を使って
 行います。
16 これをリューターや耐水ペーパーで磨き、再び
 下地塗料を塗って乾かします。
  17 ゴムにつなげるための溝を切っているところです。
 カナノコを入れたあとはやすりで磨きます

18 軸を通す穴を開けています。直径2.5mmのドリル
 を使います。
19 太めのナイロン糸を20cmぐらいの長さに切って
 溝に通します。
  20 直径2.5mmのアルミ線を1.5cmぐらいの長さに
 カットし、両端の角を棒ヤスリでやすりで丸めます。

21 アルミ線を穴に通したら、混合粘土でその跡を
 埋めます。
22 直径2.5mmのアルミ線をCの形に加工したものを
 結びつけます。
  23 ほどけないように接着剤を結び目に塗ってます。
 あとは全体を下地塗料で再度塗って仕上げます。

 考えたらここは順番が逆だね。金具の取り付けを行ってから下地塗料を塗った方が良いね。今度からそうします。



 次は関節部分を仕上げて仮組みまで一気にすすめます。
 なぜ先に関節なのかというと、ボディラインのすべては関節のある部分に制約を受けるわけで、ここをきちんと仕上げておかないと、造形の
作業の意味がなくなってしまうからです。

24 まずはパーツをぐりぐりと回してみます。当たって
 いるところは磨かれてつやが出ます。
25 当たっていないところを中心に、粘土を塗り付け、
 乾いたら240番の布ペーパーで磨きます。
 

 この作業を関節全体が均等に当たるようになるまで繰り返します。
 解説は腰ですが、他の関節でも同様の作業を行います。

 



 ちなみに膝の関節は球形にしていません。下の図のピンク色の部分は平らにしています。

 

 こうしておけば本来あり得ない横方向の回転をふせぐことができます。



    26 次はまた細かな作業なのですが、関節部分の段差をなくしてスムースにラインが
      つながるように加工します。
     

 とりあえずすべての関節で調整を行い、パーツを並べてみます。うん大丈夫だね。

 



 次は自分のドールの特徴でもあるマグネット仕様の加工です。

27 ヘッドの下部パーツに直径5mmのマグネットを埋
 め込んだところです。接着は瞬間接着パテです。
28 同様に上部パーツにもネオジムマグネットを埋め
 込み、パーツのつなぎ目を修正します。
  29 首の裏側にもネオジムマグネットを埋め込み
 ました。

 ヘッドパーツのマグネットは容易にヘッド部分を取り外したり、アイを交換するためのもの。首裏のマグネットは、鉄でできたものが
壁にあれば簡単にスタンドなしでもドールを立たせることができるようにするものです。便利です。
 このほかにも10ヵ所ほどに鉄のビスを埋め込みます。マグネットピアスなどを取り付けられるようにするためです。



30 ドリルで穴を開け、上が平らなねじを埋め込み、
 最後は混合粘土で平らにならします。
31 バストトップだけは2.5mm径のボールベアリング
 を使い、瞬間接着パテで固定します。
 

 



 次はテンションゴムの取り付けを行うために、その受けの部分と穴の加工を行います。

32 ヘッドにひもを通す穴を開けているところです。
 まずはドリルで穴を開け、カッターで形を整えます。
33 直径2.5mmのアルミ線を加工します。上のM字型
 は下のフックを受ける部分です。
34 ヘッドパーツに穴を開けてM字の金具を接着、
 そのあと粘土を盛ってぎりぎりまで埋めます。

35 ヘッドの取り付け部分は大きな力が働くところな
 ので、ここはエポキシパテで受けをつくります。
 



    36 ボディ部分の穴あけ加工をします、ゴムの通るラインや可動範囲を
     考えながらの作業となります。
     


 正直、ここはかなりの経験と注意力の必要なところです。慣れないうちは何度もゴムを通して、少しずつ穴あけ加工を
した方が良いと思います。
 ちなみに自分の場合には、強度がなくなるのが嫌なので、
穴を開ける面積は最小限にしています。またそうすることで
ポーズが決まりやすくもなります。
 大きな穴にすると、立たせたときお人形がぐらぐらする > それを防ぐためにゴムのテンションを上げる > 組み立てに
くくしかも関節部分の摩耗が激しくなる・・・。 こういう悪い循環がはじまります。
 ちなみに自分の造るドールは最近では500gを切る軽さです。これによってゴムのテンションを下げることもできるし、軽い
ので転倒などのトラブルによる破損の危険性も低いです。
軽量なことのメリットは大きいです



    37 ゴムはゴムでつなぐ長さのおおむね80%ぐらいで切ります。上半身は2mmぐらいの径のものを二重にして、胴体
     と足をつなぐものは3.5mmぐらいの径のものを一重で使います。
     

    38 自分はゴム引きでなく、普通の針金を使ってゴムを通しています。
    

 


     40 とりあえず無事に仮組が完了しました。ただ膝と股関節の可動範囲が狭すぎた
      ので若干の修正を加えます。
     

 横にしてもポーズが崩れないのはちょっと嬉しい。頑張った甲斐がありました。
 さて一見、色を塗ればもうほとんど完成の感じがしますが、ここからが重要なところです。プラモで言えば、キットをただ組み立てた
だけという状態です。



 

 この段階でいろいろ動かしたり、ポーズをとらせたりして次の造形のプランを練ります。
 まだまだ完成までは時間がかかります。



今回使用したもの:彫刻刀、カッター、布ペーパー240番、ネオジムマグネット、ゴム、リキテックス、
            モデリングペースト、テンションゴム
今回の作業のために購入したもの:布ペーパー(100円)、ネオジムマグネット(300円)、ゴム(500円)、
            モデリングペーストとリキテックス(おおむね2000円分ぐらい)

         
累計  6500円
今回の作業時間=10時間 累計 16.0時間





 今現在の状態から、表面のキズや凹凸を修正すれば、すぐにも原型に用いたドールと同等のボディラインが得られます。でもそれでは
単なる作品のコピーに過ぎません。今回はこのパーツに粘土を盛ったり削ったりして、現在考えうる最良のボディラインを持つドールをつくる
ことにしましょう。
 前作品の mirai を一歩進めてメリハリのあるボディにするつもりです。手首と足首を細く削る一方で、筋肉部分には粘土を盛ってアスリート
体型に近づけようと思います。
 完成度の高い原型ではありますが、場合によっては、たとえば脚のパーツを延長したり、 切りつめたりして、全く異なったバランスのドールを
制作することも検討します。ちなみにカスタマイズ可能な球体関節人形のキット(パジコ社) も発売されていますが、ここから先はこういった
人形制作の参考になると思います。
 自由な発想で、試行錯誤を繰り返しながら作品を少しずつ完成品に近づけてゆきます。ただ
基本的に関節部分をいじることはしません。それ
をやってしまうと、本当に全体のバランスが崩れてしまうので。この制作方法のネックはここにあると思います。


    41 鉛筆で粘土を盛る部分には[+]の印をつけます。数字は粘土を盛る厚さです。削る部分は[///]の印を
     つけることにしています。これが終わったらいったんばらばらにします。
    

42 粘土を盛っています。自分はヘラでなくカッター
 ナイフを使っています。
43 削りはカッターナイフ、もしくは120番の布やすり
 を使っています。

44 ひととおり修正したら、再度プランを練り直して
 印をつけてゆきます。
45 乾いたらナイフと布やすりで修正です。そして3回、
 4回とこの作業を繰り返します。

 ここから先は写真を撮っていません。いちばんのポイントとなるところですが、ばらばら状態で少しずつ修正したものをお見せしても
変化が分からないと思いますので。とりあえず最初のプランに到達できたなと思ったところで作業はいったん終了です。
 作業は「造形」の段階から「表面仕上げ」の段階に入ります。もちろん気に入らないところが見つかったり、良いアイディアが浮か
べばすぐさま「造形」の段階に戻りますが。

    46 ちょっと目の細かい240番の布やすりで磨きます。
     感覚的には7分ぐらいの感じで・・・。
    


 ここがポイントになると思うのですが、自分の考えている粘土の盛り方と削り方のイメージです。


 理想的なラインはグレーで示してありますが、粘土を盛った段階ではまだ
不均一な状態にあります。



 削りだけで解決しようと思うと、削りすぎの状態になってしまいます。



そこでおおむね7割ぐらい削る感覚で磨いてゆくと、下のような状況になります。
このとき深い溝は残ったままです。



 今度は深いキズにやや多めに粘土をすり込んで埋めます。



 次にもう一度ヤスリをかけて仕上げます。


 乾燥後、まだ凹凸が残っているようであれば、この作業を繰り返します。基本的に自分の場合にはキズの埋め直しだけでなく、
塗装前の下地づくりについても「7分削りで」対応しています。少なくとも自分の場合にはベストな修正方法です。



 ヘッドだけは別の作業が入るので若干の補足です。

47 アイホールを開けます。今回使っているのは
 刃の角度の小さなカッターナイフです。
48 アイホールをリューターでおおまかに削り、最後
 は12mm径のアイサイザーで整形します。
49 盛る場所と削る場所を決めたら、[+]と[///]の
 マークをつけ、作業開始です。

    50 イージースリップ(現モデリングキャスト)を
     薄めたものを全体に塗ります。
    

 さて顔の部分はとてもデリケートで、特にアイホール周辺は1mmぐらいの薄さになってしまいます。イージースリップを塗る
ことで全体に粘土が引き締まり、固くなり強度が増します。
 また盛りつける粘土についてもモデリングペーストを混ぜ込んだ混合粘土を使い強度を確保します。



    51 アイホールをや瞼、鼻孔、耳など細部の造形
      を行います。
    

 この段階で仮のグラスアイを入れてみて具合を見るのも良いと思います。最近はこの状態のままでも完成したフェイスが
想像できるようになりました。17、18歳ぐらいのややふっくらとした美形に仕上がっていると思います。(分かります?)



 世の中には発掘された骨を見て、「30歳前後の女性、当時としてはやや背が高く、鼻筋の通った美形」などと言い切ってしまう
方もいるようですが、ちょっとその境地に近づいたかな。



今回使用したもの:彫刻刀、カッター、リューター、アイサイザー、布ヤスリ240番、イージースリップ
今回の作業のために購入したもの:布ヤスリ(¥100)
累計  6600円
今回の作業時間=17時間 累計 33時間

 



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