新作ドール iria の制作記録

塗装の工夫をしてみました




 夏の個展に向けて35体目の創作球体関節人形をつくりはじめました。35体目といってもリメイクを含めれば、その倍ぐらいは完成させているので、
この12年で70ぐらい、つまり2か月に1体ぐらいのペースで完成させてきたことになります。
 ただ最近は手間のかかる仕上げをしたり、他のいろいろな創作物を制作するようになって、新規のお人形は久しぶりになってしまいました。

前回作 akane はこれまでの作品の作品の集大成として制作したもので、その詳細な制作方法も記録として残しています。
  
akane の制作 page688
 今回の新しい創作球体関節人形は塗装とコーティングについて、新しいアイディアに基づいて見直したもので、制作方法については、
ほとんど変わっていません。そういう理由で途中過程につては簡便な解説のみにとどめていますので、まずは上記のページをご覧いただく
ことをおすすめします。
 また過去の制作の記録の中で参考になるページとして
 原型となるドールの製作 page104 page105  page107  page087
 型どり             page166
 
フィールドライン      page565
 などのページが参考になるかと思います。



1 型から基本となるパーツを抜き出す
 まずは型に粘土を詰めて基本パーツをつくります。自分の場合にはシリコーンで型をつくっており、工程を簡略化しています。
 また使用する粘土はプレミックスとプルミエを1:1で混ぜたものです。とても軽量で扱いやすいのですが、プルミエが多く配合される
ことから、乾燥による変形をどう押さえるかがポイントになります。



1 まずはラドールプレミックスとプルミエを1:1の割合
 でブレンドします。けっこう力と根気が必要です。
2 練り込んだ粘土を、おおむね3mmぐらいの厚さに
 延ばし、型に押しつけてゆきます
  3 半乾燥(表面が乾いたぐらい)のときに、瞬間接着
 パテを接合面に塗り、パーツを接着します。

    4 このまま乾燥させます。片面が乾いたら裏返して
    完全に乾燥させます。
    

 これは型から粘土のパーツを取り出す直前の状態です。レジンならこのまま軽く塗装して完成というわけですが、粘土だとそうは簡単に
ゆきません。歪みの修正やら穴あけ、磨きなどたくさんの行程が必要です。それに毎回毎回、同じ人形を作り続けるのは進歩がないので、
ボディラインや顔立ちはその都度変えます。だからここはまだすべての行程の10%といったところです。

 完全乾燥を待つ間にレジンパーツを仕上げてゆきます。自分の場合、破損しやすい手足と肘のパーツはレジンキャストしたものを使って
います。(粘土であることにこだわりはないです)

5 中性洗剤でまずはパーツを洗い、乾燥後にバリ
 や湯口を削り落とします。
6 気泡はジェッソとモデリングキャストを練り合わせ
 たパテで埋めてゆきます。
7 余分なパテを削り落とし、460番ぐらいの布ヤスリ
 で形を整えます。

8 糸を通す溝と、その糸を固定するアルミ線のため
 の穴を開けます。
9 ナイロンの糸を通して、結び目を接着剤で固定し、
 解けないようにします。
10 ゴムをかけるフックは、2.5mm径のアルミ線をCの
 形状に加工したものです。

    11 全体に400番の布ヤスリをかけたあと、ジェッソを
     塗ります。
    

 ジェッソを塗る理由は2つで、これを塗ることで他の粘土パーツと同様に水性のカラーで着色できるようになることと、レジンは
黄変しやすいので、その変化を見えなくするという目的があります。



 ただ今乾燥中です。
 DOLL制作はその実際の作業時間より、乾燥のための待ち時間や観察時間のようなものがずっと長くなってしまいます。
だから自分の場合には、こんな感じで並行して3つぐらいの制作をすすめていたりします。



 とりあえずすべてのパーツが乾燥しました。これがお人形を構成する18パーツです。
 一つの原型さえあればそれほど時間を要さなくてもここまでたどりつけます。ここには書きませんでしたが、やはり最大の問題は原型に
なるお人形を何とか1つ作り上げるということだろうと思います。ただそのお人形は決して自分の理想とするものでなく、ある意味人の形
であれば何でも良いと思います。



 造形と表面仕上げ

 基本的なパーツがそろったところではありますが、これをきれいに組み立てただけで完成とはなりません。ここからが本当の創作部分に
なります。原型はあるものの、それとはまた違う作品に仕上げてゆきます。おそらく原型のラインが残るのはレジンのパーツだけです。

12 型に詰めた粘土の残りに木工ボンドと水を加えて
 練ります。これがパテになります。
13 これを接合面の隙間やパーツの凹部に埋め込ん
 でゆきます。
14 更に今回は足を2cm延長するという修正を加をして
 います。



 今回はこれまでの作品づくりから変更する部分が部分が2つあります。
 一つは前回 asumi のリメイクで試してみたパールとクリアブルーの下地塗装を工程として完成させることと、もう一つはボディラインを
修正して、これまでより手足の長い小顔な感じに・・・、理想を言えばトリンドル系でまとめてみたいと思っています。

 ここで以前にこのサイトで解説したフィールドラインについてのおさらいです。



 こちらは3年前に制作した aimi (56cm)の塗装前の画像です。最近制作しているDOLLとしては標準的なボディラインです。
SDに比べるとボリュームがあってけっこう大人っぽい感じですが、実際はウエストラインだけを絞って、数字の上でのバスト
サイスは同程度です。
 ですから見た目の印象はL胸でもSDのお洋服はすべて着せることができます。(似合う似合わないの問題はありますが)
 ただ一方でバランスをとるためにヘッドは小ぶりにしており、こちらはほぼMSDと同じウイッグサイズになっています。




 さてここであえて画像処理ソフトGIMPでヘッド部分だけをSDサイズに拡大し、画像合成するとこんな感じになります。明らかに
頭が重くバランスが悪く見えてしまいます。
  (黄色い線は拡大した割合をビジュアルに表現したもの、これをフィールドラインと名付けました)




 こちらは別画像です。
 こちらも同じくヘッドをSDサイズに拡大して合成したものですが、前の画像に比べればずっと自然な印象です。こちらの画像はヘッドに
連動してボディの上の方を拡大し、フィールドラインがつながるように画像合成しています。全体として7.5頭身だったバランスは6.5頭身ほど
になり、結果として子どもっぽい感じにまとまりました。
 ということで、パーツ個々の見直しは結果として全体のバランスの問題に波及する。その際、大切なことはフィールドラインをスムースに
連続させるということがお分かりいただけたでしょうか。




 もちろんこの逆をおこなえば大人っぽくモデルさんのような感じになります。ただ手足の先端は大きくすると見栄えが良くないので手首足首
から先はこれまでどおりのサイズが良いでしょう。またヘッドは上に向かってやや大きく発散させる形にすると、幼さのようなものも残せるに
違いありません。
 ということで、これが新作の設計図となります。



 今回の球体関節人形ですが、型から抜き出したパーツを組みあげて、とりあえず人形の形にしてしまいます。まずは固定式の人形をつくり、
それを切断して関節をつくるという方法もありますが、自分の場合にはまずは
関節部分だけを仕上げて仮組みまで一気にすすめてしまいます。

15 基本的には出っ張っているところは削り、足りない
 ところは盛るという作業です。
16 この作業を関節全体が均等に当たるようになる
 まで繰り返します。
 





 上の画像は腰の部分で分割された2つのパーツをすり合わせた後の状況です。強くこすれているところは光沢が出るので、ここは削ります。
まったく当たっていないところは逆に陰になるので、ここには粘土を盛ります。

17 ドリルで少しずつ大きな穴をあけて、ゴムを通す
 部分を貫通させます。
18 この穴をガイドにして、ゴム穴をカッターナイフ
 などで開口します。
19 首のジョイント部分は最も大きな力の加わるところ
 なのでエポキシパテで補強しました。

 全体はテンションゴムでつなぎ合わせるのですが、そのラインをイメージしながらゴムを通す部分を切削します。画像では縦に長いホールに
なっていますが、一般には可動範囲に余裕を持たせるため、このホールを円形に大きく開けている作家さんが多いようです。
 自分の場合にはきちんとポーズを保持できるようにするため、ホールの大きさは必要最小限にしています。


    20 ヘッドはアイや睫の交換が可能なように上下で分割
     しています。接続のためのネオジムを埋め込みます。
    





 次にテンションゴムで全体をつなげます。パーツを並べて全体として必要なゴムの長さを計算します。
 上の図で青い文字はゴムをつなげるフックの形状をあらわしています。

    22 ゴムはゴムでつなぐ長さのおおむね80%ぐらいで切ります。上半身は2mmぐらいの径
     のものを二重にして、胴体と足をつなぐものは3.5mmぐらいの径のものを一重で使います。
    

 関節をきちんとつくり、バランスがとれていればドールは必ず自立します。(もちろんこのドールもOK)
 次にそのまま横に寝かせてみます。関節のつくりが完璧ならこれでも直立姿勢は保たれるはずですが、このドールは右膝と左肩の
つくりがちょっと甘いみたいです。(要調整)


    23 とりあえず無事に仮組が完了しました。ただ膝と股関節の可動範囲が狭すぎた
      ので若干の修正を加えます。
     

 上の画像は精度的に問題の合った右膝と左肩の関節を微修正しているところです。テンションゴムはつなげたまま作業をしていますが、
この方が具合を確認しやすい。
 ご覧いただくとお分かりいただけると思いますが、膝関節は球体ではないです。やや押しつぶしたような形にしているのは縦方向にのみ
可動させ、横方向の回転を抑えるようにしているからです。





 こちらは関節の修正後の状態です。
 さて一見、色を塗ればもうほとんど完成の感じがしますが、ここからが重要なところです。プラモで言えば、キットをただ組み立てた
だけという状態です。
 この段階でいろいろ動かしたり、ポーズをとらせたりして次の造形のプランを練ります。まだまだ完成までは時間がかかります。



24 イメージしたボディラインを整えるため、粘土を
 盛るところと削るところをチェックします。
25 粘土には少量の木工ボンドと水を加え、練り込ん
 だものを使います。


 造形の一方でマグネット仕様にしあげてゆきます。

26 首の裏側に直径5mmのネオジムマグネットを埋め
 込みます。
27 耳たぶの部分には鉄の釘を埋めます。これらの
 接着は瞬間接着パテを用いています。

 首裏のマグネットは、鉄でできたものが壁にあれば簡単にスタンドなしでもドールを立たせることができるようにするものです。
 また耳たぶの釘はマグネットピアスなどを取り付けられるようにするためです。



 このほかにも釘は全身10カ所に埋め込んであり、様々なアクセサリー等が取り付けられるように工夫しています。


28 思ったようなボディラインが整ったところで、表面を
 平滑にする作業に入ります。まずは削る。
29 粘土の足りないところは盛り、乾いたら240番ぐらい
 の布ヤスリで磨きを入れます。あとはこの繰り返し



 次はヘッド部分の造形です。ここはいちばん時間のかかるところです。



 ちらは1回目の盛りと削りが終わって、これから表情や個性のようなものをどうやって出してゆくか考えているところです。
 ここでまたフィールドラインがまた関係してきます。




 こちらは以前に自作した球体関節人形です。黄色い線はフィールドラインで上に発散するような形状になっています。具体的には
目が大きく口が小さめという、一般的なお人形が持っているラインとほぼ同じです。
 緑色はフィールドラインに直角に交差するもので、この空間の水平線を表現しています。これをレベルラインと呼ぶことにしました。
 フィールドラインが縦のまっすぐな線でなければ、当然レベルラインは曲線になります。この場合、水平線は下に垂れ下がった形状
になるので、目の傾きもこれに合わせてやや「たれ目」にしてあります。もしこれをしないと目は吊り上がった印象になってしまいます。




 逆にフィールドラインにを上に向かって収束させ、大人っぽい感じに仕上げようとすると、レベルラインは上に吊り上がった感じになる
ので、目尻をやや吊り気味にするとニュートラルな感じに仕上がります。





 今回はややあどけなさを残そうと思っているので、頭頂部をやや拡大するように修正しています。ここから先を言葉にするのは難しい
のですが、方向性としては目尻は下げ、口はやや小さめに変更・・・。思いつくままその他もろもろの細かな造形を行ってゆきます。
 そしてアイホールはほんの少し拡大し、彫り自体はやや深め、頬は少し削ってエキゾチックな感じに。そして口はやや開き気味にして、
ニュートラルな表情でありながら、少し微笑んでいるようにも見える・・・。ここはもう感覚的なものですね。




 今回、肘の関節は形状を改めて可動範囲を大きくし、また全体を小さなものに置き換えました。ボディラインのメリハリをつけるには関節部分は
少し小さめの方が都合が良いです。(まあ、これも全体のバランス次第ですが)




 盛る、削るの作業を開始して1週間ほどでイメージしていたボディラインが出来上がりました。関節の方も精度が上がりました。このあといったん
バラバラの状態に戻し、パーツ一つ一つの完成度を上げて行く作業に入ってゆきます。


    30 いったんは仕上がった関節ですが、ボディラインをいじったので、パーツ間のつながりを
     調整する作業をします。(基本はここも盛りと削り)
     

   31 これが終わったら、パーツ個々の磨きに入ります。細かな窪みやキズは粘土で埋め、
    やや細かな400番ぐらいの布ヤスリで磨きます。
     





 地味な作業をほぼ2週間、やっとここまできれいになりました。
 でもまだまだ平坦化の作業は続きます。

    50 イージースリップ(現モデリングキャスト)を水で薄め、これを少し含ませたスポンジで
     全体を磨いてゆきます。
    

 これで布ヤスリによる表面の毛羽立ちが抑えられ、細かなキズがみえるようになります。
 またイージースリップは表面を硬くする効果があるのでデザインナイフでの切削もやりやすくなります。


    51 これまで見えなかった細かなキズが見えてくるので、ボンドを少し混ぜ込んだ粘土で
     これを消します。その後は再びヤスリがけです。
    

 2回ぐらいこの作業を行うと、表面はほぼ完全に平坦化します。


    52 再びヘッドの細かな造形を行います。この段階でアイホール
     も開けます。
    

 イージースリップで表面の強度も増しているので、まぶたも1mmぐらいまで削り込めます。口元や耳、鼻孔などの
形状も整えます。



 

 個々のパーツの磨きが終わり、全体をもう一度チェックします。2cm足を延ばしただけだけど、これまでとはかなり印象が違うね。
今回はここまでです。このあとは下地塗装からメイク、コーティングと作業はすすみます。



<ここから後編です>

造形の終わった新しい球体関節人形ですが、ここから先は下地作りと塗装の工程に入ってゆきます。画像をお見せするのが申し訳なく
なるような、とても地味な作業の繰り返しです。

   53 下地をつくるためのベース塗料を調合します。
   

 下地作りに使うのはモデリングペーストにリキテックスのアンブリーチドチタニウムとライトポートレイトピンクを混合して、淡い肌色に
仕上げたもの。配合比率は別に計っているわけではないですが、96%:3%:1%ぐらいの配分かな。

54 これをまずは全体に筆で3回ほど塗ります。刷毛目
 が出てしまうようなら、水を加えましょう。
55 乾燥したら400番ぐらいの布ヤスリで磨きます。
 そして再び下地塗料を3回ぐらい塗る。

56 乾燥したら、今度は中目のスポンジヤスリで磨き
 ます。これを平坦になるまで繰り返します。
57 細かなところは紙やすりを丸めて磨いてゆきます。
 ここは力の入れすぎに注意です。

 この作業で細かなキズや凹凸はこれでほぼ完ぺきに消えます。
 注意するのは磨きですべてを片付けようとしないこと。下地が出てしまったらおしまいなので、磨きは7分ぐらいのつもりで行い、
残った凹部には再び下地塗料を塗って、次の磨きで平坦にするという感じです。ここは経験が必要なところかもしれません。


   58 下地塗料で消えてしまったモールドをデザインナイフで復元し、
     耳や瞼などをつくり込みます。
   

 この下地塗料が優れているのは、やすり掛けが可能だということと、ベースになっている粘土(ラドールプレミックス+プルミエ)と
硬度がほぼ同じで切削性に優れることです。
 だからこんな感じで目の輪郭や指先などもデザインナイフで微細な工作も可能です。
 いわゆる溶きパテよりずっと扱いやすい。もうこの下地塗料なしでは人形がつくれません。


   59 上塗り塗料を調合します。本塗装は下地塗装のモデリングペーストを
     チタニウムホワイトに置き換えたもので行います。
   

 2つの塗料の色合いは全く同じです。基本的にモデリングペーストのざらつきを抑え、全体の色合いをすべて同じに整えるために
行います。


60 上塗りは最初に3回程度。影の部分や関節はやや
 赤みを増した方が、よりリアルになります。
61 続いてこの塗料に少量のパール粉を混ぜて更に
 2回程度塗ります。

 パール粉を混ぜるのは、肌の内側から輝くような感じにするための工夫ですが、見た目はほとんど分からないです。
 アンティークな感じのドールの場合には、肌色の下に反対色の緑色を塗っている場合も多いようですが、自分のつくる
DOLLの場合にはあまり重厚感は必要ないので行っていません。

 

 仕上がったところがこちらの画像です。  従来より足を2cmほど伸ばし、すらりとしたボディラインになっています。
このあとメイクを少しずつすすめながらコーティングをしてゆきます。
 一般的にはここまでくるとメイクして仕上げ塗料を吹き付けて終わりなのでしょうが、まだまだここから先が長いです。


62 まずはシリコン変性高耐久ラッカースプレーつや
 消しクリアーを全身にまんべんなく吹き付けます。
63 塗膜に入り込んだ埃をデザインナイフで取り除
 いているところ。

 この先は常に埃との戦いになります。部屋をきれいにすることはもちろん、換気には注意しつつ埃をたてない、色の濃い
衣服を着て作業しないなど、気をつけなければならないことはいっぱいあります。




 まずは関節部分の吹き付けをすませ、少しパーツを組み上げてから作業をすると効率がちょっと良くなります。
 2回ほど吹き付けたところで、最初のボディメイクに入ります。





   64 最初に吹き付けるのはクリアーブルー! これで皮膚の深みのようなものを表現できます。
     また吹き付け方によっては静脈の流れも再現できます。
    

 クリアブルーはむちゃくちゃ薄めて、ボディの陰になる部分などに不規則に吹き付けます。
 左上の画像はその調整と練習をしているところ。この色は基本吹き付けているなって分かるようじゃダメです。
よっく見ると何か色がもやもやしているなってぐらいの着色です。


   65 次にクリアーレッドとクリアーオレンジを混ぜ合わせたもので血液の表現をします。これを関節や
     指先などに吹き付けます。
    

 内またなど血管の浮き出ているところには、それと分かるように上の画像のようにめらめらと表現をしてゆきます。




 ここは太腿の内側を拡大したところ。遠目には濃淡がついているのが分かる、近寄ると血液の表現がしてあるのが分かる
ぐらいがベストかと思います。
 ときどき関節部分をはっきりと赤く着色しているドールを見ることもあるけど(それが良いとか悪いとかでなく)、自分の場合には
あくまでもナチュラルな仕上げをしようと思ってます。


   66 再び高耐久ラッカースプレー つや消しクリアー(こればっかりですが)を
    全体に吹き付けます。
   

 吹き付け作業は関節部分は関節がぴったりと合うようになるまで、それ以外の皮膚の厚みのあるところは十分な透明感が出るまで
行います。今回はスプレー缶2本使い切りました。塗装膜の厚さとしては0.3mmぐらいにはなっていると思います。
 けっこう粘りと強度のある塗装膜なので表面の保護の役割も充分に果たしていると思います。



67 全体をスポンジヤスリで磨きます。これは最後の
 コーティングの準備なのでさっと磨くだけで充分です。
68 手足のモールドが甘くなったところをデザインナ
 イフで復元します。
69 Mr.カラーで爪の輪郭を描きます。その内側は
  ピンクのグラデーションで変化をつけます。



新しい球体関節人形は少しずつ作業が進み、やっとドールアイとウイッグを選べるような段階になりました。

   70 細い眉毛を描き、軽く唇を着色。この状態で、
    いろいろなアイやウイッグと組み合わせてみます。
    

 自分の場合、数百円の安いグラスアイとパラボックスさんで購入したごく普通のウイッグをたくさんストックしていて
そのなかから選ぶようにしています。
 1体のお人形をつくるために、そのつど特別なものを購入するという考えもあると思いますが、実際に組み合わせみたら
イメージの合わないなんてこともあります。自分としては経験上、安価でもたくさんなかから選んだ方が良い結果が出る
ように思っています。(その方がダメージも少ない)

 

 


 ドールアイとウイッグの組み合わせを検討するときには、必ずいっしょに撮影も行います。



 撮影したらすぐにモニターで確認。とっかえひっかえ比較するより、この方が効率的かつ客観的です。




 それらを比較し選んだのが、こちらのラメの少し入ったゴールド系のアイとナチュラルブロンドの組み合わせです。
今度はこれに合うように全体を調整したりメイクを行います。


71 まずはMr.カラーのつや消しクリアーを吹き付け、
 目頭と唇にピンクをのせました。
72 アイホールの上側にダークブラウン、下側に濃い
 目のピンクをのせて、アイラインを整えます。
73 頬にピンク、上瞼にフレッシュを軽く吹き付けた
 ところです。この段階ではお化粧は最小限です。

 けっこう厚めにコーティングしているので、塗料のはみ出し程度の失敗なら、デザインナイフで欠いたり、スポンジ
やすりを軽くかけたりで修復することは可能です。




 とりあずアイとウイッグを取り付けて再確認です。必要最小限のことしかしていませんが、けっこう良い感じ
に仕上がっています。
 ただ最初の予定とは違って、少しきりっとしてクールな美人さんになりそうです。


74 アイに合うようにリューターで少しアイホールの
 形を整えているところです。
75 ウイッグを固定するために、マジックテープのざら
 つきのある側をヘッドの上部に貼り付けます。



 実のところDOLLづくりに熱中していると忘れがちなことが一つあります。それは保管の問題です。
 DOLLはそれなりの強度を持っていますが、やはり放置しておくと埃もかぶるし傷つくのも怖い。だから完成した時点で
それを保管する箱などはすでに準備ができている必要があります。

   76 保管箱をつくっているところです。
   

 そしていろいろ探して(自分でつくったこともある)たどり着いたのがこちら。
 そもそもは一升瓶の輸送用の箱です。用途が用途だけに強度は十分で、内部を保護するような構造になっています。自分の場合には
天地にスポンジを貼り付けて更に安全性を高めています。サイズ的にも1/3DOLLにはぴったりで、DOLLが中であばれてしまうようなことも
ありません。あとドールの一般的な箱なんかよりずっとコンパクト(半分以下の体積)なので、収納も場所をとりません。


   77 色移りや摩擦からドールを守るための袋をつくってます。
   

 素のままでDOLLを入れるわけにもゆかないので、包むものも用意します。
 こちらはサテンを60cm幅に切り、端を処理してから三つ折りにし、底の部分(画像の黒い線の部分)を縫い合わせたものです。この袋と少量の
プチプチでドールを包めば、収納方法としてはほぼ完ぺきだと思います。

 ここから先は最終コーティングと組み立てに入ります。
 高耐久ラッカースプレーは高い保護作用はありますが、DOLL用の上塗りとしては少しつやが残りすぎています。そこで更にこの上にウレタン
クリアーを吹き付け、完全につやを消します。

78 2液混合タイプのウレタンクリアーに艶消し材を
 混ぜ、全体に3回ほど吹き付けます。
79 全体のつやが消えてしまうので、Mr.カラーのス
 ーパークリアーをに塗ってつやを出します。
80 24時間の完全乾燥を待って、組み立てます。
 落下が怖いので床上で作業します。

 このウレタンクリアーは自動車の塗装に用いられるほど強い塗膜で、保護効果や経年劣化に対する能力は抜群です。
(メイク消し程度なら、少量のシンナーを使っても大丈夫) この作業が完了すると、レジンフィギュアのサフレス仕上げに近い感じになります。
 問題は3つ。一つは塗料自体がやや高価で入手しづらいところ、そして強度が高いがゆえに吹き付け器具の洗浄がけっこう大変なことです。
以前は高耐久スプレーを使わず、すべてのコーティングをウレタンでやってましたが、それだとさすがに手間がかかりすぎです。
 問題の最後の一つは汚れを拾いやすいことです。とってもきれいで強度のあるつや消し仕上げになるのですが、その分、埃や汚れを拾い
やすいです。洗浄するのも面倒なので、ここから先は手袋をしながら作業します。



 

 関節の完成度はこれまででいちばんです。もちろん自立もします。
 あと全体を重さ470g(タマゴ3個分)で仕上げているので、接続に3mm径のごく普通のゴムをシングルで使用しても、このとおりポーズを維持する
能力が高いです。


 ここから先、最終的なメイクを行います。ウレタンでコーティングしているので、気に入らなくなったらやりなおすことも可能です。
 メイクはすべて人間用の化粧品を使います。

81 チークで頬に赤みを、上瞼にブラウンをまずは
 軽くのせてみました。
82 これでいいなって思ったら、Mr.カラーのつや消し
 クリアーを吹きます。これを何回か繰り返します。
83 市販のドール用睫毛を切り取って貼り付けます。
 下側の睫毛は筆で描きます。


    84 再びウイッグとアイを取り付けて確認です。必要に
     応じて修正してゆきます。
    

 顔はやはり人形作りの最大のポイントになるので、ここは手間をかけます。まずは撮影しモニターで確認します。
 自分のお気に入りのお人形をつくろうとしていると、なぜか思った以上に可愛く見えてしまって、欠点に気づかないことって多いです。
そこで客だから客観的に見るためにも撮影することは絶対に必要です。

 

 黄色い色のところは最初に目のついたところ、アイラインが0.5mmぐらい左側の方が低い。口の中に光が入ってやや締まりなく見える。(左側)
あと今のところ眉毛は最小限の細さと濃さにしてありますが、やはりもう少し厚くしてやや目頭側を吊り上げた方が良さそうです。(右側)
 実は右側の画像はGIMPという画像処理ソフトで眉毛の形を変えてシミュレーションしている最中のものです。いきなり手を加えてみて、
やっぱり違った・・・みたいな失敗をするより、こうしてPC上でシミュレーションする方が、むしろ手間はかからず効率的です。
 またこういうことを繰り返してゆくうちに、人形を見る自分の眼も鍛えられるような気がします。

 

 これらを修正して再度撮影します。(左側)
 眉毛の形を整えます。チークとシャドウを更に追加。(右側、GIMPのシミュレーション)
 そんなこんなでやっとDOLLが完成しました。

















 従来より脚を少し長くして、タレントのトリンドル玲奈さんのような感じに仕上げようと思ったのですが、とりあえず小顔のモデルさん体形にはなったと思う。
 ちなみに顔は最初から似せるつもりはまったくありませんでしたが、本当はもう少し子供っぽい感じに仕上げる予定でした。何かつくってゆくうちにだんだん
表情がきりっとしてきて、最後はこんな感じになっちゃいました。
 途中、方向修正はしませんでした。だいたいこういうものって流れに任せるのが吉です。
 ちなみに iria と名付けたのは、その昔ゼイラムという映画で森山祐子さんの扮するヒロインをふと思い出したからです。なかなかかっこよかったなあ・・・。
きりっとした視線がその名前に自然に結びついたというか、自分なりにはぴったりだと思っています。



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