新作ドール iria の制作記録

塗装の工夫をしてみました




 夏の個展に向けて35体目の創作球体関節人形をつくりはじめました。35体目といってもリメイクを含めれば、その倍ぐらいは完成させているので、
この12年で70ぐらい、つまり2か月に1体ぐらいのペースで完成させてきたことになります。
 ただ最近は手間のかかる仕上げをしたり、他のいろいろな創作物を制作するようになって、新規のお人形は久しぶりになってしまいました。

前回作 akane はこれまでの作品の作品の集大成として制作したもので、その詳細な制作方法も記録として残しています。
  
akane の制作 page688
 今回の新しい創作球体関節人形は塗装とコーティングについて、新しいアイディアに基づいて見直したもので、制作方法については、
ほとんど変わっていません。そういう理由で途中過程につては簡便な解説のみにとどめていますので、まずは上記のページをご覧いただく
ことをおすすめします。
 また過去の制作の記録の中で参考になるページとして
 原型となるドールの製作 page104 page105  page107  page087
 型どり             page166
 
フィールドライン      page565
 などのページが参考になるかと思います。



1 型から基本となるパーツを抜き出す
 まずは型に粘土を詰めて基本パーツをつくります。自分の場合にはシリコーンで型をつくっており、工程を簡略化しています。
 また使用する粘土はプレミックスとプルミエを1:1で混ぜたものです。とても軽量で扱いやすいのですが、プルミエが多く配合される
ことから、乾燥による変形をどう押さえるかがポイントになります。



1 まずはラドールプレミックスとプルミエを1:1の割合
 でブレンドします。けっこう力と根気が必要です。
2 練り込んだ粘土を、おおむね3mmぐらいの厚さに
 延ばし、型に押しつけてゆきます
  3 半乾燥(表面が乾いたぐらい)のときに、瞬間接着
 パテを接合面に塗り、パーツを接着します。

    4 このまま乾燥させます。片面が乾いたら裏返して
    完全に乾燥させます。
    

 これは型から粘土のパーツを取り出す直前の状態です。レジンならこのまま軽く塗装して完成というわけですが、粘土だとそうは簡単に
ゆきません。歪みの修正やら穴あけ、磨きなどたくさんの行程が必要です。それに毎回毎回、同じ人形を作り続けるのは進歩がないので、
ボディラインや顔立ちはその都度変えます。だからここはまだすべての行程の10%といったところです。

 完全乾燥を待つ間にレジンパーツを仕上げてゆきます。自分の場合、破損しやすい手足と肘のパーツはレジンキャストしたものを使って
います。(粘土であることにこだわりはないです)

5 中性洗剤でまずはパーツを洗い、乾燥後にバリ
 や湯口を削り落とします。
6 気泡はジェッソとモデリングキャストを練り合わせ
 たパテで埋めてゆきます。
7 余分なパテを削り落とし、460番ぐらいの布ヤスリ
 で形を整えます。

8 糸を通す溝と、その糸を固定するアルミ線のため
 の穴を開けます。
9 ナイロンの糸を通して、結び目を接着剤で固定し、
 解けないようにします。
10 ゴムをかけるフックは、2.5mm径のアルミ線をCの
 形状に加工したものです。

    11 全体に400番の布ヤスリをかけたあと、ジェッソを
     塗ります。
    

 ジェッソを塗る理由は2つで、これを塗ることで他の粘土パーツと同様に水性のカラーで着色できるようになることと、レジンは
黄変しやすいので、その変化を見えなくするという目的があります。



 ただ今乾燥中です。
 DOLL制作はその実際の作業時間より、乾燥のための待ち時間や観察時間のようなものがずっと長くなってしまいます。
だから自分の場合には、こんな感じで並行して3つぐらいの制作をすすめていたりします。



 とりあえずすべてのパーツが乾燥しました。これがお人形を構成する18パーツです。
 一つの原型さえあればそれほど時間を要さなくてもここまでたどりつけます。ここには書きませんでしたが、やはり最大の問題は原型に
なるお人形を何とか1つ作り上げるということだろうと思います。ただそのお人形は決して自分の理想とするものでなく、ある意味人の形
であれば何でも良いと思います。



 造形と表面仕上げ

 基本的なパーツがそろったところではありますが、これをきれいに組み立てただけで完成とはなりません。ここからが本当の創作部分に
なります。原型はあるものの、それとはまた違う作品に仕上げてゆきます。おそらく原型のラインが残るのはレジンのパーツだけです。

12 型に詰めた粘土の残りに木工ボンドと水を加えて
 練ります。これがパテになります。
13 これを接合面の隙間やパーツの凹部に埋め込ん
 でゆきます。
14 更に今回は足を2cm延長するという修正を加をして
 います。



 今回はこれまでの作品づくりから変更する部分が部分が2つあります。
 一つは前回 asumi のリメイクで試してみたパールとクリアブルーの下地塗装を工程として完成させることと、もう一つはボディラインを
修正して、これまでより手足の長い小顔な感じに・・・、理想を言えばトリンドル系でまとめてみたいと思っています。

 ここで以前にこのサイトで解説したフィールドラインについてのおさらいです。



 こちらは3年前に制作した aimi (56cm)の塗装前の画像です。最近制作しているDOLLとしては標準的なボディラインです。
SDに比べるとボリュームがあってけっこう大人っぽい感じですが、実際はウエストラインだけを絞って、数字の上でのバスト
サイスは同程度です。
 ですから見た目の印象はL胸でもSDのお洋服はすべて着せることができます。(似合う似合わないの問題はありますが)
 ただ一方でバランスをとるためにヘッドは小ぶりにしており、こちらはほぼMSDと同じウイッグサイズになっています。




 さてここであえて画像処理ソフトGIMPでヘッド部分だけをSDサイズに拡大し、画像合成するとこんな感じになります。明らかに
頭が重くバランスが悪く見えてしまいます。
  (黄色い線は拡大した割合をビジュアルに表現したもの、これをフィールドラインと名付けました)




 こちらは別画像です。
 こちらも同じくヘッドをSDサイズに拡大して合成したものですが、前の画像に比べればずっと自然な印象です。こちらの画像はヘッドに
連動してボディの上の方を拡大し、フィールドラインがつながるように画像合成しています。全体として7.5頭身だったバランスは6.5頭身ほど
になり、結果として子どもっぽい感じにまとまりました。
 ということで、パーツ個々の見直しは結果として全体のバランスの問題に波及する。その際、大切なことはフィールドラインをスムースに
連続させるということがお分かりいただけたでしょうか。




 もちろんこの逆をおこなえば大人っぽくモデルさんのような感じになります。ただ手足の先端は大きくすると見栄えが良くないので手首足首
から先はこれまでどおりのサイズが良いでしょう。またヘッドは上に向かってやや大きく発散させる形にすると、幼さのようなものも残せるに
違いありません。
 ということで、これが新作の設計図となります。



 今回の球体関節人形ですが、型から抜き出したパーツを組みあげて、とりあえず人形の形にしてしまいます。まずは固定式の人形をつくり、
それを切断して関節をつくるという方法もありますが、自分の場合にはまずは
関節部分だけを仕上げて仮組みまで一気にすすめてしまいます。

15 基本的には出っ張っているところは削り、足りない
 ところは盛るという作業です。
16 この作業を関節全体が均等に当たるようになる
 まで繰り返します。
 





 上の画像は腰の部分で分割された2つのパーツをすり合わせた後の状況です。強くこすれているところは光沢が出るので、ここは削ります。
まったく当たっていないところは逆に陰になるので、ここには粘土を盛ります。

17 ドリルで少しずつ大きな穴をあけて、ゴムを通す
 部分を貫通させます。
18 この穴をガイドにして、ゴム穴をカッターナイフ
 などで開口します。
19 首のジョイント部分は最も大きな力の加わるところ
 なのでエポキシパテで補強しました。

 全体はテンションゴムでつなぎ合わせるのですが、そのラインをイメージしながらゴムを通す部分を切削します。画像では縦に長いホールに
なっていますが、一般には可動範囲に余裕を持たせるため、このホールを円形に大きく開けている作家さんが多いようです。
 自分の場合にはきちんとポーズを保持できるようにするため、ホールの大きさは必要最小限にしています。


    20 ヘッドはアイや睫の交換が可能なように上下で分割
     しています。接続のためのネオジムを埋め込みます。
    





 次にテンションゴムで全体をつなげます。パーツを並べて全体として必要なゴムの長さを計算します。
 上の図で青い文字はゴムをつなげるフックの形状をあらわしています。

    22 ゴムはゴムでつなぐ長さのおおむね80%ぐらいで切ります。上半身は2mmぐらいの径
     のものを二重にして、胴体と足をつなぐものは3.5mmぐらいの径のものを一重で使います。
    

 関節をきちんとつくり、バランスがとれていればドールは必ず自立します。(もちろんこのドールもOK)
 次にそのまま横に寝かせてみます。関節のつくりが完璧ならこれでも直立姿勢は保たれるはずですが、このドールは右膝と左肩の
つくりがちょっと甘いみたいです。(要調整)


    23 とりあえず無事に仮組が完了しました。ただ膝と股関節の可動範囲が狭すぎた
      ので若干の修正を加えます。
     

 上の画像は精度的に問題の合った右膝と左肩の関節を微修正しているところです。テンションゴムはつなげたまま作業をしていますが、
この方が具合を確認しやすい。
 ご覧いただくとお分かりいただけると思いますが、膝関節は球体ではないです。やや押しつぶしたような形にしているのは縦方向にのみ
可動させ、横方向の回転を抑えるようにしているからです。





 こちらは関節の修正後の状態です。
 さて一見、色を塗ればもうほとんど完成の感じがしますが、ここからが重要なところです。プラモで言えば、キットをただ組み立てた
だけという状態です。
 この段階でいろいろ動かしたり、ポーズをとらせたりして次の造形のプランを練ります。まだまだ完成までは時間がかかります。



24 イメージしたボディラインを整えるため、粘土を
 盛るところと削るところをチェックします。
25 粘土には少量の木工ボンドと水を加え、練り込ん
 だものを使います。


 造形の一方でマグネット仕様にしあげてゆきます。

26 首の裏側に直径5mmのネオジムマグネットを埋め
 込みます。
27 耳たぶの部分には鉄の釘を埋めます。これらの
 接着は瞬間接着パテを用いています。

 首裏のマグネットは、鉄でできたものが壁にあれば簡単にスタンドなしでもドールを立たせることができるようにするものです。
 また耳たぶの釘はマグネットピアスなどを取り付けられるようにするためです。



 このほかにも釘は全身10カ所に埋め込んであり、様々なアクセサリー等が取り付けられるように工夫しています。


28 思ったようなボディラインが整ったところで、表面を
 平滑にする作業に入ります。まずは削る。
29 粘土の足りないところは盛り、乾いたら240番ぐらい
 の布ヤスリで磨きを入れます。あとはこの繰り返し



 次はヘッド部分の造形です。ここはいちばん時間のかかるところです。



 ちらは1回目の盛りと削りが終わって、これから表情や個性のようなものをどうやって出してゆくか考えているところです。
 ここでまたフィールドラインがまた関係してきます。




 こちらは以前に自作した球体関節人形です。黄色い線はフィールドラインで上に発散するような形状になっています。具体的には
目が大きく口が小さめという、一般的なお人形が持っているラインとほぼ同じです。
 緑色はフィールドラインに直角に交差するもので、この空間の水平線を表現しています。これをレベルラインと呼ぶことにしました。
 フィールドラインが縦のまっすぐな線でなければ、当然レベルラインは曲線になります。この場合、水平線は下に垂れ下がった形状
になるので、目の傾きもこれに合わせてやや「たれ目」にしてあります。もしこれをしないと目は吊り上がった印象になってしまいます。




 逆にフィールドラインにを上に向かって収束させ、大人っぽい感じに仕上げようとすると、レベルラインは上に吊り上がった感じになる
ので、目尻をやや吊り気味にするとニュートラルな感じに仕上がります。





 今回はややあどけなさを残そうと思っているので、頭頂部をやや拡大するように修正しています。ここから先を言葉にするのは難しい
のですが、方向性としては目尻は下げ、口はやや小さめに変更・・・。思いつくままその他もろもろの細かな造形を行ってゆきます。
 そしてアイホールはほんの少し拡大し、彫り自体はやや深め、頬は少し削ってエキゾチックな感じに。そして口はやや開き気味にして、
ニュートラルな表情でありながら、少し微笑んでいるようにも見える・・・。ここはもう感覚的なものですね。




 今回、肘の関節は形状を改めて可動範囲を大きくし、また全体を小さなものに置き換えました。ボディラインのメリハリをつけるには関節部分は
少し小さめの方が都合が良いです。(まあ、これも全体のバランス次第ですが)




 盛る、削るの作業を開始して1週間ほどでイメージしていたボディラインが出来上がりました。関節の方も精度が上がりました。このあといったん
バラバラの状態に戻し、パーツ一つ一つの完成度を上げて行く作業に入ってゆきます。


    30 いったんは仕上がった関節ですが、ボディラインをいじったので、パーツ間のつながりを
     調整する作業をします。(基本はここも盛りと削り)
     

   31 これが終わったら、パーツ個々の磨きに入ります。細かな窪みやキズは粘土で埋め、
    やや細かな400番ぐらいの布ヤスリで磨きます。
     





 地味な作業をほぼ2週間、やっとここまできれいになりました。
 でもまだまだ平坦化の作業は続きます。

    50 イージースリップ(現モデリングキャスト)を水で薄め、これを少し含ませたスポンジで
     全体を磨いてゆきます。
    

 これで布ヤスリによる表面の毛羽立ちが抑えられ、細かなキズがみえるようになります。
 またイージースリップは表面を硬くする効果があるのでデザインナイフでの切削もやりやすくなります。


    51 これまで見えなかった細かなキズが見えてくるので、ボンドを少し混ぜ込んだ粘土で
     これを消します。その後は再びヤスリがけです。
    

 2回ぐらいこの作業を行うと、表面はほぼ完全に平坦化します。


    52 再びヘッドの細かな造形を行います。この段階でアイホール
     も開けます。
    

 イージースリップで表面の強度も増しているので、まぶたも1mmぐらいまで削り込めます。口元や耳、鼻孔などの
形状も整えます。



 

 個々のパーツの磨きが終わり、全体をもう一度チェックします。2cm足を延ばしただけだけど、これまでとはかなり印象が違うね。
今回はここまでです。このあとは下地塗装からメイク、コーティングと作業はすすみます。





サイトのトップページにとびます